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若気

あのころは

あのころと言えてしまえるあのころは

心にナイフをもっていた

それを手でそっと包むようにして隠してた

ふっと力を込めると血がこぼれそうな

危うくて、繊細で、鋭く痛い

だれも傷つけたくなくて

でもナイフは消えなくて

それならせめて、と言って握った

どうにもこうにも変えられないものはたしかにあって

縛られているようで本当はあきらめていて

暴れているようで本当はかなしくて

一粒たりともこぼさないように酸素を吸って

震えるほどにギリギリで

もう帰ってはこない

それでも今でも消えない

消したくない

若気の至りとはよく言うが

その若気が今は愛おしい

たいせつに取り出して壊れないように眺めてみよう


#コラム #詩 #ことば  

言葉を綴ることで生きていきたいと思っています。 サポートしていただいた分は、お出かけしたり本を読んで感性を広げるのに使います。 私の言葉が誰かに届きますように。