見出し画像

コメダオタク、株主総会に行く。

株。それは究極の推し活。
コメダオタクたる私は、株の購入が推し活に繋がるのではないかという考えに至った。
去年の11月、人生で初めて株を購入。そして今年の2月末、権利確定日を迎え、晴れて株主となったのであった。

株主としてやりたいことは主に3つ。
その1・称号ゲット。
株を3年保有し、3年目の時点で300株に達している場合、長期保有株主という称号が得られるのだ。1年目から300株を買う必要はない。2年間は100株を保有し、3年目に200株を買い足しても条件はクリアできる。

でも、いてもたってもいられなくて、もう300株にしちゃった。この状態で3年が経過すれば、私は晴れて長期保有株主だ。
人生をゲームに例えるなら、これはアチーブメント、あるいはトロフィーである。株式というクエストに挑戦したからには獲得したいよね。
それに「長期」保有株主という響きがカッコいい。オタクたるもの、古参ぶりたいじゃないですか。
安心して。私は同担にマウントを取るつもりはない。新規にも優しい古参オタクになってみせるよ。

やりたいこと、その2・株主優待を受ける。
株主優待は、もちろん株主にならないと享受できない恩恵である。
5月某日、私の元にも届けられた。

ワクワクしながら開くと……

出たー!念願の、株主優待KOMECAだ!
KOMECAとは、コメダで使えるチャージ式プリペイドカードである。店頭で申し込めるのだが、その場合には通常デザインのカードがもらえる。

ソファをモチーフにした通常デザインも好きだけど、やっぱり特別なデザインを使いたいよね!
そしてチャージ金額の優待もあるぞ。なんと年に2回、1000円がチャージされるのだ。助かる〜!

やりたいこと、その3・株主総会に行く。
株といえばやっぱり株主総会でしょう!
株を推し活と認識してから、株主総会は私の憧れと化していた。

私はコメダオタク。コメダが大好きなわけです。
株主総会とは、愛するコメダが自ら開催する、年に一度の一大イベント。しかもそこに私を招待してくれるのだ。
コメダを投資対象と見なすだけで、贔屓にはしていない株主もいるだろう。しかし、コメダの将来性を信じ、自分の財産を託しているのは皆同じ。そんな人々が集い、コメダに思いを馳せる。
それってファンミーティングじゃん。
絶対行く。仕事休むね。



◼︎届いた招待状

去年の11月に株を買った日から、ずっと株主総会を心待ちにしていた。
そして5月某日。遂に、株主優待と共に招待状が届いた!
よく見れば招待ではない。正しくは招集である。
でも招待状と表現する方が夢を感じませんか?
これからも私は招集通知を招待状と言い張るね。

株主総会において、我々株主は議決権を持っている。議決権とは、株主総会の決めごとにおいて票を投じる権利。この議決権を行使する方法としてはオンラインが推奨されており、総会の模様はライブ中継される。
なら、ライブ中継でいいんじゃないか?
いいや、一度は現地に行きたい!確かに現地で見た後で「やっぱりライブ中継でも良かったな」と思う可能性はある。でもライブ中継を見ながら「現地はもっと楽しいのかな、行けば良かった」と思ったらどうする?
これが悔いなき選択というやつです。

電子配布された参考資料を見て予習しておこう。
資料によれば、株主総会は大きく2つのパートに分かれているようだ。
パート1、報告事項。事業や決算の報告、そしてそれらが公正で間違いないよという報告。色んな表が載っていたが……。
うん、理解できない!でも経営は多分いい感じ!
最近の若者はすぐに良し悪しで論じたがるんだ、すまない。

パート2、決議事項。取締役と監査のメンバーを選任するらしい。ここで株主の議決権が発揮されるわけだ。
えっ!?私の清き一票が幹部の顔ぶれを左右するってこと!?そんなの選べないよ〜!
と思っていたら、衆議院議員選挙のような投票ではなかった。
メンバーはあらかじめ決められており、その賛否を表明するだけ。反対する場合にのみ、除外すべきだと思った人の名前を書く。
良かった、10人から7人選べみたいなのだったら一生困ってたよ。
でも、ちゃんと全員の紹介に目を通した。それぞれの候補者に選出理由がしっかりと書かれていた。みんな知識や経験が豊富だし実績もあるから、取締役として迅速で適切な意思決定ができるらしいよ。うん、いいと思います!

株主総会に必要なものは、議決権行使書用紙のただ一枚。しかし、これを忘れたら一巻の終わり。
何度も確認してから、カバンを閉めたのだった。


◼︎これが株主総会コーデだ!

