"バズを気にしない" Salesforce 定着インタビュー記事10本を作るとき考えたこと(企画書サンプルつき)
皆さんは、B to B でのインタビュー記事をどう企画し、活用していますか?
この半年、私が事業責任者を務める Teachme Biz for Salesforce のプロモーションの一環で、 10 社の Salesforce 導入・定着インタビューを行いました(一連の記事はこちら)。
私はインタビューのプロではありませんが、弊社スタディストのアドベントカレンダーのネタに困ったので、今回はインタビューを作る時に私なりに工夫したことを書いてみます。
このながーい記事をまとめると、「バズらなくても、自社なりの目的を設定して"関わる全員に喜んでもらう”記事を作れば、結構いいことあったよ」ということです。
ここからは段階ごとに意識したことをつらつらと書きました。興味があればご覧ください。
企画段階:バズるのは目的なのか?
◆インタビューのきっかけ
B2Bビジネスのプロモーションで事例コンテンツは重宝されます。
Waculさんが実施した事例に関する調査では、「事例コンテンツは最低12件が必達で30件を目指し、資料請求導線を設置すべき。」と書かれています。
Teachme Biz for Salesforce でも早く事例を作りたかったのですが、2019年4月にリリースしたばかり。事例も実績もない状態からのスタートする新サービスです。
「事例が作れると実績が伸びる」とは言いますが、「実績がないと事例が作れない」。そんな鶏卵問題への対処をどうすべきかでたどり着いたのが「Salesforce 管理者インタビュー」でした。
◆目的を明確にする
インタビューに限らない話ではありますが、施策をする前に目的を定めました。「インタビュー」の目的と、「インタビュー記事」の目的も異なります。
本企画での「インタビュー」の目的は調査です。Salesforce 定着の実情を深く聞くことで、サービス・営業メッセージの開発に活かすことを目指しました。
一方、「インタビュー記事」の目的は、読者の考え方の変化を起こすことです。広くバズらせることは目的にしておらず(そもそもバズらせる力もないですが)、普段の営業やナーチャリングプロセスでの活用を主眼においていました。
普段自分が目にするインタビュー記事はバズっているものばかりというのもあり、自分が記事を作るとなるとPVやシェア数が気にはなります。
しかし、そもそも自社はメディア企業でもプロモーション支援事業者でもないですし、バズのレッドオーシャンに足を踏み入れてもむなしくなるのは目に見えているので、あくまで自社ビジネス目線で目的を設定しました。バズらなくても、記事を作るメリットはたくさん見つかります。
私がインタビュー記事を作るときは、"長期的なコンテンツ資産を作ること"を重視しています。公開した 10 個の記事でも、"少なくとも2年間ぐらいは Salesforce 定着に取り組む人の役に立つ内容にすること"を目指しました。
◆外部の力を頼る
今回は、前職のときにもお世話になった編集・ライター、カメラマンにお願いしました。
編集・ライターの方にお願いするのは、専門性を発揮してもらえるだけでなく、第三者としての意見をもらえることにも価値があります。毎回、独自の提案をくれるので非常に助かっています。
予算の都合もあると思いますが、カメラマンもプロにお願いすることをおすすめします。写真は読むときにも拡散するときにも重要になりますし、プロの写真はインタビュイーの方が喜んでくれることが多いです。また、インタビュアーが写真撮影も兼任すると、インタビューに集中するのが難しくなるため、それを避ける意味でもカメラはアウトソースがおすすめです。
私も子供や料理の写真を取るのは好きなのですが、過去のインタビューでカメラマンをアサインせずに失敗した経験があり、それ以降はできるだけプロのカメラマンにお願いするようになりました。
インタビューの打診:関係者にも目的を共有
◆インタビュイーにも目的を共有する
インタビューをお願いする時には、インタビュイーに企画書をお渡しするようにしています。
企画書サンプル
企画書には、記事のテーマのほか、インタビュイーにお願いしたい理由や記事の狙い、想定読者を記載しています。今回は、リリースしたばかりのサービスで会社自体も知られていない可能性が高いため、インタビュアーである私自身や企業情報を厚めに記載しています。
インタビュー取材をあまり受けたことがない方は受諾のハードルが必要以上に上がってしまうことがあるため、少しでも質問例も入れるようにし、事前に内容をイメージしやすいようにしました。
◆インタビュイーの立場を加味したアレンジを
