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公務員を退職すると決めた日の私へ

26歳。4年間務めた公務員を退職する。
退職を本格的に考えた23歳の時と比べると自分の鮮やかな未来への期待は薄れ、それがどんな色をしていたかさえ思い出せない。
輝かしい未来よりも変わらない未来の方が大事みたいだ。
自分が主役の未来像が徐々に薄れ、子どもの為の未来が鮮明に見え始める。
数年後にはきっと自分は母親で主役は子どもだ。
昔は大きくてどこからでも飛び込めると確信していた夢とか希望とかは水たまりみたいに小さなものになってしまったようだ。飛び込んだって足元が少し濡れ、前よりも不自由になってまた元の生活が始まるんだ。


そう考えるようになることは実はわかっていた。
母親やそのまた母親が安定が1番だと当然のように口にしていた時、安定、公務員、それらは全く魅力的ではなかったからだ。
私もいつかこの人たちのように、大きなものへの期待は捨て、中くらいの毎日が続くことを1番の幸せに感じるのだろうと。


私には夢がある。
管理栄養士の資格を生かして色々な仕事を経験することだ。
そして、フリーランスとして独立したい。
今は学校給食をしていて、毎日楽しく、何の不満もない。
夢を諦めさえすれば、この毎日が続くことが保証されている。

そうだ。

だから私はもし、自分に家族が増えたら、自分よりも大切な存在ができたら、簡単に自分の夢などなかったことにできるだろうと思った。
自分は最初からこの為にこの仕事に就き、この仕事を続けていたんだと心の底から満足できるだろうと思った。


自分の夢を忘れていくのが怖かったんだ。
私が将来、自分よりも大切な存在だと、この子のためなら自分を犠牲にできると、そうやって守り育てる子どもは、いつかの母が私へ抱いた期待と同じものだからだ。

23歳の自分がもった希望を薄れさせたくない

そう思うと、うかうかしている暇なんてなかった。
ぼんやりしていれば、うっかり結婚し、うっかり仕事を続け、うっかり自分の人生が子どものための人生になるところだ。


私の公務員人生はあと一か月。
楽しかった。
夢を追うと決めた日の気持ちを薄れさせない。
あの時、強く心に誓った自分、ありがとう。
人生何とかなるさー、頑張ろう。


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