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涙はショッピングモールの屋上で流れる

誰一人振り向かなかった。
だって、声がなかったから。
きっと、声のない温かな涙だったんだ。

いつも目にしてるあのショッピングモールのてっぺん、
だだっ広い駐車場の端っこに赤いマフラー巻いた男の子。
ほら、風がナイフみたいにうなりを上げて
そう、そいつが涙の犯人ってわけ。

男の子はぼんやりと空を仰ぐ。
彼がさっきまで手にしていた、
手から離れた風船はたぶん空の涙で、
かすかに空気を揺らしながら青空という頬を伝っていく。

今確かに目にしている、
これと同じ空がもう二度とやってこないって。
そんな大事なことを、
あの風船は温かい涙になって教えてくれる。

男の子がブルッと身震いした。
買ったばかりのコロッケを妹と半分こしながら。

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