黄たまご

午後9時30分のスープ

差し出した手のひらに花びらが舞い落ちるような偶然や、
口笛が鳴って雨が上がるような思いがけなさが、
この世界にはある。

そんな特別を探し求めてきたはずなのに、うちの奥さんが手渡してくれた一杯のスープに見入ってしまった。
澄んだ色、柔らかな香り、その温かさ。

こんなもののために死ねたらいいなんて。
口にはできないけれど、
言ってしまえば大げさになってしまうから、

温かいまま、体の中に流し込むんだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?