株主総会の前日。
仕事終わりの夕刻、新幹線で田舎を脱出。コメダが好きなので愛知県在住だと思われたことがあるが、実は広島県民です。じゃけど広島駅から遠いとこに住んどるけん、のぞみに乗るのがほんまに不便なんよ。

夜の街を歩き、ホテルにチェックインしたのが23時過ぎ。
なんやかんやで1時半に就寝。

5時40分、起床。
はい、起きてー!寝てる暇ないよー!
私はこの日のために株主総会コーデを考案してきた。さあ、身支度して!

信じてもらえないだろうが、私がコメダオタクになる前に買っていたワンピース。
当時は赤と紺で迷ったのだが、気を衒って赤にしてみた。だが、さほど赤を着る勇気が出ず、捨てることも視野に入れていた。
今にしてみれば、この赤色は紛れもなくコメダのソファの色!しかもソファの柄に似た縦ラインまで入っている。
コメダの集まりのために生み出されたとしか思えない。捨ててなくて良かった。

そして、呪物のようなペンダントを装着。リーメント謹製・コメダブレンドのミニチュアカップに、手芸店で購入したネックレスチェーンを通したものだ。
家で予行演習したが、ケンエレファント製のミニチュアだと上下逆さまで安定してしまう。リーメントのミニチュアじゃなきゃ実現できない。
あまりに目立つようならワンピースの内側に隠して歩こうかな?どうだろう?

あー小さいね!バレないバレない!
安心して街を歩けるね!

仕上げはカバン。
旅行カバンに忍ばせていた、コメダ公式トートバッグ。大変に目立つ色合いなので、普段使いには躊躇している。

たくさんの株主が来るのだから、一人くらいは私と同じ赤備えがいるかもしれない。そしたら心強いんだけどな。
同志の存在に期待しつつ、ホテルを後にしたのだった。


◼︎いざ、会場へ!

前日は雨だったが、この日は雲ひとつない晴天。
赤いワンピースに身を包み、ペンダントのような呪物を首からさげ、赤いトートバッグを片手に名古屋市内を闊歩する。こんなに真っ赤な姿なんて、カープの試合がある日のマツダスタジアム周辺でしか馴染めないだろう。

舞台は名古屋観光ホテル。
大きな建物だが、実際に用があるのは3階の広間である。

入口から既にスーツ姿のスタッフさんたちがズラリ。
みんな社員さんかな?

高級ホテルの雰囲気を堪能しようと思っていたのに、スーツの皆様が至る所に配置されまくっており、アワアワしているうちに会場までご案内されてしまった。

ここで一つ反省点。
議決権行使書用紙は、入場時に提出する!あらかじめ記入しておくこと!
株主総会の話を聞いて、最後に記入して帰るんだと思っていた。
私の前に受付したお兄さんも「まだ書いてないんですけど……」と困惑していたが、係の方に笑顔で受け取られていた。
記入なしは賛成の扱いらしいので、まぁいいか。

みんなスーツじゃない。普段着の人ばっかりだ。良かった〜!
待て待て、お前のは普段着じゃないだろう。お前のような赤備えはいません。コメダトート持ちもいません。ほら、前列のおじさんに二度見されてるよ。異常者の自覚を持ちなさい。

スタッフさんが「よろしければ前方に」と勧めてくれるが、こんな真っ赤な女が前列に張ってたら危険人物でしかない。学生時代の講義室での席取り経験を活かし、そこそこ中列のそこそこ端っこ、極めて無難な席を陣取った。

開始までは、2023年度の新店舗を紹介するスライドショーが流れていた。
撮影・録音禁止なのは承知していたため、ここからの写真はない。
しかし撮影も録音も禁止の内容を、こんなオタクの怪文書に昇華していいものか?
会が終わったらスタッフさんに確認しよう。

そんなことを考えているうちに、偉い人たちが登壇。2列に渡って着座。
……ん?このまま始める感じですか?
学校の卒業式に参列する来賓みたいに、舞台の傍に座るもんだと思ってた。
全員がそんな会場を見渡せる感じで座るんですか?
待ってくれ。そんなつもりじゃなかった。
赤備えの自我丸出しオタクが、お偉いさん方の目に触れっぱなしになる!
マズいマズい!

