パイセン


昔神戸に住んでいたころ

東京に来るたびパイセンの家に泊まってた。

いつもタバコの火をつけ、コンビニの袋を持つことが
俺の仕事だった。

タバコくさい狭い部屋

くだらない話を永遠としてた。
楽しかった。
居場所。本当にそうだった。

東京にきてもう2年が経つ。

あのパイセンちょっと前にいなくなっちまったから
もう会えない。

パイセンがいたら

こんな夜は

もう少し賑やかだっただろうな。

こんな時間に電話しても多分出てくれただろうな
何も言わず、「飯食ったか?」だけ聞いてくるだろうな。

いつでもこんなガキを受け入れてくれたあの部屋が

もう空っぽだなんて

こんな話があるか。

もうあれから何年経つだろう。

パイセンのいない東京は飯の入ってない茶碗のように

虚しく響く。

「誰かがもし生きていたら」

なんてくだらねぇことは考えたくない。そんなクソみたいな考えは嫌いだった。

だから考えたことはなかったけど

今日、あの日から初めてちょっと考えてみた。

気付くなんて前に

やっぱり溢れるもんだな

涙ってやつは。

パイセン。

さみしいぞ。

パイセン。

小さな歯を見せて、また笑ってくれよ。
また音楽の話したいぜ。

パイセン。

パイセン。





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