猶予3日で辞めさせられる

僕と同い年の店長が、店を2月に辞めると告げると、「月末に辞めろ」と返された。猶予は3日。

仮にその店長が、独立したり、他店に引き抜かれるならば、お客さんを取られることが最も脅威と考えたのだろうか。

僕がこの業界に母の手伝いに入った最初の頃からのお付き合い。まだ催事場でほぼ何も出来ない僕を知り、そして、現在人気一番になった僕の軌跡を知る同い年の敏腕店長。

全国の呉服屋の店長職に就く半分くらいの人は頭が良い。しかし、そのなかで、

○風彩染を売りたい、つまりブランドを大切にしたいと思ってくれて、(売れたら何でも良いって人が多い。)

○選品のセンスが良い(大抵の店長は選品出来ない。こちら任せ。)、きちんとお客さまの好みを把握している。

人は、全体の一割程度にも満たないかもしれない。

勿論僕の周りの店長陣は、風彩を理解し、多少なりと大切にしてくれる人も多いが、やはり、存在感はピカ一だ。

というのも、全体的にラフなこの呉服屋さんでも、毎朝、きちんと段取りを組む人。彼からのその時間が好きだった。

結果的にも、当然四店舗中常に売上一位。なのに、お客様に嫌われない店長だった。

でも、ものすごく厳しいところもある店長というのも知っていた。

だから、どこか、好きだった。

残り3日で、僕らにも電話くれて、共に泣いた。この業界、辞める人が多い。でも、初めて悲しいと思った。

それぞれの立ち位置の判断。でも、やっぱり腑には落ちなかった。


この呉服屋さんは、絶対に欠かせてはいけない人物を放流したのだ。20年勤めた、ここで育った龍を放ってしまった。

ある側近の人が、奇しくもこの一日前に、この呉服屋さんにはイエスマンしかいない、と言っていた。

その人は、大して内情を知らなかったのだなと思った。
イエスマンじゃなかった人が、翌日辞めることになったではないか。

それとも、こちらに探りを入れたのだろうか。どうでも良いが。

‥‥‥彼が変えたかった会社のこととは、なんなのだろう。

なぜ3日で辞めさせたのだろう。

周りの仲間は、どう思っているのだろう。

会社というところは、こうして続いていくのか。

俺が会社にいたら、直談判をしただろうか。

出来なかっただろうか。

あれほど出来る店長を放逐するくらいなら、何とか引き留めることを考えてほしかったと思ってしまう。

二十年全力で働おた会社を猶予3日で辞めさせられる。

それだけ彼が脅威だったのか。

でも、やはり悲しいと思った。





















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