『My homies』第一話 週刊少年マガジン 原作大賞 応募作品

《用語解説》

T:『テロップ』
M:『モノローグ』
*:『時間経過』
(フラッシュ):『一瞬だけ差し込まれる短い映像』

《人物紹介》

神原善次(30)飲食店勤務
蒲生雄輔(30)工場勤務
八谷智之(30)サラリーマン・妻子持ち
野々村大輝(30)ブリーダー
嘉川勝(30)プログラマー・既婚
山上ちか(27)蒲生の恋人


第一話『まだ30』

◯ 回想・小学校(夜)

T 『2009年。夏』

   小学校に忍び込む中学生5人。
   裏門の大きな門を飛び越えて入った様だ。
   グランドの隅にある遊具の側で、輪になって座り、
   中央には、花火が置いている。
   神原善次(14)蒲生雄輔(14)八谷知之(14)
   嘉川勝(14)野々村大輝(14)
   それぞれが花火を手に持ち、話している。
神原「(蒲生に向かって)最後やない?」
蒲生「ん?何が?」
神原「線香花火は最後やろ。普通」
蒲生「え?こんだけあんねんから別にええやん」
八谷「(蒲生に向かって)雄輔。ライター貸して」
野々村「これ打ち上げかな?」
嘉川「そうちゃう?」
蒲生「あっ!(野々村から打ち上げ花火を取り)俺がやる」
神原「あかん!雄輔は線香花火やろ?」
蒲生「なんでやねん!」
八谷「ちょっ……雄輔、ライター……」
   蒲生、神原の近くで導火線に火をつける。
神原「おい!!危ないやろ!」
   一同、笑う。
   打ち上げ花火が上がり、立ち上がり、空を見上げる5人。
   上空で花火が弾ける前に、回想が終わる。

○ 回想終わり・神原(30)の職場・喫煙所(昼)

T 『2023年。夏』

   神原、喫煙所でIQOSを吸っている。 
   喫煙所の机の上に置いているスマホが鳴る。バイブが響き、驚く。
神原「うおっ」
   スマホの画面には、蒲生雄輔と。
神原「おいっす。どないした?」
蒲生「あーっついは!夏やは!善次!」
神原「夏やな。それがどないした?」
蒲生「いや、夏やなって思ってさ。花火したくない?」
神原「花火?いつ?」
蒲生「うーん……今から?」
神原「アホなんかな?昔から思ってた事やけど」
蒲生「えー?善次やったら、『ええやん!最高やん!夏やん!ついでに海でも行こけ?』くらいの事、言ってくれると思ったんやけどな」
神原「凄い期待してくれてるやん。俺のイメージ中学で止まってるやん。花火するにしても今昼やで?花火の良さ消えちゃうやん。てか若けりゃありって思えたかもしれんけどさ、30でそのテンションは無いよ」
蒲生「大人ぶって」
神原「ぶってないんよ。ぶらずに大人なんよ。おっさんなんよ」
蒲生「善次はそうやな」
神原「雄輔もやで?」
蒲生「で?何してんの?」
神原「今は休憩中」
蒲生「何時終わり?」
神原「スムーズにいけば18時。いかんくても、俺不機嫌ですよって空気を出せば、18時30分には」
蒲生「ハハッ。なんやそら。飯でも行く?」
神原「ええよ。ちなどこ行く?」
蒲生「まあ……それは適当によ。場面よ場面」
神原「まぁ何でもいいけど」
蒲生「じゃあ俺、仕事中やから切るで」
   蒲生、一方的に電話を切る。
   神原、スマホの画面を見つめる。
神原「仕事中なんかよ」
   神原、吸ってたタバコを水の入った灰皿に捨て、
   仕事に戻る。
神原M「俺たちは、この小さな町で、それなりに大人になった。何か大きな変化も無い毎日。でもそれが心地良かった」

◯ 回想・小学校(夜)

   打ち上げ花火の音が、鳴り響く。
   花火の明かりに照らされる5人。

◯ 回想終わり・神原の住む団地前(夜)

