チュロスの秘密の共有

 あの独特な形をしているチュロスの秘密を知ってしまい、そのときのぼくは絶望していた。まだまだそれなりにあるであろう残りの人生をそれを抱えて生きなければならないのはとてもじゃないが。

「チュロスの秘密ってどんなの?」

 かつて公園にあった謎のオブジェの上で体育座りをしているぼくに彼女は声をかけてきた。

 エマ。幼なじみ。

 名前とお互いの両親が仲良しこよしという理由で用意されただけの関係。小学生だったこともあり、当時はエマを毛嫌いしていたと思う。

 けど、小学生のぼくにはチュロスの秘密を抱えたままで残りの人生を消費するのは辛かったようで。

 エマにチュロスの秘密を話していた。

「そ、そんな」

 やっぱり当時のエマも絶望をしてしまった。そのときのぼくは彼女に申しわけないと感じつつもチュロスの秘密を打ち明けられたことでほんの少しだけスッキリした気持ちになっていたはず。

「あのチュロスにそんな秘密があるなんて」

「そうなんだよ」

「でもさ、その秘密を知っているのはわたしとナギくんだけだよね」

「ん? うん。だと思うけど」

 チュロスの秘密を教えてくれた近所のお姉ちゃんはもう忘れてしまっていたから、当時のエマの言うとおりだが。

「それがどうかしたの?」

「んーん。それがいいなー、って思っただけ」

 当時のぼくも今のぼくもそのエマの返事の明確な答えは分かっていない。近所のお姉ちゃんのように宇宙人にでも誘拐されて記憶を消されたのかもしれないな。

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