いい日

珍しく気分がいい。

人とあったからか。話したからか。映画を見たからか。酒が旨かったからか。

やるべきことが頭から離れたのは久しぶりだ。鎖が解け、スムーズに歩ける。何なら多少の推進力を与える翼があるようにも感じる。

単調な生活は沼へと浸からせる。ずぶずぶと入っていく。入れば入るほど抜け出すのが大変になる。首まで浸かってから何とかもがく。もがくにはエネルギーが必要だ。勢い余って別の沼にはまることもある。
軽いエネルギーで出られるときに、少し這い上がっておくのがいい。誰かが差し伸べてくれた手を取るのでもいい。機会は大事にしなければ。差し伸べてくれる手は大事にしなければ。そんな手は貴重すぎるのだから。

酒の味は雰囲気で変わる。周りの人、笑顔の数、好きの数。酒の一滴一滴、水分子ひと粒ひと粒が身体を満たしていく。温かい雰囲気が酒に溶け込んでいく。しっとりと、じんわりと、暗い部屋の真ん中でつけたろうそくの温かみが広がっていくように、溶け込んでいく。
旨い酒はたまにしか飲めない。だからこそ、飲めたときの記憶は素晴らしいものになる。何を飲んだかを忘れても、旨かった記憶は残る。

その日その日の記憶は不確かだ。それでも、その中で確かなものはあるのだ。良い記憶は永久機関のように心でろうそくを灯し続けてくれる。灯りが見えなくなるときもあるが、それでもそこにある。

すこしクサかったかな。

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