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【小説】クお白チ 092【第一期】

「さっきなんであきらめようとしたの?」
「おにいさんが迷ってるから苦しいんじゃないかと思って…」
「ラブも苦しいの?」
「昨日も寝てません…」
「俺と同じだね」
「眠れなかったんですか?」
「みんなと別れるのが辛くてね」
「最後まで笑ってたじゃないですか」
「あの時が一番苦しんでたよ」
「我慢してたんだ…」
「泣いたらカッコ悪いだろ」
「そんな事ないですよ」
「今日もラブが来てくれたから大丈夫だよ」
「私でよかったんですか?」
「ラブがよかったの」
「なんで私なんですか?」
「ラブの予想してる三本指を言ってごらん」
「チビ先輩と白先輩と…私…」
「俺は誰といちばん話してない?」
「あっ、私ですね」
「だからラブがよかったの」
「嬉しいですよ♪」
「もうちょっと早くラブが話し始めればよかったなって思ってる」
「いじめられてから話せるようになったんですよ」
「知ってるよ。もうちょっと早くいじめてればよかったね。あははっ」
「話せなかった事でなにか問題があったんですか?」
「ラブを知る事が難しくなってたんだよ。今は分かるけどね」
「なんで分かるようになったんですか?」
全部のスイッチが切れたので、ブレーカー室に入る。ラブを抱きしめたら涙が出てくる。ラブの肩にあごを乗せて、見られないようにして話しを続ける
「ラブのぬけがけが始まったから」
「あぁ、二人でいる時間ですね」
「まったくぬけがけしなかった、おしゃべりと香と小鳥は正直よく分からないよ」
「そうなんだ…」
涙が止まったので離れてブレーカーを全部上げて
「俺の一番最後の仕事もおまえと一緒だね」
「嬉しいです♪」
「裏庭に行こう」
「はい」
いつもの席の真ん中に座って、タバコに火を点けて吸い込む
「二人でいるとあんまりいじめないですよね」
「ラブだとね」
「他の人だといじめるんですか?」
「チビだけね」
「…チビ先輩は特別なんですね…」
「違うね」
「なにが違うんですか?」
「白と二人で話してていじめた事はない。チビだとかなりいじめる。ラブだと中間なんだよ」
「どういう事ですか?」
「ラブが一番バランスが取れてるって事さ」
「私が一番好きなんですか?」
「それを言えないから困ってるんだよ…」
「私、二番でも三番でもいいですよ」
「それが決められないから困ってるの!」
「……………」
「立って」
「はい」
抱き寄せてキスをする。また迷いだしてる自分を呪う。ラブと話す機会がもう少し早かったら、チビとの彼女の答えは約束しなかっただろう。みんなとの別れで頭が混乱してるのは分かっているんだけど、二人のせいでよけいに混乱して、頭の中は爆発しそうだ。こんなに辛いと思ってなかった…ラブと離れて席に座る
「三人に共通するところ分かる?」
「分かりません」
「歯だよ」
「歯が共通してるんですか?」
「ラブは前歯が二本出てる。二人は八重歯だろ?」
「それがどうしたんですか?」
「歯並びが悪いの好きなんだよね」
「変な趣味ですね。あははっ」
「じゃ、ラブは対象外にする!帰っていい!夕方も来るな!」
「え゛ーーー!それはやです。ごめんなさいごめんなさい」
「冗談だよ。あははっ」
「やっぱりドキドキさせられる…」
「絶対条件があってさ」
「なんですか」
「ショートカット」
「私ダメじゃないですか…悲しいですよ…」
「髪は切れるだろ。誰だってショートカットには出来るよ」
「私も切りますよ♪」
「最初、ショートカットで八重歯の白が好きだったんだよね」
「なんとなく分かります」
「チビの八重歯に気がついたのがずいぶん遅くてさ。あいつ彼氏がいるって言ってたんだよ」
「彼氏いたんですか?」
「あっ!ヤバイ!これないしょね」
「はい」
「彼氏がいるって分かってたから対象外だったのね?」
「はい」
「ラブはショートカットじゃないから対象外でしょ?」
「悲しいけどそうですね…」
「チビが彼氏と別れたのを知ったのが25日なのね」
「はい」
「ラブのマツゲが長いのが分かったのが27日」
「言われて嬉しかったから覚えてますよ♪」
「ラブのぬけがけが始ったのが28日でしょ?」
「そうですよ」
「一緒に歩いてて、微妙な内股に気がついたのがその日なの。X脚に気がついたのが昨日」
「X脚も好きなんですか?」
「あんまり酷くなければね」
「私のX脚に気がつくのなんておにいさんくらいですよ」
「そうかもね」
「それでどうしたんですか?」
「前歯、マツゲ、内股、X脚。あとはショートカット、ミニスカで完璧なんだよねぇ…俺の好み」
「え゛ーーー!すっごい嬉しいですよ♪」
「俺より背が高くて、重いのが玉に瑕なんだよねぇ…」
「重いのは自分のせいだけど、背が高いのはしょうがないじゃないですか…」
「それをカバーする俺の好みと性格だからいいじゃん」
「私を一番にしてくれるんですか?」
「うーん…困ってる…」
「そうなんですね…」
「そろそろ業者が来るから帰りな」
「またドキドキした1日になりますよ…」
「ちょっと考えさせてくれないかな。夕方続きを話すよ」
「ドキドキしてますけど、分かりましたよ」
「正門まで送るね」
「おにいさん足が痛そうだから平気ですよ」
「そっか。気を付けて帰ってね」
「はい♪」

足の痛みより心の痛みの方が何倍も何十倍も何百倍も辛かった…

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