見出し画像

無観客運動会をライブ配信する話

低予算!少数人員!本番まで残り僅か!
この難題、なんとか実現させた先例をお見せできればと思います。配信実現までのプロセスや技術面での解説を詰め込みました。

学校行事ということで写真を載せられませんが、想像力豊かにお読みください。

ライブ配信と収録配信の相違点

先にめんどくさいか 後にめんどくさいか

ライブは、事前の準備やリハーサルが必要です。収録は、撮影後に編集する必要があります。
速報性が求められるのか、後日でも良いから見やすさが求められるのか。それぞれの現場で判断です。

配信プラットフォームは?

ZOOMを使用しました。
ライブ配信としてメジャーなのはYouTube liveですが、なぜZOOMを選んだのか。両者比較していきます。

今回は「長時間見るに耐える映像」が求められました。これを「固定カメラ1台ではなく、複数台のカメラ」と解釈したことが前提となります。(あっちこっちで様々なことが同時進行する運動会は、1台でカメラワークを凝っても見にくくなります。)

カメラ1台でいいよという方はYouTube live一択です。YouTube liveのやり方は他に説明しているサイトがたくさんありますので、そちらをご覧ください。

ZOOMのメリット・デメリット

◯デメリット
・会議に特化したソフトです。本来の目的外での使用となるので、想定外のトラブルが起こる可能性が高くなります。

・全員が(ほぼ)対等な関係です。つまり、操作ミス等でも保護者が配信者となってしまう可能性があります。

・有料契約が必要です。無料版だと参加者2人まで時間無制限、3人以上は40分までです(2021 9月現在)。これでは実用に値しないでしょう。今回は1000人までのプランを契約しました。

・見る側にも多少の負担がかかります。専用アプリ等を事前にインストールしてもらう必要があります。一方YouTube liveはURLをクリックするだけです。

◯メリット
・カメラの台数を柔軟に変更できます。カメラの数だけ配信者として会議に参加するのです。また、1台ダウンしても大きな事故にはならない。

映像切り替え(スイッチング)を見る側に委ねることで、配信側の労力と設備が圧倒的に少なくなります。YouTube liveをマルチカメラで行うとなると、かなりの機材と知識と予算が必要になります。

・簡単に配信を行えます。ミーティングに参加、カメラをオン。これだけ。

以上です。
メリット少な!
いや、配信側の労力が少ないという点がデカすぎるのです!!別にサボろうとしているわけではありません。その理由は…↓↓

熱弁タイム 伝われこの気持ち

労力を減らす、機材を簡素化する。これ、非常に大事です。このnoteに辿り着いたそこのあなた、今後配信の予定があるのでしょう。そして、どうすればいいのかわからないからこそ調べているのでしょう。
…少々キツいことを言います。

調べないと配信できないようなあなたが労力と機材を増やすと、自分でもわけわからなくなってしまい、トラブルが起きても対応しきれなくなります。クオリティを高めたい気持ちはわかるが、まずは最低限を確保しろ!!

経験から確かに言えることです。不快になられたのなら申し訳ありません。しかし真実なのです。本当に。

機材構成

iPad+三脚+iPad装着マウント 5セット
iPhone+DJI OM4 1セット
充電器 6個 ←昼休みに一斉充電
ホスト用PC 1台
モバイルWi-Fi 1台 ※2.4GHz帯のみ使用してください。5GHz帯を屋外で使用すると電波法違反です。たしか。

全て学校の備品です。モバイルWi-Fiについては部活で契約しているものを借りました。自分が転任or卒業しても問題ないように、私物の持ち込みは慎重に。SDGsってやつですねー

当日までに済ませておくこと

まずは教員の間で話し合いをしてください。学校としてはどの程度まで配信したいのか(遠くから眺める程度でいいのか、生徒の表情まで感じ取れるぐらいなのか)、生徒課としてどの程度まで許容できるのか(プライバシーの問題など)、いろいろあるはずです。ここが固まらないと計画を立てることができません。クライアントはあくまでも学校です。学校の要望通りの配信ができれば、次に繋がります。

保護者宛文書。ZOOMの使い方をきちんと説明しましょう。ミーティングIDとパスワードもここで配布しておきます。使い方なんて端末毎に異なるから自分で調べろというわけにはいきません。デジタル音痴は一定数おられます。紙媒体での丁寧な説明が重要です。
学校ホームページに使い方を掲載というのも手ですが、ホームページにアクセスできるような人はZOOMの使い方なんてすぐわかります。文書か対面で説明しないとどうにもなりません。こういうのに詳しい子供たちは当日家に居ないわけですから尚更。我々はここを怠ったせいで、当日の事務室は電話の嵐でした。