   蒲生、団地の入り口に車を停め、ハザードを点けて、神原を待っている。
   神原、小走りでやって来る。
神原「お待たせ」
蒲生「今何時やと思う?思ふ?」
神原「思ふってなんやねん。19時過ぎや」
蒲生「18時30くらい言うてなかった?」
神原「とりあえず出しや」
蒲生「あれ?聞こえてない?もしもーし!」
神原「(笑いながら)うるさいな!ごめんて」
   *   *   *   *
   信号待ちをしている車内。
   神原、IQOSを取り出し、吸い始める。
蒲生「出た!なにそれ?IQOS?」
神原「せやで。紙巻とかもう……不味くて吸えんね」
蒲生「出たよ。調子乗りやがって」
神原「何がよ?あれ?君もしかして」
蒲生「紙巻よ!当たり前やん!一生紙巻や。生涯灰撒き散らすよ」
神原「撒き散らさんでもええけど。雄輔も変えや。今やとコンビニで簡単に買えるし」
蒲生「嫌!」
   蒲生、ダッシュボードの所に置いてある赤のマルボロを手に取る。
神原「ずっとそれやん!飽きひんの?」
蒲生「初めてタバコ吸った時からこれよ」

◯ 回想・団地内にあるコミニティーセンター(深夜)

   神原(14)蒲生(14)が、コミニティーセンターでたむろしている。
蒲生「な?」
神原「ん?」
   蒲生、ポケットから赤のマルボロを取り出す。
蒲生「見てやこれ」
神原「うわ!どないしたん」
蒲生「オカンからパクってきた」 
神原「悪やな」
蒲生「吸ってみる?」
神原「マジ?」
   蒲生、箱から2本のタバコを取り出し、
   1本を、神原に向ける。
蒲生「(笑顔で)ん」
   神原、恐る恐るタバコを手に取る。
   神原、蒲生、一つのライターで、
   タバコの火の着け方が分からずに2本のタバコを炙る。
神原「これであってる?」
蒲生「んー。あっ。なんかオカンが吸う時、タバコ咥えてたような」
神原「それや。あれちゃう?吸いながら火付けるんちゃう?」
   神原、蒲生が持っているライターを取り、
   火を着けて、蒲生に向ける。
   蒲生、火に顔を近付け、咥えたタバコに火を着け、
   深く深呼吸をする。
蒲生「ごほっ!ごほっ!オエェェェ!!」
神原(笑いながら)大丈夫かよ!死にかけてるやん!」
蒲生「(涙を浮かべ、無理矢理作った笑顔で)余裕!」
神原「(笑いながら)どこがやねん!」
   蒲生、半泣きで、神原が持つライターを取り上げ、
   火を着ける。
蒲生「お前も吸ってみぃや!」
   神原、タバコに火を着け、ゆっくりと吸い込む。
   そして、ゆっくりと煙を吐く。
   蒲生、驚きの表情。
神原「あれ?意外と平気や」
   蒲生、悔しそうな表情。
蒲生「善次!!お前吸った事あるやろ!!」
神原「ないってないって!ほいで何にキレてんねん」

◯ 回想終わり・地元近くのラーメン屋(夜)

   ラーメンを食べ終わり、店の外に出る。
神原「美味かったー!久々ここ来たけど、やっぱ美味いな!」
蒲生「ほんまな。俺今週2回目やけど」
神原「めっちゃ来るやん。俺の感動の邪魔せんで」
蒲生「ちな先週も来たで」
神原「やば!オーナーくらい来るやん」
蒲生「(笑いながら)なんやねんそれ」
   *   *   *   *
   蒲生、車内でタバコを吸う。
蒲生「ラーメン食うた後のタバコが世界一美味いな」
   神原、蒲生が吸っている紙巻きタバコを見つめる。
神原「……なぁ」
蒲生「ん?」
神原「一本ちょうだいや」
蒲生「ん?自分のタバコあるやん」
神原「あれやん。久々に紙巻き吸いたなってん」
蒲生「(笑いながら)えー?無理」
神原「頼むって!お願い!」
蒲生「えー?」
神原「先っちょだけ」
蒲生「タバコが欲しいってお願いじゃなくなってるやん。それ先っちょだけじゃ済まへんやつやん」
   お互いに顔を見合わせ、笑う。
   蒲生、笑いながら、神原に1本タバコを渡す。
神原「あざっす!」
   神原、貰ったタバコを口に咥える。
   蒲生、持ってたライターの火を着け、神原の方に向ける。
   神原、タバコに火を着け、ゆっくりと吸う。
   蒲生、ゆっくりと吸う。
   お互いに煙を吐く。
神原「……紙巻きは最高やな」
蒲生「ラーメンの後は特にちゃう?」
神原「確かに」
   10秒程沈黙。
蒲生「……昔俺もよく『先っちょだけ』って言うたなぁ」
神原「まだその話ししてんのかよ。絶対先っちょだけで済んでへんやんやつやん」
   お互いに、笑う。

