薗部英夫

そのべ ひでお=障害のある人たちの権利を守り、発達を保障するための運動にとりくんでい…

薗部英夫

そのべ ひでお=障害のある人たちの権利を守り、発達を保障するための運動にとりくんでいます。金沢大学に学び、1985年より全国障害者問題研究会事務局長、2016年より副委員長。日本障害者協議会副代表。著書『北欧=幸せのものさし―障害者権利条約のいきる町で』『パソコンボランティア』

最近の記事

石原繁野さんの青春

「視点」でもなんどか紹介させてもらった糸賀一雄さんの「私塾」としてスタートした滋賀のあざみ寮。その施設長をされた石原繁野さんが6月9日に亡くなられた。 繁野さんは昭和12年(1937年)岡山生まれ。昭和31年(1956年)に、滋賀県・大津に開設されたあざみ寮(糸賀房ふさ・初代寮長)と出会い、知的障害のある女子寮生たちと共に生きられた。ペルーを訪ね、チャイカイ文化の織物に学んだ「あざみ織(むすび織り)」を寮生のしごととして発展させた。 わたしたち夫婦は、「あざみ織」を結婚式

    • 忘れえぬ人

      一枚の写真がある。 2006年11月11日、障害者自立支援法と平成の市町村大合併による大波が襲った年の結婚を祝う会でのベストショットだ。その写真が彼の遺影となった。  * 新潟に暮らす脳性マヒによる重度の障害者・鈴木正男さん(1950年生)と出会ったのは1981年、学園祭での講演会だった。 前夜、後輩のアパートに宿泊してもらい、わたしの作ったメチャクチャ炒めを、片足で食べ、「うまいよ」と言ってくれた。それからわたしたちは生涯の友となった。 鈴木さんは「あきらめない人

      • 視点 やるなら今しかねえ

        NPO法人日本障害者協議会副代表 薗部 英夫  40年前に初回が放送された倉本聰のドラマ「北の国から」。映画「男はつらいよ」とともに見たことがないという若い世代も増えているようだ。この「北の国から」には、東日本大震災後のコロナ禍での今を舞台にした「幻の台本」がある。ぜひ見てみたい。  主人公の黒板五郎(田中邦衛)と子どもたちの物語には、バブルとその後の時代へのアンチテーゼが重低音で流れている。印象に残っているシーンに、五郎が歌う長渕剛の「西新宿の親父の唄」がある(「'92

        • 投票は民主主義の基本

          JDの「すべての人の社会」2020年12月号のコラム「視点」にこんなことを書きました。 友人のスウェーデン在住のサリネンれい子さんには、最近の動向を教えていただきました。感謝(^_-) 写真は、1998年当時のもの ーーー 視点 投票は民主主義の基本  薗部英夫(NPO法人日本障害者協議会副代表) 「あなたって選挙好きよね」と「BS世界のニュース」を見ていたらカミサンが言う。この100年で最高といわれる投票率(約66%)のアメリカ大統領選挙は、投票日から5日が過ぎ

        石原繁野さんの青春

          視点=オンラインの舞台裏から

          JD「すべての人の社会」8月号 2021年 掲載 視点 「オンラインの舞台裏から」  薗部英夫(日本障害者協議会副代表)  ゴリラが専門の霊長類学者の山極寿一さん(京都大学前総長)が「文化の力奪うオンライン」として、つぎのように述べていた。「人間が社会を作る上で、欠かせない、移動する、集まる、対話するという三つの自由が大幅に制約されてしまった。ただ、そのうち対話する自由だけは現代の情報通信技術で何とか保障されている」「これまで移動や会場の設営に多大な時間と費用がかかったこ

          視点=オンラインの舞台裏から

          北欧2018 共生の条件<7>住まいとインクルージョン

          障害者権利条約 第19条=自立した生活、地域社会へのインクルージョン http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/adhoc8/convention131015.html#ARTICLE19http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/adhoc8/convention131015.html#ARTICLE19 レジスタンス運動に参加し、ナチス・ドイツの収容所に投獄されたコペンハーゲン大学法学部の

          北欧2018 共生の条件<7>住まいとインクルージョン

          北欧2018 共生の条件<6>忘れ得ぬ人びと

          旅の途中の9月15日(2018年)に上杉文代さんが、帰国した22日に安藤房治さんが逝った。大事な旅の仲間だった。    ◆◇◆ 上杉さんは94歳、1924年和歌山生まれ。 ろう学校教員で全障研和歌山支部長など障害者運動を牽引された。 また、障害のある玉野ふいさんの参政権保障をと最高裁まで闘った。 不調と聞いて7月15日に和歌山のご自宅を訪ねた。 たくさんの想い出を語り合うことができた。 手紙もたくさんいただいた。 わたしの発信メールには90歳をこえても必ず返信してくれ

          北欧2018 共生の条件<6>忘れ得ぬ人びと

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          北欧2018 共生の条件<5>デンマークの学校と障害児教育

          北欧2018 共生の条件<5>デンマークの学校と障害児教育

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          北欧2018 共生の条件<4>散歩の時間