今回、10社にインタビューを協力いただきましたが、受諾理由はそれぞれでした。
仲が良い(人の紹介だ)からOKというのもありますし、企画書が魅力的だったためにOKをしてくれた方もいらっしゃいます。インタビュイーや所属企業によりますが、たとえば大きい会社では広報の承諾を得るための一定の条件を加味しないと、インタビュー自体が成立しないこともありえます。
弊社のオウンドメディア自体の強みが乏しいため、コンテンツとしてインタビュイーにできるだけ魅力が作れるように各社少しずつアレンジを加えます。共通することとして、インタビュイーあるいは所属企業の魅力をできるだけ汲み取ることを意識しています。
過去に飲食店へのインタビュー記事を作ったときは、裏目標として店舗来店数を上げることを狙っていました。結果、知り合いだけでも5名以上が来店し、全員がメリットのある記事を作れたのは良い思い出です。
インタビュー当日:その場の良い場面を逃さない
◆事前質問にこだわらない(ことも伝えておく)
インタビュー当日は、事前質問に沿いながら進めていきますが、そのとき、その人、その時だからこそ出てくる情報やフレーズを重視するようにしています。
事前質問は全体をカバーしていますが、インタビュイーがどの部分にフォーカスを置いているかを探る探知機のような役割です。事前質問をすべて押さえることよりも、その人がアツく語ってくれる部分を見つけ出し、そこを掘り下げていくようにしています。
「Salesforce 定着」といっても強みやフォーカス部分は本当に様々です。
その違いが際立つようにインタビューを進めておくと、同じテーマでも多彩な記事を作りやすくなります。例えば、アクシスコンサルティングさんなら「初心者からの挑戦」、ブレインパッドさんなら「メンバーの利害にフォーカス」、Sansanさんは「ビジネス-エンジニア間の連携」などが特徴的でした。
こういう背景もあり、インタビュイーの方には、事前質問にこだわらないで良いこと、企画書の構成もあまり気にしなくても大丈夫だということ、の2点をインタビュー時に伝えています。
◆カメラマンには撮りたいポイントを伝えておく
特にB to Bの場合、カメラマンが一番テーマと縁遠いことが多いでしょう。
今回のテーマである Salesforce は、特にカメラマンには馴染みが薄い(むしろ詳しかったらすごい)分野なので、写真に残したいポイントはできるだけ具体的に伝えるようにしていました。
ITサービスのインタビューでは、たくさんの画面が出てきます。撮影しながら、どの画面が重要なのかを、インタビューを聞きながら把握するのは難しいです。カメラマンは、内容よりも、良い表情や動きを撮ることに集中しています。
「あの画面撮ってほしかったのに...!」とならないように、重要なポイントや素材があれば、都度カメラマンさんにちゃんと合図を出して撮ってもらいましょう。
編集・制作:情報開示し、意見を戦わせる
◆編集メンバーには、制作用の意図や目的まで伝える
今回の編集メンバーには、インタビュイーへの企画書に加え、ビジネス上の狙いやサービスの特徴まで資料にまとめて伝えました。
読後に狙いたい変化のほか、読む人と流通させる人が違うことや、その他留意事項を記載したものを配りました。下記のように、ペラ1の概要資料、補足資料として社内資料の抜粋(十数ページ)を共有し、私と編集チーム内で情報の差を減らし、編集メンバーのスキルができるだけ発揮できるように配慮しました。
制作チーム用ガイド(一部ひみつ)
サービス説明用の参考スライド(抜粋)
◆提案や反論を喜びつつ、食い下がることも大事
記事の初稿ができあがり、編集プロセスが進むと、編集・ライターやインタビュイーの方から色々なフィードバックが届きます。
私は、関係者に目的や狙いを共有してから進めるので、それに沿っていたり、理由が明確であれば、基本的にフィードバックは受け入れます。とはいえ、提案を受け入れないことも多いのですが、その際はこちらから理由を添えてお伝えするようにしています。
完成品は初稿からかなり形が変わることが多いです。修正の対応は結構大変ではありますが、広告代理店にいた時に比べれば...(以下略)。
公開後:記事公開からが本番
◆感謝を伝えつつ、写真をプレゼント
無事に記事を公開した後は、記事を是非シェアしてほしいとお願いしつつ、撮影した写真もプレゼントするようにしています。
あとから「お気に入りの写真になった」と言ってくださる方もおられて、やってよかったと思っています。
◆社内外でおすすめポイントを伝える
完成した記事は、社内外でおすすめポイントを添えてシェアしています。
特に、新規事業・新規プロダクトの価値は社内にも届いていないことも多いので、インタビュー記事は、多くの人に理解してもらうための良い素材になります。
