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「学校」でできるのは畳の上の水練 Ep 2.4

鍼灸マッサージの教員資格を取ったのち、基本的な実技指導やオイルマッサージの部活動といくつかの道筋をつけながら教員として数年が経ちました。
自らが専門学校に入学した時に思い描いていた、「学生のうちに広く手技療法を身につけてほしい」という気持ちは、当時も今も変わらずに持ち続けています。

畳の上の水練は続かない

その一方で、指圧やオイルマッサージの基礎を中心に教えることに物足りなさを感じるようになってきました。
専門学校で学ぶことができるのは手技の基本であって、その先は患者さんを先生として臨床の腕を磨くこと。おそらくこれは、ひとつの真理だと思います。
畳の上の水練とはよく言ったもので、いくら身体の動かし方を覚えて練習をしてみても、実際にプールに入って泳いでみなければ水に浮く感覚や息継ぎのタイミングを感じることはできません。

自動車学校でも、できることといえば教習所内の道路を走ってハンドルやアクセルの操作を覚えることくらいでしょう。
仮免許で教官を助手席に乗せて街中を運転したり、高速道路で初めてアクセルを踏んだ時の緊張感を思い出せば、練習と本番は全く違うのが分かると思います。

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これが、医師や看護師、理学療法士などの医療系の資格であれば、卒業前には必ず「病院実習」の場があり、指導教官について一定の期間を現場で過ごすことができます。
その間に、医療従事者としてのあり方や立ち振る舞い、患者さんへの接し方を実習とはいえ現場を通じで体験することができます。

かたや、鍼灸マッサージの資格を取得するうえでは、病院実習のように現場で学ぶことのできる科目は設けられていないのです。
実技の国家試験がないことに加えて、学生のうちに現場に触れる機会がない状況では、『鍼灸マッサージの専門学校を卒後したらすぐに開業』と行かないのは想像に難くありません。
多くの学生は専門学校を卒後して治療院に就職すると、「学校で習ったことだけじゃ通用しない。現場で一から覚えなさい」と言われることになります。

臨床現場に移る予兆

卒業生からそのような声を聞くにつけて、業界として後進を育成していくにはやるべき仕事がほかにもあるのではないか、という思いが年々強くなって行きました。
ほとんどの学生は専門学校を卒業したら、すぐに現場で仕事に就きます。わずかに数えるほどの学生が教員養成課程に進み、免許を取得した後に教員の指導のもとで腕を磨く機会を得ることになります。

いつしか、基礎教育だけでなく、教育と臨床の現場をつなぐ仕事をしたいと感じるようになりました。
そしてそれは思いがけない形で、私自身が現場に出て臨床経験を積む道につながって行きます。


physical, mental, spiritual and social well-beingに生きるお手伝いをしています。2020.3に独立開業しました。家族を大切にし、一人ひとりが生き生きと人生を楽しめる社会が訪れるといいなと思いながら綴っています。