コロナ禍でも合唱コンクールをしたい話
例年文化祭内で2時間かけて行われる合唱コンクール。例の感染症の影響で、大幅な時間短縮と感染防止対策を余儀なくされました。「20分間で事前収録にて行う」という条件の下、試行錯誤した様子をお届けします。
少しネタバラシしますと、これは半分失敗例です…
(このnoteは引き継ぎ資料を兼ねているので)これを読んでいる後輩、音楽科の先生とよく話し合って、見切り発車しないように。コロナが終息してまた元のコンクールができることを祈るばかり。
コロナ渦への適応
コンクールという名ですから、各クラス1曲ずつ歌い、審査してグランプリを選出するわけです。しかし、20分間という短時間と入場制限によりコンクールとしての開催は困難です。そこで「リモート合唱フェスティバル」に変更し、全校で協力して合唱動画を制作し上映することとしました。イメージはNHKの花は咲くプロジェクト。
体育館に入るクラスが文化祭1日目と2日目で入れ替わる計画です。出演クラスはそれに対応させました。1クラス1曲では到底入りきらないため、1曲をさらに分割して割り振りました。それを編集で繋げて最終的に7曲(1日目4曲 2日目3曲)完成させるという算段です。
スケジュールと概要
7月上旬
リモート合唱の話が出てきました。音楽科の先生から生徒である私に協力要請。上記「コロナ渦への適応」の大枠と曲目はこのあたりで決定しました。
7月中旬
合唱委員会を組織。全体的な雑務をお願いしました。
各クラス責任者決定。クラスの総括や撮影を行う人です。
生徒への企画内容説明。初めての取り組みなので、入念に行いました。本格スタートは夏休みを挟んでからなので、内容を思い出せるよう文書にまとめて配布することが大切です。が、実際夏休み明けてみると質問が殺到しました(´・_・`)
曲の割り振り。希望調査を取った上で、サビを3年生へ優先的に割り振りました。
伴奏希望者募集。クラスではなく全校の代表者として。
やる気のあるクラスはこの時期から自主的に合唱練習を開始。
夏休み前~夏休み前半
伴奏レコーディングと編集、完成
9月第1週(夏休み終了後1週間)
合唱撮影期間
9月第2週~本番
編集期間。かなり短期間に設定したため、焦りました。合唱練習の期間を長く取ってあげたい気持ちと編集スピードの自信のせめぎあい…。
編集ソフト
まず、パソコンを使いましょう。微妙なタイミング調整や数百にも及ぶファイルを管理するのはスマホやタブレットでは困難です。今回はDaVinci Resolveを使用しました。無料です。有料版も存在しますが、それはガチ業界人向けなので無料版で十分です。少々マシンスペックが要求されます。学校の備品のパソコンでは厳しいかもしれません。
また今回はSpectra Layers Pro (有料)も使用しましたが、普通にやる分には必要ありません。録音の不手際を回復するために使いました。なぜか入っていたメトロノームの音を消したり……。
伴奏
市販の音源ではなく、生徒の演奏を使用しました。これに合わせて歌を録音するため、一足先に録る必要があります。練習期間が非常に短くなるため、ノーミスで弾き切ることは難しいです。曲を分割・分担し難易度を下げるとともに、間違えた部分を録り直して繋げることで、なんとか完成させました。
◯レコーディング
伴奏者はイヤホンでメトロノームを聴きながら弾きます。慣れが必要なので、事前に家で練習してもらったほうが良いでしょう。
間違えた音のみ録り直しではなく、繋げやすそうなところから余裕を持って録ります。のりしろを常に意識。(伴奏者のプライドは別として)効率化です。しょうがない。
録るのと同時進行で、どのテイクを採用するのかメモしましょう。ファイル名をメモするとか、録音開始時に ◯本目 と声を入れておくとか。編集時に聴き分けるのは非常にめんどくさいです。
音楽の先生所有のレコーダーをマイクスタンドに立てて録りました。ピアノのマイキングについては明確な正解がありません。プロのエンジニアに聞いても答えは様々です。好みの音になる場所を探ってみてください。
耳を澄まして、ノイズが無いか確認しましょう。古い蛍光灯のブーンという音、エアコンの音…なるべく除去します。楽譜をめくる音や自分の鼻をすする音にも注意です。
◯編集
DaVinci ResolveのFairlightページにて行います。基本的な使い方については各自調べてください。
具体的な編集方法は別のnoteに後日まとめます。めちゃめちゃ長くなるので…。
合唱撮影
◯事前に決めておくべきこと