○ 回想・坂道(昼)

   蒲生、神原、八谷の3人で、ドラッグストアに。
八谷「あっつ。あかん」
神原「あそこの薬局で涼もうや」
八谷「せやな」
蒲生「汗かき過ぎて死ぬで」
神原「死ねるな」

○ 回想・ドラッグストア(昼)

   駐輪場に自転車を停める3人。
   慌てて中に入る。
神原「すっずぅ〜」
蒲生「涼しいな〜」
八谷「生き返るわ〜」
   *   *   *   *
   ドラッグストア内をウロウロする3人。
   蒲生、立ち止まる。
八谷「雄輔、何してんの?」
蒲生「なぁ……。コレってさ」
神原「ん?何してんの?」
   目を輝かせる3人。
   3人の目の前に、コンドームが。
蒲生「コレ……ゴムよな?」
八谷「マジ?マジで?」
神原「エロいゴムや……エロいゴムやっ!」
蒲生、コンドームを手に取る。
八谷、神原、唾を飲み込む。
蒲生「……どうする?」
八谷「どうするって?」
蒲生「……買う?」
神原「えっ!?マジで?」
八谷「中学生でも買えるん?」
蒲生「買える……んちゃう?」
神原「買えたとしても……(レジの方を見ながら)」
   レジに若い女性店員。
神原「無理無理無理無理!」
八谷、前屈みになる。
八谷「アッ。ヤバイ……」
蒲生「(笑いながら)嘘やろ!はーちゃん!?」
神原「(笑いながら)一体何を想像してそうなったんや!?」
   3人、笑い合う。
   そして黙る3人。
   それぞれ顔を伺う。
蒲生「……。善次行ってや」
神原「なんでやねん!!」
八谷「確かに。善次しかない」
神原「なんでよ!?」
蒲生「だって1番エロいやん」
八谷「うん。極度の人やん」
神原「極度ってなんやねん。マジで?ジャン負けにしようや」
   *   *   *   *
   神原、チョキを出す。
   蒲生、八谷、グーを出す。
   神原、悲しい顔をする。
   神原、蒲生と八谷に背中を押され、レジに向かう。
神原「あ……あのっ」
   カウンターにコンドームを置こうとすると、若い女性店員に代わって、同級生のお母さんが、後ろから出て来る。
同級生の母「アレ?善次君やんか!どないしたん?あっ。レジ代わりまーす」
   神原、絶望し、白目を剥く。
   蒲生、八谷、神原のその様子を見て、走って逃げ出す。
   同級生の母、カウンターに置かれたコンドームを手に取り。
同級生の母「ん?え?コレ……善次君」
神原「あ……。なんか……新発売の……お菓子かなん……かですよ……ね?」

◯ 回想終わり・地元へと向かう車中(夜)

   蒲生、更地になった、元ドラッグストア跡を眺める。
蒲生「アレ?ここ薬局あったよな?」
神原「うーん?あっ。ホンマや!無くなってるやん!」
蒲生「うわー。マジかいな」
神原「ありゃりゃー」
蒲生「何できるんやろな?」
神原「さぁー?小林のオカン職に困ってんちゃうか?」
蒲生「(笑いながら)ホンマやな!懐かしいなっ!働いてたわ!」
神原「あの時の雄輔とはーちゃんだけは、今でも許してないで?」
蒲生「え?何かした?」
神原「ハァー!?」
蒲生「え?え?分からん分からん」
神原「お前ホンマ……」
蒲生「でもよく涼みに行ったよな」
神原「ちょいちょい!思い出に浸るな」
蒲生「(遠い目をしながら)懐かしいよな。夏休み、涼みによく行ったな。俺らにとっての、オアシスやったよな」
神原「雄輔君?そこまで覚えてるんやったら、覚えてるやろ?」
蒲生「どんどん変わっていくな、地元も」
神原「もしもーし!」
蒲生「てかさ」
神原「おい!」
蒲生「あっこの映画館も無くなったやろ?」
神原「ん?あー。そうそう」
蒲生「よう行ってたよな?今どうしてんの?」
神原「あっこ無くなってからはサブスクでしか見てない。もうわざわざ電車乗って行くんがダルくて」
蒲生「まぁせやろな」
神原「ほいでな、映画館の最終日行ってんやんか、普段ガラガラのくせにメッチャ混んでて」
蒲生「そうなん?あっこが混んでるとか小学生の時以来ちゃうん?」
神原「ホンマにな。お前らが普段から来てたら閉館なんかせんで済んだやんけ!って、思ってもうたわ」
蒲生「まぁ……。そんなもんやろな」

