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視点 やるなら今しかねえ

NPO法人日本障害者協議会副代表 薗部 英夫

 40年前に初回が放送された倉本聰のドラマ「北の国から」。映画「男はつらいよ」とともに見たことがないという若い世代も増えているようだ。この「北の国から」には、東日本大震災後のコロナ禍での今を舞台にした「幻の台本」がある。ぜひ見てみたい。

 主人公の黒板五郎(田中邦衛)と子どもたちの物語には、バブルとその後の時代へのアンチテーゼが重低音で流れている。印象に残っているシーンに、五郎が歌う長渕剛の「西新宿の親父の唄」がある(「'92巣立ち」)。「66の親父の口癖は やるなら今しかねえ~ やるなら今しかねえ~♪」。

 2021年10月、衆議院選挙が終わった。投票率は約56%と低く、そのうち、期日前投票数は約19%で2000万人を越えたそうだ。いうまでもなく、投票は重要な政治参加の権利だ。ところが、障害者への合理的配慮を欠くような事例が寄せられている。これは障害者権利条約(第29条 政治的及び公的活動への参加)の実現を妨げるものだ。以下、4つの視点からいくつかの事例や改善要望を整理してみたい。

 1)情報のバリアフリーの視点
○ 「期日前」がはじまっているのに「選挙公報」が届かない。「裁判官国民審査」の「公報」含め、電子データでも提供してほしい。入院や入所している障害者にも確実に届けてほしい。
○ 知的障害者にわかりやすい「選挙公報」がない。

 2)投票所の環境などに関するバリアフリーの視点
○ 低床の投票記載台で「イスに座って記入したい」と希望しても「車いす専用です」と断られた。
○ カラーユニバーサルデザインに基づく投票箱の色分けや誘導矢印表示がない。

 3)投票方法、投票用紙などのバリアフリーの視点
○ 原則自書のみとする公職選挙法が、自書の困難な障害者の投票権の行使を妨げている。
○「裁判官国民審査」用紙のマス目はめちゃめちゃ狭く、不随運動がある人には記入が困難。
○ 視覚障害者は、審査で×をつける場合は、一人一人の裁判官の名前を、自らが点字で打ち、バツ(×)を打つ。投票方法を改善してほしい。
○ 補助者を投票所事務員に限定する公職選挙法が、通訳介助者を介して自らの意思を伝える必要がある盲ろう者や、自らの意思を家族・支援者に対してであれば伝えられる障害者の投票権の行使を妨げている。自らが選んだ同伴者による代理投票の実現を。

 4)その他のバリアフリーの視点
○ フィンランドではすべての病院で投票をやらなければならないという法がある。病院・施設等に移動投票所を開設してほしい。
○ 筋ジス病棟で暮らしています。期日前投票を代理投票しました。代理記載人の管理課員に、指さししてもらい、記載してもらう。立会人には 投票内容が知られないようにするためカーテンの外で立ち会ってもらいました。他ではどうしていますか?
○ 障害者手帳取得が非常に困難で、障害者総合支援法の対象にもなっていない難病の人には、投票所まで歩いて行くことができなくても車いすは支給されず、期日前投票することもできない人がたくさんいる。改善してほしい(筋痛性脳脊髄炎の会)。

 投票における合理的配慮を欠く問題事例を寄せ合い、整理して、多くの障害者団体とともに国などに改善要請したい。やるなら今しかねえ~。
(JD「すべての人の社会」2021年12月号)

そして、つぎのアクションをはじめています!
★【投票における問題改善のため事例や意見を寄せ合う取組み 】        

JDでは、障害のある人の投票に関して、先の衆院選でもみられた合理的配慮を欠く事例は、国民に等しく保障された参政権を侵し、障害者権利条約第29条(政治的及び公的活動への参加)実現の妨げにつながる重大な問題であるととらえ、問題の改善を国や自治体などに求めていきたいと考えています。国選・地方選での投票における合理的配慮を欠く事例(体験)やご要望を募っています。フォームより2022年2月22日までにお寄せください。

https://forms.gle/t6GbpT4m8QWMugXv6




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