リハーサルは最低1回は行いましょう。運動会予行演習の時にやると良いでしょう。また、見る側のリハーサルも行うと良いです。何も無いグラウンドの様子を1日中垂れ流しておくだけでも、保護者の接続練習には十分です。こちらの負担はそんなに大きくないはず。

この競技ではカメラ1はここカメラ2はここ…と綿密に計画を立てたくなりますが、本番はなにがあるかわかりません。それに、計画を覚えきれません笑。柔軟に対応できる範囲でざっくり決めておくのが良いでしょう。

当日の動き

①急遽集められた暇そうな先生と生徒を配信係とし、1人1台カメラを担当。競技ごとに適当な位置に移動して配信しました。音声は1台のみオンでそれ以外はミュートです。

②iPhoneをOM4に取り付けて移動カメラ。

③ホストPCには常に詳しい教員が付き、カメラやマイクがオンになっている家庭にオフにするよう呼びかけます。

④日差しと雨対策に、100均のスチロール板で簡易的な屋根を作成。

⑤モバイルWi-Fiを本部に設置。校舎のWi-Fiはグラウンドまで届きません。

反省点

(上記の番号と対応しています)
①概ね良し。安い写真用三脚だったので、無理にカメラワークを行おうとしてガタガタになったぐらいです。iPadのカメラは意外と狭角なので、外付け広角レンズがあればよかったかも。

②操作にコツがいるので、僕以外が触ると事故になりました。事前に練習必要。

③家庭の声が晒される事故が発生。ホスト側で個別に強制ミュートとかできないんですかね?詳しい(はずの)先生に任せていたのでわかりませんが…。

④軽量iPadに装着したことで風に煽られやすくなり、1台転倒しました。そこから全台外しましたが、熱停止などはしませんでした。雨対策にはカメラ部のみ穴を開けたビニール袋が良いですね。

最大の失敗!!ネットが遅すぎて、画質悪いわカクカクするわ、最悪切断されてしまうわで大変でした。カメラを増やしすぎたのも一因かもしれません。カメラの台数ぶん契約すべきでした。

配信するということを生徒にもっと伝えておくべきでした。気付かずカメラの目の前に背を向けて立ったりすることがありました。アイドルのライブの如く「手を振って♪」「こっち向いて♡」と書いた紙をiPadに貼っておくと良い表情が撮れたかもしれません。

画質の悪さは、それはそれは本当に酷いものでした。チャット欄にお叱りのコメントが飛ぶこともあったそうです。
また、音声も聞けたもんじゃありませんでした。これについては設定ミスです。ZOOMは会議用であるが故に、本来なら人の声のみが聞こえてほしいわけです。そこで、強力なノイズキャンセリングがデフォルトで有効になっています。放送や観客の声を全て雑音と判断したために、聞こえなくなってしまったのです。設定方法は各自調べていただきたいのですが、「オリジナル音声を有効化」みたいな設定が必要です。

総評

ZOOMで複数台カメラ配信し保護者側で見たい映像に切り替え という手法は好評でした。しかし、繋ぎ方が分からず視聴を諦めた家庭も僅かにあったようです。

ネットが速い時間帯は移動カメラ(②OM4)が好評でしたが、遅い時間帯になりカクカクになると不評になりました。カクカクになることを見越してゆっくりカメラワークが大切です。

全体としては「改善点は多いが、無いよりはマシだ」という印象です。自分としては品質最悪だったのですが、好意的な感想もあり嬉しかったです。今回はネット速度が最悪だった。これさえ良ければほぼ完璧。ネット速度はしっかり確保してください!!

無いよりマシ精神、大切です。批判はいろいろありましたが、「こんなのならやらないほうがマシだ」という声はありませんでした。無いよりマシ精神を大切に、みなさんも頑張ってください!

今後

私物無しでの、いわば持続可能な配信はひとまず校内に確立しました。めでたし。
改善点もりもりで、私物を投入すればもっと良くできる。ポテンシャルを秘めているのに活かせない。これ、とても悔しいのです!ということで次回文化祭!ほぼ私物で高クオリティ配信を行った様子をお届けします。お楽しみに!

追記:公開しました↓

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?