○ 回想・地元のコンビニ(夜)

   店内でジュースやお菓子を買い込む5人。
   蒲生、花火の前で立ち止まる。
蒲生「なぁ?花火やろや」
神原「おっ。ええやん。どうせやったら打ち上げ入ってるやつやろや」
八谷「花火?どこですん?」
嘉川「小学校でええんちゃん?」
野々村「アリやな〜。そのまま今日は学校でオールする?」
神原「何ぬかしとんねんボケ」
野々村「おっおぉ……凄い言うやん」
神原「真っ先に寝るくせに」
嘉川「ホンマやで。しかも寝起き最悪やし」
野々村「大丈夫やって!今回は!」
八谷「大輝、この前も言うてたで」
蒲生、花火の袋を2つ手に取り。
蒲生「とりあえずこんだけあったらいけんな?」

○ 回想・小学校近くの道路(夜)

   自転車に乗って、小学校へ向かう5人。
八谷「ヤバイ!暑過ぎてもうジュース飲んでもうた!」
嘉川「はちゃめちゃにアホやん」
神原「自販機あるやろ。後で買い」
蒲生・野々村、笑う。

○ 回想・小学校(夜)

   それぞれ線香花火をやっている。
八谷「なぁ?1番最初に終わった奴さ、俺のジュース買って来てや」
神原「やっば。だっる。なんなんコイツ」
蒲生「今言うのせこない?」
嘉川「せめて今やってるやつ終わってからやろ」
   *   *   *   *
   神原、自販機の前。
神原「あいつホンマ何やねん」
神原、自販機でコーラを買う。
   *   *   *   *
   神原、一同の元に戻る。
八谷「おっ!あざすっ!」
神原「迷惑な奴やでホンマに」
八谷「喉カラカラやわ」
神原「知らん」
   神原、八谷にコーラを下手投げで渡す。
   八谷、コーラを受け取り、早速開ける。
   開けると、中のコーラが勢い良く溢れ出す。
八谷「うわっ!最悪や!ありえへん!」
神原「ハハハハハハッ!!」
蒲生「ちょっ!あっち行ってや!かかったって!」
野々村「(笑いながら)わっる!絶対振ってきたやん!」
嘉川「うわっ!甘クサッ!」
八谷「ちょー!」
   一同、笑い合う。
   *   *   *   *
   ブランコに乗る5人。
蒲生「今日楽しかったな〜」
嘉川「せやな。花火とか久しぶりやった」
神原「打ち上げ、もう一個くらい欲しかったけどな」
蒲生「確かに」
八谷「俺は最悪でした」
神原「あっごめん。甘クサいから、静かにしてて」
八谷「おいっ!」
   蒲生・神原・嘉川・笑う。
   神原、声が聞こえてこない野々村の方を見る。
   野々村、ブランコに座りながら、寝ている。
神原「嘘ーん。ほら見たことか」
八谷「さっきまではしゃいでたよな」
蒲生「親戚の子やん」
   野々村以外、笑う。
   蒲生、空を見ながら。
蒲生「いやー。楽しかったな」
神原「何回言うねん」
嘉川「まぁ確かに楽しかった」
蒲生「ほら!マサが言うくらいやで?何回も言うよ!今日は楽しかった!」
神原「(蒲生を見ながら)まぁな」
八谷「せやな。……あっ!」
神原「何よ!?ビックリするやん」
八谷「アレ見てや!(空を指差し)UFOちゃん!?」
神原「何を言うと……ホンマや」
蒲生「え!?どれよ!?」
嘉川「アレ?いや、飛行機ちゃうん?流石に」
八谷「いやいや!絶対そやって!」
蒲生「どこよ!?」

