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律する草履

いつかはと憧れていた履き物がありました。

物質としての美しさのみならず、

女性の艶を押し上げるその威力。


まだ私には身分不相応と思っていたけれど、

いやいや、私を高みに引き上げてもらおうと思い立ち、意を決して誂えることに。


憧れを手に入れるその日は、緊張と高揚感で、いつもより体温も高かったはず。

店主の内藤さんには「付下げで着るような草履が欲しいです」と伝えました。

訪問着ほどフォーマルではなく、でも改まった場にも履けるような。

着ていく場所やお会いする方に失礼のないような一足が欲しいと思ったからです。

すると、

「まだまだ前に出るというお立場より、

少し控えるお仕事が多いでしょうから、

白い花緒に天はたまご色で控えめにして、

裏に少し色を効かせたらどうでしょう」と。


トトトトトとテンポよくあっという間に台に花緒、

天の色を見立ててくれました。


占い師ですか!?


私の立場の理解とお見立てのセンスに感服。

心躍るお見立ては、5分ほどで完了です。

もっとこの空間をたっぷりと楽しみたかったのに、

提案してくれた色が美しすぎて、

何もいえません。

生まれて初めて遣いますが、

ぐうの音も出ません。


う、悔しい。

でもこれが完璧。

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玄関で草履を揃えるたびに心躍ります。


履き始めのころ、足を入れた瞬間の履き心地に、

これまで履いていた草履よりも硬さとタイト感を覚え、

(しまった結構歩くんだった)とひるんだことが。


しかし、歩くほどに馴染んでいました。帰宅するまで、朝に感じたその懸念を忘れていたほどに。


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クッション性の高い草履のような甘やかしはなく、そのキリッとした草履に姿勢を正され、

タイトなフィット感によって、前坪には足指の付け根まで入ることなく、美しい様で無理なく履き続けることができました。

草履に教わっているーー。


自律。

この草履には、そんな言葉がよく似合う。


私はもっと成長したい。

この履き物に相応しくなりたい。

強さを。

賢さを持ちたい。

自らを律して学んでいこう。

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そして2足目を買うときは、

もう少し私も店主にリクエストができるように。


いや。きっとまた一瞬で終わるのかしら。

でもそのとき、店主の目に私がどう写っているかを楽しみに出かけよう。


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