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おすすめ名作映画 Pearl
昨年2023年の夏頃に公開された映画「Pearl」が今もたまに頭をチラつきます。
あらすじ
ダンサーを志ざし、スターの華やかな世界に憧れるパール。人里離れた農場で、厳格な母と体が不自由な父に育てられた彼女の愛への渇望が、スターへの夢を育み、両親からの異常な愛が、その夢を腐らせていく……。籠の中の無垢なる少女が抑圧から解き放たれたとき、比類なき無邪気さと残酷さをあわせもつシリアルキラーが誕生する!!
一時期しつこいくらいにYoutubeで広告が入ってきていたので覚えている人もいるかもしれません。
田舎の少女パールがダンサーになって都会へ出ていくことを夢見るお話です。
この映画の良さは何といってもパールの偏執的なまでの狂気。
パールはダンサーになることを夢見ているのですが、正直なところダンスの才能は凡。
むしろオーディションのときは必死すぎてお顔がちょっと怖いくらいでした。
オーディションが上手く行かなかったことを始め、自分の思い通りにならないフラストレーションから家族や親戚、仲の良かった友人まで手にかけてしまいます。
特にパールはリップサービスをそのまま受け取ってしまうくらい純粋で真面目なので、約束と思いこんでいるものが叶えられなかったときに爆発してしまいます。
そう、パールは「ちょっと変な子」です。
だけど変な子と言い捨てるにはもったいないくらい、その壊れ具合が絶妙です。
基本的なところは「ちょっと変な子」で収まる程度なのですが、苛立つことで徐々に狂気を帯びてゆき、最後には当然のような顔でスプラッタに転がっていきます。
それでもパール自身は壊れているわけではなく、植え付けられた真面目さと叶えられない欲望が同時にそこにあるままになっています。
メンヘラと名前を付けてしまえばそうなのですが、行き過ぎた教育や抑圧の結果と考えると現代にも同じような人がいるかもしれません。
クレヨンしんちゃんを禁止されて育った人なんかはこんな傾向にあるのかも…なんて思います。
それから画作りが良いのもポイントです。
舞台は1918年のアメリカ。
当時のアメリカってビビッドな色合いのポスターなどが多い印象なのですが、どこかくすんでいてちょっと古臭さを感じます。
こういった雰囲気が映画全体で統一して描かれています。
それでいて『Pearl』はごちゃごちゃしすぎないで見やすい画面になっているので映画つくるの上手~!と嬉しくなります。
特筆すべきは主演のミア・ゴスの演技力。
『Pearl』は『X』の前日譚です。
主演はどちらもミア・ゴス。
『X』は『死霊のはらわた』のように古き良きオーセンティックなホラーをやっていたのですが、『Pearl』はサイコスリラースプラッタ。
演技幅もすごいですし、パールのように時間経過で狂気に進んでいく要素を醸し出せるのもすごい、というかちょっと怖い。
なかでもラストシーンの長回しのカットが笑っちゃうくらい長いです。
夫のハワードが戦争から帰ってきたところに、4人もの人間を殺害したパールが血塗れになって自身の胸の内にわだかまった思いを吐露して満面の笑みを浮かべているのですが、エンドロールの間ずっと笑っています。
この狂った笑顔が妙にリアルで、それでいて得も言われぬ違和感があり、おぞましくて目が離せませんでした。笑っているだけなんですけど。
自分はあんまり頭が良くないな~って自覚してちょっと悩んでいる人とか、メンヘラ気質を直そうとしているけど上手くコントロールできないことを気に病んでいる人とか、そういう薄めの闇がある人には変に刺さるところがあるかも知れないので少し気を付けて見るかどうか選んだほうがいいかもしれません。
R15です、念のため。
グロが一番の要因だとは思いますが、それだけじゃなくてパールの上手くいかなさに自分を投影する人も居るかもしれないと思うと、やっぱりR15指定だと思います。
中学生・高校生ってどこか抑圧されているって意識ありますもんね。
『Pearl』は全3部作となる予定の作品群の2作目です。
次回作の『MaXXXine』はいつ公開なんでしょう。楽しみです。
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