○ 回想終わり・コンビニ(夜)

   神原、コンビニでタバコを買っている。
   蒲生、先に買い物を終えて、喫煙所でタバコを吸っている。
神原「タバコが高いよ〜っと」
蒲生「確かに。ナンボまでなら買う?」
神原「うーん。1000円?」
蒲生「うわー。1000円のタバコってヤバイな」
神原「ほんまにな」
   *   *   *   *
神原「この後どうすんの?」
蒲生「うーん。帰るのもなー。まだ全然いけるやろ?」
神原「せやな。全然いけんで」
蒲生「あっ。花火する?」
神原「まだ言うてるわ」
蒲生「さっき中で見たら、ちゃんと売ってあったわ」
神原「えー?今から花火?」
蒲生「ええやん」
神原「2人で?」
蒲生「2人で」
神原「……。おっさん2人で?」
蒲生「おっさん2人で」
神原「……。ないやろ」
蒲生「えー?マジでー?ノリ悪ぅー!」
神原「いや、せめてさ、他も誘おうや」
蒲生「他?」
神原「はーちゃんとかさ、マサとか、大輝とかさ……。まぁそんくらいしか連絡先知らんけど」
蒲生「あぁ。全然会ってないなぁ。成人式以来ちゃうかな」
神原「そやっけ?連絡しよか」
   *   *   *   *
   神原、一通り連絡を終える。
神原「……。はいはい。はーい。じゃねー」
蒲生、タバコを吸いながら黙って様子を伺う。
神原「マサもアカンって」
蒲生「マジか」
神原「はーちゃんは子供の世話で、大輝は仕事。マサは奥さんと出かけてるって」
蒲生「……。そっかぁ。じゃあ……2人で?」
神原「いやー。流石にやろ」
蒲生「えー?やらん?花火」
神原「また今度にしよ。流石に」
蒲生「まぁしゃあないな」

○ 回想・小学校(夜)

   花火も終わり、朝まで小学校で過ごす5人。
   各々家路に向かう。
蒲生「なぁ!」
他4人「?」
蒲生「これから毎年花火なっ!」
神原「はいはい。分かった分かった」
嘉川「毎年ー?しゃあないな」
八谷「ちょー。チャリ乗りながら大輝寝てんねんけど」
野々村「(目を瞑りながら)おひてるぅ……」
神原「もう喋れてないやん」
野々村以外の4人、笑う。
蒲生「ほな!」

○ 回想終わり・神原の自宅前(夜)

   神原の自宅前に車を停めて、お互いに一本ずつタバコを吸う。
蒲生「みんな忙しいなー」
神原「まぁな。そらしゃあない。結婚したり、子育てあったり、30代って考えると仕事も出世だなんだって忙しいやろ」
蒲生「まぁな。……。そらそうか」
神原、タバコを吸い終わり。
神原「ほな帰るわ。またな!」
蒲生「おう。また誘うな」
   神原、車を降り、自宅に向かって歩き出す。
蒲生、クラクションを鳴らす。
神原「(蒲生を見て)ビックリするよー」
蒲生「(ニコッと笑って)善次!お前は変わらんでくれよ!」
神原「??おう。見た目はお互い変わってきたけどな!」
蒲生「……。頭皮の事言うてる?」
神原「言うてる言うてる!ほななっ!」
神原M「あー。何大人ぶってんねん俺は。花火くらいしたらよかったやんけ。花火くらい……」

○ 近所のコンビニ(夕)

   神原、コンビニに向かう。
神原M「何も変わらへんと思った毎日。でもこんな小さい町でも、遊ぶ場所が無くなって、仲良かった奴らとは仕事とか、子育てとかで疎遠になっていった。でも俺はそれでも平気やった。恋人もおらんし、仕事も別に上手く行ってへん。ろくな事無い。それでも俺には雄輔がおった。雄輔は何も変わらん存在でいてくれた」
   神原、コンビニの前に着き、店内に。
神原M「最後に雄輔と会ってから、1週間が過ぎた頃。何も変わらんでおってくれた雄輔が昨日の夜、自ら命を絶った」


続く。

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