私は公式に認知されたくないタイプのオタク。承認欲求はあれど、それは不特定多数からの反応で満たすもの。公式様には求めていない。

予想外の配置に焦る私をよそに、株主総会の開始時刻は迫り来るのであった。


◼︎コメダオタクは見た!株主総会レポ

さあ、時刻は10時。定刻通り、挨拶と開会宣言が行われた。
社長が自ら議長となり、進行役を務める。
まずは売上や利益についての報告。
大勢の前で澱みなく話せるのが凄い……!私なんて一対一でも吃るのに。
そしてスライドが見やすい!これが企業のパワポ!
事前に電子配布されていた参考資料ではちんぷんかんぷんだったが、色付きのグラフで示されると、分かりやすく頭に入ってくる。
今後とも売上や利益の目標達成に取り組み、株主への還元も頑張ってくれるらしいよ。

そして、コメダの重要課題と、その解決に向けた取り組み。
重要課題と書いてマテリアリティと読みます。
課題その1・品質とお客様について。限定商品や各地への出店、公式アプリの普及などは既知の情報。しかし、地域貢献として乗合バスを手がけていることは知らなかった。広い駐車場を活用するという発想が素晴らしいよね。
そういえば、近所のおじいさんがマイクロバスからコメダの駐車場に降りているのを見たことがある。デイサービスみたいなバスが乗り付けているのかと思っていたが、あれが駐車場を提供した乗合バスだったのかも。
課題その2・人と働きがいについて。このテーマでは、コメダ珈琲店ならびにおかげ庵の本店で店長を務める2人の女性が壇上でスピーチを行った。私より年下かもしれないような2人が一生懸命話しているのは凄いし、応援したくなった。
それはそれとして、こういう場で女性店長としてスピーチに駆り出すという行為そのものが、女性を特別扱いしているよね?女性店長を珍しがって担ぐのなら、真に女性を登用しているとは言えないのでは?毎年本店の店長がスピーチしてるのならいいけど。……男女平等の在り方は人によって意見が分かれる話題だ。この辺にしておこう。
課題その3・環境について。二酸化炭素の排出量削減のために、様々な取り組みを行っているとのこと。言っときますけど、私は紙ストロー反対ですからね!もし紙ストローにしようもんなら総会で意見しますからね!ストロー以外で取り組んでおいて下さい!

続いて、お待ちかねの質疑応答タイム。
社長の「挙手願います」の言葉と同時に10人以上の手がババーっと挙がる。
私は全ての質問に対して、どんな人がどういった内容を述べたのかをメモしていった。

全体的に、要望の直訴が一番多かった。設備の改善や、メニューの種類や量についてなどなど。
そういった要望は、その人たちがいつもコメダに通って、くつろぎの拠点としているからこそ出てくるのだ。大事な場所だからこそ、もっと良くなってほしい。そのような、コメダ愛を感じる質問ばかりだった。
そして、そういった質問には必ず感謝の言葉も交えられている。社長もいつもありがとう的な言及で応えていた。
やっぱりファンミですよね、これ。

そして発言権を得たファンの中には、自我の出し方が上手い人も多くいた。
自分がどれだけコメダが好きかという主張を、質問の中に上手い塩梅で混ぜるのだ。別に自分の情報がなくても質問内容は成立するんだけど、大なり小なり自分語りみたいなの入れちゃうよね、絶対。
推しに対して自我を出したくなっちゃうの、オタクだから分かるよ。というか、服装によって現在進行形で自我を出してるのが私です。
各々の自我の出し方について、あの人上手かったなぁ〜、今の人は質問から逸れてるからやりすぎたなぁ〜、などと野次馬根性丸出しで聞くのも楽しかった。

そしてもっと面白かったのが、要望よりハイレベルな、突っ込んだ質問である。観客席感覚の立場からすると、そういうエッジの効いた質問の方が聞き応え抜群というもの。
期間限定商品が早期に終了した見込みの甘さを指摘された際には、さすがの社長も痛いところを突かれたという顔をなさっていた。
こういった、要望ではないしっかりした質問の場合、上手く濁されることが多かった気がする。適当に答えるわけにはいかないのも分かるが、「え?これで終わり?質問者さん絶対納得できないよね!?」と、見ている側も消化不良になるような解答もいくつかあった。
「単なる要望ではなく、質問らしい質問にこそ時間を取ってあげてほしいな」という要望を抱いたのであった。

しかし、総じて感謝と要望が多かったこともあって、発言するファンを周りのファンが見守るような、あたたかい和やかムードで包まれていた。
総会が始まるまでは、もっと殺伐とした雰囲気を想像していた。
プロ投資家軍団が首脳陣を激詰め!飛び交う専門用語!私はこの戦いには着いていけねぇ……みたいな。
この場で優しい雰囲気を味わったので、今度はそういう展開も見たい。
優しい消費者部門と厳しい投資家部門とかで分けたら面白そう。

会が進む中でひとつ学んだのは、動議という概念。
最後の質疑応答の後、一人のおじ様が「動議!」と声を上げ、質問の時間をもっと取るべきという意見を述べた。
おっ、いちゃもんをつけるヤバい人か!?
いや待て、そう捉えるにはあまりにも早計。私は株主総会の仕組みについて無知である。きっと申し立てるシステムが存在するのだ。
後で調べたところ、やはり株主総会において基本的な言葉だった。

おじ様は自分が質問したかったからではなく、株主への誠意に疑問が生じるとして議事進行に異を唱えたのであった。そして議長である社長は、株主みんなの意思を拍手により確認。
私は質問を打ち切る方に拍手した。時間が経ち、だんだんと質疑ではなく各個人の要望発表会っぽくなっていたので。でも後から思えば、誰も拍手しなくて質疑応答が永遠に続く世界線も体験したかったな。

最後に、新しい取締役と監査についての決議。
拍手によってこのメンバーで良しと認められ、決議はすんなり終了。
新任の方の紹介と挨拶を終えて、閉会宣言。


◼︎なぜ書き残したいのか?

