見出し画像

オンライン授業を終えて


(5月半ばに書いた文章です。さらに何回かオンライン授業を重ねた現在とは、若干見解が異なっているところもございますが、せっかくなので掲載します)

 オンライン授業開始から一週間分の授業が終わったので、その雑感などを。
 色々悩みましたが、これまでの講義科目に関しては、すべてオンデマンド型(動画+課題提出)としました(卒論用のゼミや大学院の授業などは例外)。

・動画はPowerPointのスライドに音声と動画(?)を貼りつけたもの。
・最初と最後には、教員の顔が右下に映るようにした。
・課題提出は、当日内あるいは翌日までと、比較的期間を長めに。
・PowerPointのスライドは、「デザインアイデア」を用い、できるだけ見やすく、かつ見飽きないように。
・動画は、10分前後のものを2-3個で、ひとつの授業を構成。

 ライブでの双方型授業としなかったのは、現段階で環境面で対応が難しい学生がいるためです。また、PowerPointのスライドを使うことにしたのは、従来の私の授業でもPowerPointを使用していたため、移行が比較的容易だったためです。
 初回の授業の課題の一つとして「質問・感想」を書かせるという課題を設定いたしましたが、その感想を読んだところ、おおくの学生からは好評だったように思います。

「資料配布型の授業が多かったので動画はすごくわかりやすかったです。」
「これからの授業の仕方などが丁寧に説明されていてとてもわかりやすかったです。」
「レジュメもパワーポイントも見やすいし、とても分かりやすくて次の授業が楽しみです。」
「動画がすごく分かりやすかったです。レジュメを読んだだけでは不安な点が多かったのですが、動画で先生の顔が見られて少し安心しました。」

 「わかりやすい」というのは、ただ授業の進め方を説明しているだけなので当然と言えば当然なのですが、おそらくそれすらもレジュメだけでは、なかなか理解しきれないということなのだろうと思います。このことは、上記の高評価が、現状、資料配布型というあまり授業感を得られにくいオンライン授業を行っている教員が多く、それらの授業と比較すれば、授業感を得られやすいことによってもたらされたということができそうです。

 実施にあたりトラブルもございました。
 最初のほうの授業だったこともあり、「動画が見つからない」「サイトにログインできない」という相談が多く寄せられました。ただ、週が明けた授業や二回目からは、検索の仕方などの説明を付け加えるなど、こちらの説明をより詳細にしたことや、おそらく学生も様々な授業に対応することで慣れてきたことで、そのような相談はほとんどなくなりました。
 また、課題提出場所として指定していたWebClassにアクセスが集中したために、サーバーダウンとなるというトラブルもございました。現在WebClassのバージョンアップがなされるということですので、それに期待したいと思います。
 また、PowerPointを動画に変換する際に、吹き込んだはずの音声がなくなるというトラブルも生じました。これに関しては、よく原因がわからないのですが、以後動画化されたファイルをアップロードする前に、チェックする必要があることがわかりました。
 また、PowerPointのファイルを動画化するときや、その動画をアップロードするときに、当初想定していた以上の時間がかかり、これは正直面倒だなと思いました。一日にいくつも授業がある日の前日などは、授業の撮影・録画よりも、動画にアップロードにするほうに時間を取られそうですので、できればパソコンのスペックを上げることなどで改善できるならばそうしたいです。
 さらに、二回目の授業では、アップロードの場所として考えていたMediaDEPOで再生不良のトラブルが生じたため、以降はYouTubeの「限定公開」機能(リンクを知っている人だけが見ることができる)を使い、一週間ほど公開することにしました。


 今後の課題
 オンライン授業を対面授業に近づけようとすること、対面授業で得られる学習成果をオンライン授業でも得られるようにすることが、当初の目的でしたが、次第にオンライン授業特有の可能性があるのではないかと考えるようになりました。つまり、オンライン授業には対面授業の代替物にはとどまらない別種の良さがあり、仕方のない代替物ではなく、選択肢のひとつとして考えることはできないか、ということです。
 対面授業では身体性が現前し、時間と空間が共有されることによって、また学習者どうしの協働学習が可能であることによって、学修効率を高めることができるため、それらが失われることがオンライン授業のデメリットといえますが、それは同時に、オンライン授業特有のメリットもあるといえるでしょう。すなわち、これまでは、対面授業を当然としていたことは、空間と時間を共有することを当然とすることであり、それを強制していたといえます。オンライン授業という可能性が示されたことは、その自明の前提を疑い得るものとするのであり、学生の資質にとっては、対面授業よりもより良い授業の可能性を提示するものでしょう。

①移動の時間的/経費的負担が軽減されること
②学生によっては、一人暮らしをすることよる家賃/光熱費を含む生活費の負担が軽減されること
③対面での協働学習が苦手な学生にとって、オンライン授業のほうが快適な環境であること
④オンデマンド型、資料配布型の授業では、時間の空間の共有が強制されないために、自分のペースで理解、思考することができるようになる。

 特に、④が重要であるように思われます。強い言葉を使えば、従来の対面授業でかつ一方向授業は、特定の空間と時間を共有することを強制したうえで、それぞれの学生の資質に合わせることのない暴力的な機構をもっていたといえます。大学の講義は、学生が選択可能であるという点で、その暴力性は緩和されているといえますが、それでも自分に合わない授業を取らざるを得ないことは多かったでしょう。この問題については、オンライン授業のポジティブな可能性として、別稿で論じたいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?