          ストックホルムの金曜日と土曜日の夜は、うるさいような賑わいで、頭の上の方から酔っ払ったような大声を聞いた。 それが日曜日の夜になると、人出はパッタリ、さみしいほどになり、月曜日の朝には、キリリとした働く顔になる。男も女も、長いストライドで歩く(走ってるような速さだ)。コペンハーゲンほどではないまでも自転車の群れも猛スピードで連なる。そんなメリハリのある日常の顔も見ることができた(^_-)   ◆◇◆ 休日にはスカンセンを歩くことに決めていた。 中央駅そばのホテルの脇の通り

          北欧2018 共生の条件<4>散歩の時間

          北欧2018 共生の条件<3>ダンスパーティの夜

          ストックホルムの地下鉄で南に5つ目の駅からLRTの路面電車で2駅にあるハンマルビー地区。かつては工場地帯だったが、工場が東欧などに移転した後、重金属などで汚れた土壌を入れ替えてエコ住宅群を建設した。現在は、子育て世代が多く住む住宅地になったそうだ。 わたしは、20年前、1998年のスウェーデン総選挙の時、労働者が多く住み、社会民主党が伝統的に強いと言われたこの地域の基礎学校を会場とした投票所を視察したことがあった。今は昔の感あり。 http://www.nginet.or.

          北欧2018 共生の条件<3>ダンスパーティの夜

          北欧2018 共生の条件<2> スウェーデンの特別支援教育の現場

          ナッカ・コミューン(自治体、人口10万人)は、ストックホルムの東隣にある。 わたしたちは重複障害児が多く学ぶ保育園=ソールフィヤーデンス特別就学前学校(Solfjarderns specialforskola)を訪問した。 地下鉄のスルッセン駅を降りると大きなバスターミナルがあり、市バスで爆走すること約20分。緑が多いバス停で降りて、気持ちのいい秋を歩く。 ここでは、1歳から6歳までの子どもたちを保育し、ナッカ・ハビリテーリング(センター)と協力していると聞いていた。   

          北欧2018 共生の条件<2> スウェーデンの特別支援教育の現場

          北欧2018 共生の条件<1>ユニーカとアテンド社

          ユニーカは、デイアクティビティセンターだ。ストックホルムの街中で、表現活動=ミュージカル、演劇、映画製作などにとりくんでいる。副施設長(この仕事について5年目)のマーティンなどからユニーカの活動について聞き、いろいろ質問した。   ◆◇◆ <ユニーカの活動はどうはじまったか> ・2006年に、一人の女性がユニーカの活動をはじめた。 ・いわゆる「デイサービス」では色あせてしまい、なにかおもしろい、ユニークな活動をとスタートした。 ・LSS法(機能的な障害のある人々の援助とサ

          北欧2018 共生の条件<1>ユニーカとアテンド社

          北欧2019行秋<8:最終話>旅は、まだ、終わらない

          北欧研修ツアーの全訪問日程を終えて、ストックホルムからフィンランドのヴァンター空港へ。成田と関空へ無事の帰国を願って、仲間たちと空港で別れて、またヘルシンキの街にやって来た。 見慣れた風景も、違ったように見える。季節は1週間で冬を感じさせる。 ジュネーブの国連ではじまる障害者権利委員会に、日本からは総勢40人が参加する。その日本出発は土曜日なので、わたしは中間点のヘルシンキで待つことに。 でも、「独り飲み」のできないわたし。 晩飯はどうしたものかと、夕暮れの撮影兼ねて海辺

          北欧2019行秋<8:最終話>旅は、まだ、終わらない

          北欧2019行秋<7>安心できる住まい

          気温7度。空気が気持ちいい。 市バスでストックホルム市立図書館のそばで降りて、集合住宅の7階に上がる。市が管理する知的障害者住宅=ノルツールスガータン12(グループアパート)を訪問した。ここは55歳以上の知的障害のある人たちのための住宅で、5つのアパート(居間、寝室、トイレ付浴室、キッチン)がある。 「なぜ55歳なんですか?」と質問すると、「ダウン症や知的障害の方は、目安として55歳くらいから ”高齢”があるので」。 「なぜ、町の真ん中にあるのですか?」には、「公園もあるし

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          北欧2019行秋<6>つどえる場

          東日本を直撃した猛烈な超巨大台風19号(ハギビス)。大雨による河川の氾濫など被害は甚大。全障研や障害者団体は関係者の被災状況を把握しているところだ。 そんななかケータイが鳴った。群馬で独り暮らしている母親からだ。東京はだいじょうぶだったか? 孫娘の埼玉は平気か? などなどにはじまり、利根川と渡良瀬川に挟まれた小さな町での避難体験を語りはじめた。 土曜日の午後、これは酷くなると感じた彼女は、人に頼るのが嫌なハズが、すばやく町役場に電話して避難所の場所を尋ねたそうだ。役場の担

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          北欧2019行秋<5>グスタフスベリィの高齢者住宅

          スウェーデンのストックホルムから、バスで東へ小一時間ほど。グスタフスベリィはヴェルムド自治体(人口4万)にある港の町だ。 「この町の陶磁器のアーティストたちの高齢者住宅を訪ねてみたい。だって、大好きなリサ・ラーソンがすごした町だし、なんといっても陶磁器の色合いが、デザインが素敵なんだよね」と言ったのは2015年秋の旅だった。 でも、一度は「訪問OK!」となっていたその高齢者住宅は、その年の夏、運営委託会社が突然変わってしまって訪問はボツに。そして、今回その訪問が現実になっ

          北欧2019行秋<5>グスタフスベリィの高齢者住宅