株主総会が終わった後、私は本当にスタッフさんに確認した。
「総会の内容をSNSやブログにアップするのはやめた方がいいですか?」
そう思うならやめとけよって話よな。
下らんことを尋ねて申し訳ございません。

適当にあしらわれて終わるだろうと思いきや、スタッフのお兄さんからお姉さん、お姉さんからおじ様、おじ様からもうワンランク上のおじ様にまでバトンパスされてしまった。
質疑については個人の発言であるため、世に公開することへの同意は得られていない。質疑応答への具体的な言及は控え、抽象的な雰囲気について述べるに留めることを勧められた。
こんなしょうもないオタクにも真摯に回答して頂き感謝しかありません。

このお言葉も踏まえた上で、私は改めてnoteの動機を顧みた。
別に胸に留めておけばいいものを、なぜ書き残そうとするのか?
私にとって、noteはオタク感情の発露。布教活動であり、推し活でもある。

株主総会でどんな話があったかという事実の羅列は、出席した人ならば誰でも書ける。でも、オタクがどう感じたかはオタクにしか書けない。
株主総会コーデをキメて、ミニチュアを首からぶら下げ、株主総会をファンミと捉えるようなコメダオタク。推定競技人口1名。
こんな異常者にしか書けないモノでなきゃ、逆に残す意味がない。

というわけで、今回は、コメダオタクの主観バリバリで株主総会をお届けした。具体性や客観性に欠けると思われたかもしれないが、以上のような経緯によるものだ。
せめて私が思う存分エンジョイしたことだけでも伝わっていればいいのだが、いかがだっただろうか。

ちなみにライブ中継で満足できるか問題についてだが、どうしても現地じゃなきゃ味わえないという要素はそれほどなかった。リモートでも間違いなく困りはしない。
質疑応答のライブ感は、現地の方がより味わえるだろう。でも、リモートも同じように楽しめるかどうかは、中継を見てみないと結論づけられない。
現地とライブ中継の比較もしたいので、来年はライブ中継にしようかな。
とか言って、結局現地に参戦してるかもしれないが。


◼︎最後に

この頃、私は人生を「人生ゲーム」のように感じることが多々ある。
周りは、出会い・恋愛・同棲・結婚・子育てと、順調にマスを進んでいく。しかし私はアラサーにも関わらず、一向にコマを進められていない。

さっきまで株主総会の話をしていたのに、いきなり何だと困惑されるかもしれない。
人生のイベントを何一つこなせておらず、それどころか日々のコメダが最大の楽しみで、さらには株主総会にキャッキャしている──そんな我が身の行く末を憂いたことは何度もあるのだ。
本当にこのまま「好き」を中心にする人生でいいのか?

今のところ、私の答えはこうだ。
いいじゃないか、脇道を進む人生だって。

それは自己の正当化だと言われたら……それはそう。
でも、突き詰めていくと人生って、自分の生き方を正当化していく過程ではないかと、私は思う。
誰にでも死というゴールは訪れる。それまでに、自分は生きてて良かった!と思えるように、様々なイベントで経験を積むのだ。
自分はあんなことができた!だから人生楽しかったよ!
こんなこともできた!だから人生に悔いはないさ!
そう思えるくらいに経験を積めていたら、死を心安らかに迎えられるのではないか、というのが持論だ。

誰かと暮らし、家庭を築く。今の私にとって、それは苦行としか思えない。良い人生だったと思う材料にはならない。
対して、私の人生を良くしているもの。それこそが推し活。すなわちコメダとそれに関連した様々な活動。
今回の株主総会は、人生ゲームのコマが進むような出来事ではない。しかし、私が私の人生をより良く捉えるための、大きなサブイベントだったように思っている。
もしも死の直前に、その集大成として走馬灯が流れるのなら、今日という日は絶対に組み込まれる。そしてそれは人生の楽しかった経験として想起されるはずだ。きっと死を受け入れるための大切な糧になってくれるだろう。

推し活が人生を肯定することを信じて、今日も私はコメダ珈琲店の扉をくぐる。


この記事が参加している募集

#一度は行きたいあの場所

51,597件

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?