<連載小説>昨日のような、明日を生きよう<3>
子供のいる生活
それからニヶ月ほどが経ち、僕らの生活はてんやわんやだった。
まず、子供は長く寝てくれないのだと知った。
ニ時間ごとに起こされる。
まだ宮子のお乳が充分に出ておらず、ミルクを作る間は僕があやしたり、逆だったり。
何となく僕にもオムツかミルクかは分かるようになってきたので、オムツのときは僕が取り替えて少しでも宮子を寝かせる。
日中、僕は仕事に(悪い言い方だけど)逃げられるが宮子は二十四時間。正直こんなに大変だとは思ってなかった。
あと、子供は泣く。ひたすら泣く。泣くのが仕事だ、とか言うけれど、そんなブラックな仕事の仕方をしなくても、と思う。
そういう僕も日中の仕事が結構きつくなってきた。宮子は寝てていいよ、と言ってくれるけどそんなにグッスリと眠れるもんじゃない。それなら手伝って早く安眠が訪れた方が効率的だというものだ。
ちょっと愚痴っちゃったけど、綾は本当に可愛い。語彙力が無くなるくらいには可愛い。
手は小さいし、足も小さいし、顔も小さい。全身のシワはすぐに無くなった。グングン大きくなるものだから、肌もピッチピチだ。
目は眠ってばかりだからほとんど開かずあまり見れてないけど、瞳がとても大きくてクリックリしてる。
これが親バカというものか、と冷静な脳みそでは思うのだけど、残りの本能は「可愛い」という言葉しか考えていない。
昼間にじっと見てると、パタパタと手足が動く。何を掴もうとしているのか。それともどこかに行こうとしているのか。
まだ早いよー、とか声をかけながら、目が開くとスッと目が合う。
「お、僕を見た。チチって分かってるのかな?」
「そうかもね、今からしっかり媚び売っておけば?」
宮子が昼食をテーブルに置きながらそう言った。
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