画質とフレームレートは最低限決めておきましょう。一般的なものはこちら。特に理由がなければこれでOK
今回は撮影用iPadを配布し「デフォルト設定で撮ってください」としたので細かい説明はしませんでした。
もっと詳しく決めてくれ!と知識マウントとってくる生徒が稀にいますが、一般的なものと言って理解できないのは未熟な証拠ですので受け流しましょう笑
◯撮影方法
パート別に伴奏音源を小さい音で流しながら、各クラスに1台配布したiPadで撮影してもらいました。(編集が地獄化した最大の要因です)
なぜこんなにめんどくさいことをしたのか?理由はいろいろあります。
①密を避けるため
撮影時間と会場を個別に確保するのは難しいため、各教室で撮ってもらうことになります。全パート同時に撮るとなると、かなり密集してしまうはずです。
②表情を映すため
なんと、マスク着用で歌えとのお達しが!一度に映る人数を減らすことで、顔をより大きく撮れます。
③歌の難易度を下げるため
編集期間を設けるため、例年よりも練習期間をかなり短くせざるを得ません。他パートにつられないぶん楽になるはず。
④音量バランスをそろえるため
歌と伴奏のバランスはクラス間で揃えるべきです。プロの現場ではヘッドホンをして歌声のみを録って後からミックスします。これは今回できないので、妥協して伴奏音源を小さい音で流すことにしました。
⑤余計なトラブル防止
全クラスの機種を揃えることで、トラブルへの対応がしやすくなります。私Androidなんですけど…とか言われたら、個別に直接出向いて考えて対処して、キリがありません。
◯提出方法
Googleドライブの共有機能を使用しました。生徒ひとりひとりに与えられたGoogleアカウント(今回のためにではなくgigaスクールの一環で)のアドレスをクラス責任者決定の際に把握しておきます。招待し、権限を閲覧者から編集者に変更します。
◯映像企画書
歌う様子をひたすら上映するだけでは面白くないので、各クラスミュージックビデオのように創意工夫してもらいたいところです。しかし、編集はこちらで行う計画です。そこで「映像企画書」というものを提出してもらいました。「うちのクラスはこんなかんじで編集お願いします」と編集者にわかりやすく伝えるための用紙です。
実際のものがこちらです。テンプレートは改善の余地がありますが、かなり役立ちました。
編集ソフトの画面をイメージして作りましたが、1段で十分だった気がします。伴奏を一部リテイクしたのと同じような撮り方をされたときのために各パートの欄を設けましたが、不要でした。
提出する際のファイル名と企画書に記入する名前を対応させるようにしたため、スムーズに編集できました。ファイル名がIMG_1234などのままだと、いちいち再生して何の動画なのか確かめなければなりません。
つまり、この紙の見た目どおりにパソコンのタイムラインに映像を並べていくだけ。
◯編集をクラスに任せたらどうなのか?
名乗り出た3クラスほどに任せてみました。結果、それを参考にこちらで1から編集し直しました。パートごとのタイミングが微妙にズレていたり、なにかと不備があったのです。つまり二度手間です。
細かいことは気にせずに自主性を大切にという方向性ならクラスに任せても良かった気がします。
編集
◯基本の心構え
薄く塗り重ねるように。
始めからこだわって作っていては、完成が間に合わなくなるかもしれません。ひとまず最低限公開できるレベルを作ってから、次は全体にテロップを付けて…と進めていきます。満足できるクオリティでなくていいので、とりあえず最後まで繋げてみましょう。
◯ファイル管理
全クラス提出するのを待つ時間は無いので、提出され次第編集に入りたい。ということで、パソコン内のフォルダ構成はこのようにします。
合唱素材
├5日提出ぶん
│├1-1
│├1-2
│ :
│└3-8
│6日提出ぶん
│├1-1
│├1-2
:
ダウンロードしたらGoogleドライブから削除していきます。そしてDavinci内でメディアビンをクラス分作成し、分類。
つまり、
提出された日付ベースのクラスごとに管理
↓
日付関係無しのクラスごとに再分類
この動画はもうダウンロードしたっけ?ということが無くなります。この方法で計400以上のファイルを捌きました。
1つのプロジェクト内に2つのタイムライン(1日目と2日目)を作成。両日で素材を共有したりするので。
◯具体的な編集方法
伴奏編集と同じく後日別noteで。
本番上映
あとは再生ボタンを押すだけ。映像だと本番が楽です。お疲れ様でした!
