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着物専門店のこだわり-④「裏地」

「裏地」を大切に!

着物は表地の素材はもちろんのこと、「裏地(うらじ)」というあまり見えないところも大切な部分だ。料理にも、こだわりのかくし味があるのと一緒である。
裏地には、着物の上半身や袖(そで)の裏につける白い光沢のある布「胴裏(どうら)」、着物の袖口や裾(すそ)周りにつける「八掛(はっかけ)」、羽織や道行コートなどにつける「羽裏(はうら)」、帯には「帯芯」などがある。

まず、「胴裏」について話してみることとする。そもそも着物には、紬などの「織(お)りの着物」と、小紋・訪問着などの「染めの着物」がある。着物によって質感は様々なので、胴裏も全て同一のものを使うことはしない。例えば、結城紬(ゆうきつむぎ)のようなふっくらとした表地には、横糸に細い紬糸を織り込んだ着心地の良い高級胴裏を使用している。

「染めの着物」には、同じく国産の日本最高級の羽二重(はぶたえ)「胴裏」を使用する。素材が良く目が詰まった胴裏は、耐久性にも優れているからだ。生地が厚く良さそうに見えるものもあるが、糊を増量して厚くなったものは使用しない。胴裏は着物姿の時には見えず、ある面では仕立屋さんしかその善し悪しが分からない部分だが、表地を支えてくれる大切な女房役。「見えない所こそ大切にすること」をモットーとしている。


「八掛」は表生地に合わせた色目はもちろんのこと、八掛生地の素材は肝心要(かなめ)なので、こちらもしっかり吟味している。未だに八掛や羽裏だけを専門に取り扱いされているこだわりの仕入れ先もあるほどだ。そのような京都の一流の仕入先から、着物生地に合わせて3種類の八掛生地を選んでいる。その中から表生地に合ったベストの八掛生地を選び、その中で色合わせをして選択している。もし理想の色がない場合は、色見本や表生地を送ってオーダーで染めたりしている。表地と裏地が合っていないと、「袋が入る」という着物のたるみの原因になったり、縮んで表地が反ったりする。本当に良い裏地は表地にぴったり寄り添ってくれる。

しかしながら、ベストフィットが一朝一夕に生み出された訳ではない。群馬県の芝崎圭一作の「座繰(ざぐり)糸」、故・菊池洋守(ひろもり)作の「八丈織」などは独特の風合いなので、私たちが納得のいく裏地にたどり着くまでには数年かかった。同じ作り手なのに風合いが違ったりすることもあるので、常に試行錯誤、選択の日々である。

僕たちが普段に着ることを提案しているからだろうか?数年前、都内のお客様から「名古屋帯の品揃えは、銀座にも勝るね」と言われたことがあった。着物同様、帯の素材も絹・麻・綿など様々なので、中に入れる帯芯もそれに添うようしっかり研究している。帯生地とのバランスを考え、「張りがあるのが好き」・「柔らかめがいい」など、お客様の締め心地の要望に合わせて、7種類の帯芯の中からベストのものを選んでいるのだ。

余談だが、一般的に名古屋帯の仕立て上り寸法は、ほぼ決まっている。しかし、和の國では、お召しになる方の体型や帯結びのお好みなどに合わせて、帯巾はもちろん、帯の長さを考慮して、お仕立てをお願いしている。密かに帯を結んだ時に背中にくる「お太鼓柄」が出しやすくなるよう、柄の位置や長さを考えているのである。 

そのお客様が「柄がきれいにあって帯を結んでらっしゃるときは、とても嬉しい!」とゆり女将が言っていることを思い出した。


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