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在宅医療の一環として訪問マッサージを教えることでつながる世界 Ep 3.4

訪問マッサージの現場に踏み込んでしばらく経った頃。
当時は(同じ会社の)首都圏にある2つの事業所をかけ持ちしていました。
普段は介護やリハビリを必要とする高齢者を訪問する傍ら、これまでと変わらず新しい知見を得るために外部のセミナーにも参加して学びを得ていました。

教えることを始める

所属していたのは訪問マッサージの最大手ですので、社内の教育体制も業界のなかでは一定の水準が保たれていました。
昔取った杵柄とは言いますが、専門学校で教えていた頃の手応えを頼りにして事業所のなかで有志を集めて自主勉強会を始めるようになりました。

それはかつて感じていた苦い経験も影響していると思います。

70代、80代で介護やリハビリを必要とする高齢者を支えるには何が必要でしょうか?

広くこのテーマを考える時、いくつかの方法があります。

①栄養のある食事をとる
②筋力を維持するために運動する
③痛みなく過ごせる方法を見つける
④家族や親しい人とコミュニケーションを取る

①の栄養については、おもに家族や栄養士さんが気を配ります。
あるいは老々介護をしている家庭では、宅配弁当などを利用するのも一つの方法です。
②はまさに、リハビリ職の仕事。
そこにマッサージ師、鍼灸師なども加わります。
③は医師や看護師がその役割を担います。
シップや痛み止めなどの薬を使うこともあるでしょう。
④は在宅現場に関わる人、地域の住民すべてが関わることのできる課題です。知っている仲間が次第にこの世を去り、伴侶にも先立たれてしまったケースでは、その孤独を埋めるためにどんなことができるでしょうか。

近年では「エンドオブライフ・ケア」という考え方が提唱され、終末期を迎えた者への対応を学ぶ場が用意されています。

「人は誰でも、自分の苦しみをわかってほしい」
命に終わりがあると気づいたとき、その苦しみをわかってくれる人がいることで人は穏やかになれます。その役割を担うのは、家族の場合もあれば訪問してくるケアマネや医療、介護の関係者のこともあります。

社内で教える場を持つことと、広がる世界

事業所内で勉強会を始めてしばらくすると、ある日、社長から電話がかかってきました。
「いずれ、社員研修を行う部署で働いてみないか」という声掛けでした。
二つ返事でその話を引き受けると、しばらくして現場で利用者さんを訪問しながら教育部署の仕事も任されるようになりました。

その会社では、すでに研修のための十分なマニュアルが用意され、どうやってよりよい施術を利用者に提供していくか、ということを焦点にして施術師の指導が行われていました。
入社して間もない時点で行う初任者研修。
これに加えて、事業所では定期的に練習会や外部講師を招いての勉強会が行われています。ときには、現場の対応に困るような事例を挙げての症例検討会も開かれていました。

やはり、実践して身についた知識や経験に勝るものはありません。
教育部署にいる先輩方からたくさんの刺激を受けて、私自身も「在宅でマッサージやリハビリ(機能訓練)をやってます」と胸を張って仕事ができるまでになりました。そして、ともに働く仲間と学び合うという経験は、現場に出てこそ感じられたこの上ない宝物でした。

マッサージという言葉に含まれるもの

マッサージ師として在宅現場で行っていたのは、コリをほぐすために筋肉を押したり揉んだりしていただけではありません。
そもそも手足がやせ細ってしまい、加齢のために骨と皮だけになってしまった高齢者もいます。そのような時は全身を丁寧にさすって血行を良くすることを考えます。

薬の効果とは機序が異なりますが、手を当てることで一時的に痛みが和らいで、マッサージを受けた日の夜はよく眠れる、という声を聞くこともあります。

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対象となる方の介護度によっては、家のなかで身のまわりのことは自分でできる方も中にはいます。そのような場合は、前述の②筋力を維持するために積極的な運動をする必要があります。

専門知識のあるリハビリ職の方から指導を受けながら、訪問時にできる機能訓練を提供していくという姿勢は、在宅医療の現場で国家資格を持つマッサージ師が取るべきひとつの立ち位置と感じています。


physical, mental, spiritual and social well-beingに生きるお手伝いをしています。2020.3に独立開業しました。家族を大切にし、一人ひとりが生き生きと人生を楽しめる社会が訪れるといいなと思いながら綴っています。