実際に、ブレインパッドさんの記事を読んだ弊社CEOが、Slackでこんな反応して広めてくれることもあり、社内理解が進みました。
弊社CEOのSlack投稿(社内用語部分は割愛)
◆本来の記事の目的通り、ちゃんと活用する
記事を公開し、幸いにも拡散されたりすると、そこで満足してしまいがちです。
しかし、当初の目的であるサービス開発や、営業メッセージ、ナーチャリングに組み込まなければ投資効果は薄れます。一過性のものでなければ、しっかり資産として活用していくところがむしろ本番であることを忘れないように注意が必要です。
たとえば、今回のインタビューで、一番多かったサービスへの反応が「プロファイルごとに出し分けとかできるんですか?」でした。このような声はそのままサービス開発に生かしました。
▼インタビューの声から生まれた新機能▼
余談:予想外の嬉しい事も
◆10社のうち7社(名)が一大イベントでセッション登壇
ここからは余談ですが、インタビューした10社のうち7社(!)が、今年の Salesforce の日本最大イベント Salesforce World Tour Tokyo 2019 (通称 SWTT ) で登壇されていました。
▼そのうち6社(+事例1社)の紹介▼
Salesforce社の人に記事を紹介したときにインタビュイーの豪華さに驚かれたり、ある1社の方が実は過去にSalesforce事例大会の準優勝者だったりと、図らずも凄い人たちにインタビューしていたことを後から知ることとなりました。
◆事例の後にTeachme Bizを入れてくれた方も
取材のときには「商品のアピールはしない!」と決めていたのですが、その後にサービス導入を決めてくれた方も複数いらっしゃいました。
最初に紹介した”鶏卵問題”とはぜんぜん違う「(自社利用者ではない)事例が先、実績が後」という新しいルートが誕生したのは想定外でした。
リベロ・コンサルティングさんの書いたAdvent Calender記事でも紹介していただいたり、
ほかにも、サンブリッジさんが製品紹介ページも作っていただき、インタビュー記事がサービス拡大の一つの起点になりました。
◆インタビュイーの方に仲良くしてもらえた
先に紹介したイベント SWTT の当日には、インタビュイーの皆さまが知り合いの方をTeachme Biz for Salesforce のブースにたくさん連れてきてくれました。
新しい記事が出るたびにオンライン・オフライン問わずシェアもしてもらい、結果的に予想より多くの Salesforce 利用者に記事を届けてもらうことができました。あまり大きく広がることは予想していませんでしたが、想定より多くの人にサービスを知ってもらうきっかけにもなりました。
また、記事がきっかけで新しいコミュニティの運営に携わらせてもらったり、予期しなかった様々な嬉しいことが起こっています。
まとめと参考文献
(この文章を見れば分かる通り)プロほどの制作スキルがない私がインタビュー記事の企画を通じて心がけているのは、「関わる全員に喜んでもらう」ことでした。
キレイ事かもしれませんが、インタビューした人も、された人も、広げた人も、読んだ人も、皆が喜んでくれれば、結果的に長期的に使えるコンテンツになるはずです。
そのためには、自分/自社がどうなると喜ぶのか、その他のステークホルダーもどうなると幸せなのか、など各社の利害を考えるところから始めています。
最後に、参考にしたり影響を受けたりした書籍を紹介します。
目的と戦略にフォーカスする考え方は、この書籍の影響が強いです。
Webライティングは、この本が参考になりました。
「読む人と広げる人は別」など、様々な考え方の原点となっている本です。Kindleが安くて私も2冊目を買っちゃいました。
また、今回の記事でとりあげた Salesfroce 定着の記事も是非ご覧ください。freeeさん から Sansan さんまで 10社 の色々な定着ストーリーが読めます。
▼記事はこちら▼
インタビュー記事は、企画も評価も予算の組み方も少し特殊な施策ですが、認知の拡大以外にも事業に役立てられる取り組みになります。
もし、他にも「こんなインタビューの活用方法があるよ」という話があれば、是非教えてください。
それでは、今日はこの辺で。
ちなみに明日のアドベントカレンダーでは、しまだ(だーしま)さんが、軽めのやつを書くそうです。
【追記】
しまださんが書いた12/5の記事が公開されました。面白いですよ。
https://sore8sore104te.com/separate-keyboard/
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