映像ならではの後日談
いつもは自分たちの歌を客観的に聴けないが、聴けて良かったとの声がありました。なるほどたしかに。
生徒向けに後日配信しました。思い出が何度でも呼び起こせて、良いですね。
他校の先生にも見ていただきました。かなり褒めていただきました。頑張った甲斐があった!
失敗
冒頭にも書きましたが、これは半分失敗です。編集が間に合わず、100点の映像が完成する前に上映となってしまいました。全ての元凶は「パート別にクラスで各自撮影」
①ファイル数が多すぎる
本校は計24クラスほどあります。単純に1曲3パートとして72本の動画が撮影されます。この時点で ウッ... という気持ち。そこにオリジナリティを出すための別カットや別録りの伴奏等々入って計400。ウウッ......グハッ
ファイル管理はなんとかなりました。しかし盲点、パソコンの容量が足りなくなりました。提出された動画自体は10GBいかないぐらいだったと思いますが、キャッシュが300GBを超えました。もしかしたら400近かったかもしれません。
まさかこんなに膨らむと思っておらず、キャッシュの保存先をメインのSSDにしていたのも悪かった。パソコンの挙動がおかしくなるまで気がつきませんでした。上映直前まで編集していたら、急にほとんどの動画がメディアオフラインに。あぁ、地獄の時間でしたよあれは…。
②タイムラプス
歌詞を黒板に書く様子をタイムラプス撮影したところが多かったのですが、それをそのまま使っても当然歌のタイミングには合いません。Davinci resolveのリタイムコントロールでタイミングを調整する(この作業はそこまで大変ではない)のですが、元からタイムラプス動画として撮られていると都合が悪いです。書くときの早送りと書き終わって決めポーズのスローを繰り返すのですが、スローのとき動きがカクカクになってしまう。普通のビデオとして撮っておいたほうが良い。あと、三脚で固定すること。
③タイミングバラバラ
伴奏音源を小さい音にしたら歌う人に聞こえなかったようで。全パート重ねてみたらびっくりしました。頭を揃えても終わりがズレてるんですもん。
④違う伴奏音源を使ってしまった
ネットから拾ってきたもので録音してしまったそう。こちらで用意したものとテンポが違うので、そのまま他クラスと繋げると曲中に急にスピードが変わってしまいます。
③と④は、Davinci resolve 16から搭載された「エラスティックウェーブ(弾性波)オーディオリタイミング」というAIを基に音声を自由自在に伸び縮みできる機能を使い、なんとか修正しました。ウソの歌声を作っているようで罪悪感満載でしたが、半数以上のクラスがバラバラだったのでやむを得ず。
オーディオリタイミングが本当に大変で、映像を凝ることができませんでした。さらに2日目はテロップなし、スタッフクレジットも無しとなってしまった。関係各所のみなさん、申し訳なかったです
⑤説明不足
事前の説明不足も大きく影響したはずです。完成品のイメージが個々の頭にあれば、伴奏とズレてるけど提出しちゃえ〜ということにはならなかったでしょう。
7月の生徒への説明の時点で未定なことがかなりあったので、私も正直あまりわからないまま進めてしまった。わからん人の説明を聞いてもわからんわな。
音楽科の先生はだいたい文系だが直面する壁は理系的(編集どうするか等)というのも計画を立てる上でキツかった。
おわり
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。コロナ禍で悪戦苦闘する方のお役に立てれば幸いです。音楽の力を信じて、皆さんも頑張ってください!
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