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【小説】クお白チ 104【第一期】

クッキーと白とチビは俺が怪我をした時に泣いた。ラブは泣かなかった気がする。好きとか恋とか愛とかがあってもそういう事ってあるんだろうか…
「ラブは俺が怪我をした時に心配してた?」
「してましたよーあたりまえじゃないですかー」
「一回も泣いた事ないよね?」
「さっき言ったじゃないですか。死ななければいいんですよ」
「あぁ、そうなのね」
「天井が落ちそうになった時は部室でたくさん泣きましたよ」
「戻ってきて泣きそうだったしね」
「私達がいない時に天井が落ちたら、救急車を呼ぶ人がいないのに、先輩もみんなもどうして分らないんだろうと思ってましたよ」
「あぁ、じゃおまえは気がついてたんだ」
「気がつきますよー」
「なんでみんなに言わなかったんだよ」
「言いたい事が言えない性格だから…」
「そうだったね…」
「ごめんなさい…」
「生きてるんだからいいだろ」
「裏庭に行っておにいさんがいなかったらどうしようかと思って心臓が飛び出しそうでしたよ」
「じゃ裏庭に来た時に笑えばよかったじゃないか」
「いてくれたのが嬉しくて泣きそうになったんじゃないですか!」
「いなかったらどうしてたの?」
「みんなを押しのけてでも、3階までダッシュするつもりでしたよ」
「あはははははっ」
「笑い事じゃないですよ!死なれたらこまるんですよ!」
「死にやすい仕事してるよ?」
「でも、心配する事がお仕事の邪魔になる事も知ったから…」
「そっか」
「ずっと心配しててもダメじゃないですか。安心して待ってた方が相手も嬉しいんじゃないかなって…」
クッキーとか白とかチビとは全然方向性の違う考え方をしてる。一番になりたがってるチビ。一番じゃなくてもいいと言い張るラブ。正反対の方向にいるのが分かる
「おまえって成績いいの?」
「そんな事ないですよ。中の上位ですよ」
「おまえの考え方って変わってるよね」
「えーそうですかね…」
「やっぱりもっとラブと話しが出来てたら、チビにはならないで最初からおまえだったよ」
「でも、今だけでも一番ならそれでいいんですよ。嬉しいんです」
「おまえのいろいろな考え方を知ってもっと好きになったよ」
「たくさんたくさん褒めてもらえて嬉しいですよ。今日でお別れじゃないし、また会えるし、またキスしてもらえるし、幸せですよ」
「俺もラブに好かれて幸せだよ」
「今度いつ会えるのかなぁ…」
「あぁ、つぎの現場が分からないから今はなにも言えないんだよ。だから月曜日に電話がほしいの」
「分かってます。かならず電話しますよ」
「俺が9時までに帰ってなかったら、11時位までは電話しても平気だから、なん回でも電話して」
「電話するとなにか分かるんですか?」
「一番近い休日」
「あぁー」
「最短で会いたいのよ」
「嬉しいですよ♪」
「そか」
「はい♪」
「ちょっと付合ってくれないかな」
「どこへ行くんですか?」
「学校の中をもう一度見ておきたいんだよ」
「はい♪」
校舎に入って、鍵をかけた。最初に俺が怪我をした教室に入った。クッキーと白が泣いて立ってた…ブレーカー室に入るとチビと小鳥が立ってた、えへへっ♪って笑いと綺麗な声が聞こえた…渡り廊下下に行くと、ムックが髪を下ろして、手伝いに来たと声をかけた…階段を上がって灯具を見上げると、おしゃべりとラブが俺を見上げてた…2階の廊下を歩くと香の笑い声が聞こえた…3階に上がり、一番北側の天井を見上げた…全ての物、事柄が想い出となって俺に襲いかかる…無理に胸の中にしまいこんだ…もう十分だろう…天井を見上げながらあの事を思い出してしまった
「ここのトラブルが一番大きかったんだよ」
「天井が落ちたら大変でしたよね」
「違うんだよ…」
「なにが違うんですか?」
「みんなが帰ってこないんじゃないかと思って…俺にとっては最大のトラブルだったんだよ……寂しくて…」
天井を見つめていたら、また天井が歪んだ。目の両側に冷たいものが流れた…そのまま天井を見続けた
「………ここへ戻ってきたいな…」
「私も戻ってきてほしいですよ…」
「みんなと会えるかな…」
「………………」
ゆっくり振り向いたらラブも涙を流していた。手を取り、キスしてから抱きしめた。我慢が出来なくなり、膝を付いて声を出して泣いた。穴が大きく広がった…ラブも膝を付き、俺の頭を抱きしめて頭をなでた…首筋にポタポタとラブの涙が落ちた…しばらく二人で泣いていた…
「我慢してたんですね…」
「毎日会えなくなって寂しいのはみんなだけじゃないよ…」
「気持ちは分かりますよ」
「分かってないよ!!!」
「おにいさんどうしたんですか…」
「九人いて、俺一人だけいなくなるんだよ…」
「ごめんなさい…」

「ここからいなくなって、独りぼっちになるのは俺だけなんだよ…」

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