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義父と着物からもらった、義母との幸せ時間

今回はInstagramを通して取材のお願いをしました。大人の品格で優雅に着物を着こなすお姿が素敵なマグノリアさんです。

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桜の花が舞い散る季節にお待ち合わせ。すらりと背の高いマグノリアさん。凛とした佇まいに、柔らかな優しいお人柄で魅力あふれる女性でした。

「着物は色や、季節を踏まえてコーディネートできるのが楽しいですよね。他にも魅力はたくさんありますが、お店に行くとつらくなってしまうことも。あれもこれも欲しい、と思ってしまいますから(笑)」(マグノリアさん)

意外にも、自分で着られるようになったのは「数年前なんですよ」と教えてくれました。ご近所の着付け教室で学んだ後はYouTubeや本を参考にして、自身の心地の良い着付けで着ているそうです。

着物や帯は、気に入ったものを少しずつ増やし、おしゃれを楽しんでいるマグノリアさん。ここ1年で、これまで以上に着るようになったそうです。

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この日の着物は20代のころに実のお母さまが用意してくれた泥大島紬。「20歳の娘に泥大島紬だなんて、変わっていますでしょう(笑)。買ってもらった当初はこんなに地味な着物、どうしたらよいかと戸惑いましたが、今はとても気に入っています」(マグノリアさん)

「緊急事態宣言でおうち時間が増えたことは、大きなきっかけだったと思います。また子どもが成長して、自分の時間が作れたタイミングでもありました」(マグノリアさん)

そして、お義母さまとの交流が増えたことも、着物のひとときが豊かになった理由だと教えてくれました。

義母との、きもの蜜月関係

「ちょうど一年前、義父が亡くなりました。義母が着物を着る人だということは知っていましたので、伺ったんです。

『お義母さん、喪服は着物にしますか?』

私がまだ独身時代に実家の母が喪服を作ってくれていました。当時は20代、着物が着られない身でしたから断ったのですが、母は『とりあえず持っていなさい』と」(マグノリアさん)

その後、喪服は一度袖を通したきりだったそうです。

「義母が着るとの返事だったので、私もご一緒してよいかを伺い、着ることにしたんです」(マグノリアさん)

洋服よりも時間をかけて支度をする着付けの時間。そのままお義父様を偲ぶひと時になったのではないでしょうか。

そしてお義母さまはマグノリアさんが自分で着物を着られることに驚いたそうです。着付け教室に通ったことを話すタイミングを逃していたそうです。

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その後、しばらくしてお義母さまから「よかったら、私の持っている着物を譲りたいのだけど、見に来てくれないかしら」と連絡が入ります。

ご実家に訪ねるとお義母さまは、マグノリアさんに似合いそうなものを見繕って、箪笥から出してくれていました。

「義母は私の趣味を把握しているのか、準備してあった着物も帯もとても素敵なものでした」(マグノリアさん)

以来、義母から着物を譲っていただくように。身長が異なるのでサイズ直しもあるため少しずつ譲っていただいているそうです。

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「綺麗なうちに」とお義母さまが箪笥から出してくれていたのは、ヤツデの葉と花が描かれた染め名古屋帯。着物は貝紫で染めた糸で織られた伊那紬。どちらも一度も袖を通さないまま大切に保管されていたそうです。

「途中から気がついたのですが、季節感もきちんと考え、着物と帯をコーディネートして準備してくれているんですよ」(マグノリアさん)


譲り受ける時に必ず聞く、着物に宿る物語

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譲り受けたヤツデの帯をオフホワイトの牛首紬と合わせ、ワントーンコーディネートの装いに。透明感のあるコーディネートには、マグノリアさんのセンスが光ります。

「義母の家は車で30分ほどの場所。義父が亡くなってからは頻繁に、夫と足を運んでいますが、つい義母と二人で着物の話で盛り上がってしまいます。彼女も楽しんでくれているなと感じます」(マグノリアさん)

お義母さまの元には、亡きお祖母さまや叔母さまの着物もあるそうです。

「着物をいただく際には必ずどなたのもので、いつ、どのような場所で着ようとしてどこで買ったのかを聞くようにしています。

着物は高価なものですから、買うときには必ず何かしらの理由があって、その物語はどれも違って聞いていて楽しいんですよ。義母は忘れたわと言うのですが、話しているうちに段々と思い出すんですよね」(マグノリアさん)

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葛飾北斎の世界のような躍動感あふれる波が描かれた黒留袖は、お義母さまが実のお母さまから譲り受け、大切に保管していました。そして次はマグノリアさんが受け継ぐことに。洗い張りをし、着る機会を待っているそうです。


“これはどこで買ったのかしら……

そうだ、あの呉服屋さんだわ。女将さんが親切でね……

それから、この帯は……”


「どの物語も忘れたくなかったので、メモ代わりにとInstagramを始めました。

着るときにその話を思い出すのも楽しいし、次の世代に受け継ぐ時も話してあげられますからね」(マグノリアさん)

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ショールなど、洋服で愛用する小物を取り入れることも。都会的な装いも楽しんでいます。

譲り受ける着物とリサイクル着物との決定的な違い、それは着物に宿る物語を知る機会があること。ジャスミンさんは、その貴重な機会を逃さずにいました。

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いただいた烏畳の右近下駄。鼻緒をすげ替えて日々の着物の装いに取り入れています。落ち着いた色合いの紅型小紋もお義母さまから。

こうして着物が持つ物語によって、マグノリアさんとお義母さまとの親密で楽しい時間が生まれました。

お義母さまが、寂しくないように。

まるでお義父さまが取り持ったかのようにーー

やさしい気持ちに満たされる、着物時間

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実のお母さまからの泥大島紬に、お義母さまからいただいた絣の名古屋帯を合わせて。マグノリアさんによって、出会うべくして出会ったコーディネートです。

「日常ではつい忘れがちなことですが、着物を着ると、自然と振る舞いが違うなと感じることがあります。具体的にとなると、ひと言で表現しにくいのですが、思いやりや優しさ、奥ゆかしさといったことなのかと思います。

洋服の時よりも半拍ゆっくりと動いているせいかもしれません。動作が終わるまでに気持ちがきちんと寄り添えているのでしょうね。

普段と違う自分になれるところも楽しんでいる気がします」(マグノリアさん)

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マグノリアさん
Instagram:@magnolia.jasmin



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