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#講義録・指圧基礎実技 2024.5.15 〜めったに指圧の練習ができない人のためのトレーニング方法〜

早いもので5月も半ばを過ぎると、4月に入学した学生さんたちも学生生活に馴染んできます。けれども実技の授業は、まだ序の口…。
解剖学で筋肉や骨格のことを少しずつ習っている段階なので、あまり難しいことを話しても「…???」が目に浮かびます。

そういう意味で、1年生の前期(夏休み前)までは①おおまかな指圧点(押圧する場所)を教えたり、②施術の手順を覚えること、③施術している姿勢に気を付けることを中心にしています。

體のつくり方と最低限の基本操作を伝える理由

私の投稿を読んでくださっている方には耳にタコができることですが、徒療法を身につけるうえでのパラドックスなので三度、書かせていただきます。

あん摩、マッサージ、指圧などの徒手療法は、手順を覚えること、ムリなく施術できる姿勢を身につけることに終始しています。
当然といえば当然ですが、基礎があることでその先に技術的な積み上げができると考えています。手順を覚えるだけに満足していては、その先の伸びはありません。

うつ伏せで指圧をする場合、施術の手順は頭から始まって足裏で終わります。
(後頭部~足底)まで一連の手順があり、肩や背中、腰~足までをおよそ20~30分で施術する流れです。

いきなりすべての手順を覚える必要はない、と思います。
もちろん、1年次の終わりには全身の施術ができるようになっていてほしいものです。けれども、【ここは外せない】という箇所をまず覚えて、繰り返し練習していくのが効率的と考えます。
指圧のほかに(はりやきゅう)も身につけるのであればなおさら、時間という限られたリソースを有効に使ってほしいからです。

5月の授業では、背中を押すことが中心になります。
専門的には肩甲間部(肩甲骨の間)と肩甲下部(肩甲骨の下から骨盤まで)の背中のエリアの押し方を身につけていきます。

指圧に限って言えば、うつ伏せで背中~腰までをしっかりと押せることが肝心だと思います。骨の変位をみるカイロプラクテックでは脊柱を重要視しているので、なおさらです。

実践・手指のつくり方

私が学生さんに伝えていることは、師匠をはじめとする指圧の諸先輩方から学んで身につけてきたことです。かように先達はありがたいと思います。

それらを後進に伝えていくにあたって、自分なりの説明も加えていくことになります。
身体操作は手指、上肢、体幹、下肢の4つのパーツをどうやって(効率よく)使うかを体で理解して、身につけていきます。

初回の授業では、風船を押すことで「垂直圧」とはどういうものかを体感してもらいました。

今日の授業では、押圧するための手指の構え方について説明をしました。要点は次の2つにまとめられます。

1つ目)
私たちは普段、手の親指、人差し指、中指の3本を使う生活をしています。
そのため、薬指と小指を使うことを忘れてしまっています。この2本の指を意識して使うことを意識します。

薬指、小指を意識して使う

例えば野球のバットやゴルフのクラブを握るとき、小指を締めるとしっかりとグリップできます。柔道で相手の胴着をつかむときにも小指を利かせる、それと同じ理屈です。

いまも続いているのか分からないけれど、指圧学校の入学試験で受験生は(両手を開いて面接官の前に差し出し、指を1本ずつ曲げて見せる)という確認をしていました。指がちゃんと動くことを確かめるのはもちろん、稀に小指がない人も受験に来ていたというから驚いたことがあります。
とにかく、小指、薬指を含めた手指を5本ともうまく使えることが肝心です。

2つ目)
手指は足と違って、体重を支えるようにはできていません。
足に土踏まずがあるように、手もアーチをつくることで安定した押圧ができるようになります。

手のアーチをつくる/MP関節を曲げる

MP関節とは、手を握るとできるの【こぶし】のところです。
ここを反らさずに、かるく曲げて使います。そうすることで、手のアーチができます。
断っておきたいことは、指圧=全体重をのせることではありません。
押すことで(押される)という反作用の圧が生じます。この圧を受け止めるだけの手のアーチ構造が必要だと私は考えています。

手指をつくる練習 その1

言葉や概念だけでは何の練習にもならないので、実際のトレーニング方法について説明しておきます。

まずは、ベッド面に手指を置きます。
このとき(写真では隠れているけれど)薬指、小指もちゃんと指先(指紋部)がベッド面に触れています。

半円枕を使うと、より立体的に手のアーチを意識できます。

MP関節を曲げておくことで、手のアーチができます。
ここが圧を支える要になるので、反らせてはいけません。この動きは関節を固定・安定させていると言えます。

一方で、押圧するには手首、肘、肩関節の柔軟性も必要です。
そのためには【MP関節を軽く曲げたまま】手を動かせることも必要です。
(MP関節を安定させる練習)

手指をつくる練習 その2

さて、手のアーチについて理解ができたら、次に圧を受け止める練習をします。
押すことは、押されること。
一方的に押すのではなくて圧を操作するという認識を持つようにします。圧を受け止める手指のかたちと、上肢と体幹が連動して圧操作を行う感覚を養う練習になります。

はじめに、ベッド面に片方の膝と手指を置きます。
手指の位置は、膝から20cm程度離れた真横、または斜め前に置くこともあります。

膝の真横に手指を置く

そして、膝から手指の方向に向かって、体幹を移動させます。
(真横に体重移動させる練習)

(斜め前に体重移動させる練習)

この練習はベッド面に限らず、畳やヨガマットの上に正座してもできる練習方法なので、指圧を受けてくれる相手がいなくても自分で練習できます。

野球でいう素振りとおなじだと思って練習してください。
上述した2つのトレーニングによって、手指のアーチをつくることが押圧操作を行ううえでの基礎となります。

繰り返しになるけれども、バットの素振りやキャッチボールとおなじです。
やればやっただけ手指の精度が上がり、押圧の効果も変わります。
その先に積みあがる技術があることを踏まえると、手指の操作は基礎にして奥義だと考えています。

いやはや、記録のために記事を書いてみたけれども、授業でデモを見せるほうがよっぽどわかりやすくて伝えやすいと感じました。さらにはその場で修正もできるからです。
記事にしたことで、内容に制約ができてしまっている(言葉が足りない)ところもあるかもしれないので、ご容赦ください。

physical, mental, spiritual and social well-beingに生きるお手伝いをしています。2020.3に独立開業しました。家族を大切にし、一人ひとりが生き生きと人生を楽しめる社会が訪れるといいなと思いながら綴っています。