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「情報整理大全」シリーズvol.1 創刊に際して〈前〉-デジタルノートは本当に使いづらいのか? -

「情報整理大全」とは?(第0回より

「情報整理大全」は、情報整理環境の大きな変動の中で、いま改めて「自分の情報整理体制」を検討する人たちの「再構築のプロセス」を現在進行系でまとめた電子書籍シリーズです。2021年10月より月1回、2022年4月まで7回にわたって発刊する予定 です。

このnoteは、本シリーズの監修及び執筆をご担当いただく、佐々木正悟氏による寄稿記事です。

〇佐々木正悟
ビジネス書作家、心理学ジャーナリスト。
1973年北海道旭川市生まれ。97年獨協大学卒業後、ドコモサービスで働く。
2001年アヴィラ大学心理学科に留学。2005年に帰国。
著書に『スピードハックス』(日本実業出版)、『先送りせず「すぐやる人」になる100の方法』(KADOKAWA)、『グッドバイブス 安心力で生きる』(KDP)他多数。
セミナーを毎月定期開催し、タスク管理トレーニングセンター、グッドバイブスファクトリーなど、オンラインサロンも運営中。

公式サイト
タスク管理トレーニングセンター
グッドバイブスファクトリー


「情報整理大全」はデジタルとクラウドの機能をフルに活用した、情報整理の可能性を自分のものにしたい方へのガイドラインとなるシリーズ。オムニバス形態にて展開します。

いまや、ネット環境に常時接続できるスマートホン(以下スマホ)を小学生でも持っている時代にもかかわらず、社会人のスケジュール管理や、情報整理のための手帳やアナログノートが大盛況です。

日本人は昔から「手帳」が大好きで、「ノート術」が流行する傾向はありました。

しかしどれほど工夫しても紙は紙です。一瞬で書籍一冊分の情報をコピペでき、パソコンでもタブレットでもスマホでも同じスケジュールを更新でき、インターネットの情報をどこにいてもダウンロード出来る、クラウド時代のデジタルノートとは雲泥の差があります。

そんなことは、すこしでもデジタルツールにふれたことのある人なら誰もが知っていることです。

情報をまとめておき、適切なタイミングでそれを取り出したい。そのためにデジタルツールはうってつけのように思えます。


デジタルノートというアプリは流行らない

それにもかかわらず実際にコンピュータもスマホも、なかなか「個人のための情報整理ツール」として使われるようになりませんでした。今もってそうなっていないかもしれません。

その理由は非常にシンプル。適当なアプリが存在しなかったからなのです。

パソコンを購入した人の大半は、もしかするとはじめのうちこそ「手帳の代わり」を求めたかもしれません。しかしデスクトップパソコンは持ち歩けないし、薄型軽量のノートPCであっても、手帳のように手軽に電車の中で開けるようなものではありません。

けっきょくコンピュータもスマホも仕事の専用機か、さもなければ「連絡用の機器」として使われることが多いといえます。

「デジタルノート」を使う気でいた人も、自然とメールで連絡を取り、ウェブブラウザでインターネットから情報を漁る、にとどまってしまいがちなのです。

それがやがて「スマホをつかってSNS」という流れに移行します。SNSにいたってようやく「スマホがなければできないこと」が誰にでも可能になりました。しかしやはりSNSも広い意味のコミュニケーション手段です。

ライター業やイラストレイターといった人たちは別として、一般的にスマホやPCは、メール、SNS、そしてニュースなどの情報を仕入れるために使われます。 

つまりIT機器とは、個人間コミュニケーションか、マス・コミュニケーションの出入り口なのです。

Evernote一強時代

日本でこれほどまでに「手帳」と「ノート術」が流行し、しかもほとんどの人がスマホを手にしているところを見れば、日本人はスマホと手帳の両方を必要としているのは明らかです。手帳ユーザーはスマホユーザーほどは多くないでしょう。それでも一定数は存在するはずです。

手帳+スマホというスタイルを、できればスマホに一本化したいというニーズはもっとありそうなものです。

そのニーズを一時、ことごとく手中に収めつつあったのがEvernoteでした。

Evernoteはアメリカのベンチャー企業で開発されたサービスでありながら、日本人の熱心なユーザーが多数いたことで知られています。

間違いなく手帳やノート術をクラウド時代のデジタル形式で実現したかった日本人は多くいたのです。


ネットに接続できるところならどこでも内容を閲覧でき、編集もでき、PCでもMacでもスマホでもiPhoneでも、タブレットでもiPadでも情報活用できるサービスが、「当たり前のもの」となるように渇望しているユーザーは多くいたのです。

ノート術ユーザーの「夢」を完全に満たしてくれるのは、Evernote以外には有り得ない、と思わせてくれる本格的な初めてのサービスでした。

多くのユーザーがEvernoteに飛びつきました。関連書籍も驚くほど刊行されました。

こうなると「他の似たようなサービス」が乱発されますが、この種のサービスは多数のユーザーがいてはじめてビジネスになります。ほとんどのユーザーがEvernoteに「囲い込まれて」しまうと、むしろ「デジタルノート」は旨味のない商売になっていきます。

事実、しばらくの間「デジタルノート」はEvernote一強に近い状態が続きました。しかしふり返ってみると、それはあまり長くなかったと言わざるを得ません。


Evernoteが、デジタルノートの覇権を握るに至らなかったいきさつは、次回に見てまいりましょう。

***

次回👉「情報整理大全」シリーズvol.2 創刊に際して〈後〉-手帳は紙に限るのか? -

は、11月5日(金)に公開予定です。お楽しみに!


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