理想

理想は叶わない。だからこそ理想だ。

理想を捨ててはならない。捨てれば生きてはいけない。

叶わないものなのに、虚しくもそれを抱かねばならない。理想を描き、追い求めなければ、進んではいけない。停滞か、断絶があるのみだ。

「いつか、きっと」を思い描く。切実に。折角の理想なのだから、叶うはずのないものでもいいのだ。切実な願いならば何でもいい。それこそ、世界平和でいいのだ。全ての仲直りできますように。それでいいのだ。

理想論は笑われる。馬鹿にされる。理想故に。現実を見ていないと笑われる。現実しか見ようとしないクズどもに。
もちろん、現実を無視してはならない。現実は現実として存在するのだ。そこから目をそらすべきではない。目をそらしたらそれはただの現実逃避だ。それ自体は責められるべきではないが、誰かを説得する場面において、現実逃避している者の意見は響かない。現実を直視していればいるほど、その者の意見は尊重される。
いじめを傍観しているものがいじめは良くないというより、いじめられた者がいじめの悪性を訴える方が響きが強い。ニュースを見ただけの一般人がこれはよくないと言うより、長年取材を続けた者がこれはよくないと言うほうが説得力は増す。

理想を述べるには、現実を知らなければならない。深ければ深いほど良い。だからこそ理想が際立つ。
理想が真に理想に過ぎないことを知りながら、それでも理想を追い求める姿に、感動し、追随したくなる。
悲観的な結末が確実であることを知りつつ、そこで諦めずに理想を追い求めることのできる善性を求めている。

理想は脆く儚い。故に美しく、惹きつけられる。理想を掲げ続ける勇姿に心が湧き上がる。

理想を掲げるべきなのだ。現実が悲観的なほど。
理想を叫ぶべきなのだ。誰もが無視できないほど。

これも理想ではある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?