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映画#10『バットマン ビギンズ』

「人はなぜ落ちるのか、それは再び這い上がる為だ」
まさしく「伝説の始まり」。

作品概要

『バットマン ビギンズ』(原題:Batman Begins)
監督:クリストファー・ノーラン
出演:クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、リーアム・ニーソン、ケイティ・ホームズ、ゲイリー・オールドマン、モーガン・フリーマン、キリアン・マーフィー、渡辺謙、他
音楽:ハンズ・ジマー、ジェームズ・ニュートン・ハワード
製作/配給:ワーナーブラザーズ
公開:2005年6月18日(アメリカは15日)


鬼才クリストファー・ノーランによる「新たなバットマン」

『メメント』などで数多くの賞を受賞したクリストファー・ノーランが手がける、新たなるバットマンの実写映画の三部作となる「ダークナイト・トリロジー」(Dark Knight Trilogy)の第一作に当たるのが今作だ。

タイトルに「ビギンズ=始まり」と書いてあるだけあって、今作は「ブルース・ウェインがいかにしてバットマンになっていくのか」、つまり「バットマン誕生譚」をじっくりと描いている。
コウモリへのトラウマから、両親の死、腐敗したゴッサムを救うという決心から「影の同盟」という組織で鍛錬をし、やがてバットマンへとなっていくという過程を、上映時間の約3分の1ほどかけて描いている。
(ちなみに最新作『ザ・バットマン』ではこの過程を大体全部すっ飛ばしている。この映画を観れば『ザ・バットマン』ももっと楽しめる…..かも?)

正直、この映画の冒頭部分のみでは「あれ、これバットマンの映画だよな?」と思うかもしれないが、そうなるのも頷ける。何せブルースがバットマンとして動き出すのは映画が丁度半分に差し掛かるタイミングだ。
自分も初めて鑑賞した時こうなったなんて口が裂けなくても言えない

さて、今作の監督を務めるのは私の大好きなクリストファー・ノーランだ。いつものノーランの作品なら「時系列の変化」などの難解な設定が多く盛り込まれたものとなるが、今作は「バットマン」のリブート作品となる。いつものごとく作風はシリアス寄りの暗めな雰囲気だが、ストーリーは単純明快でわかりやすいと思う。だがノーランの個性が全くもってないというわけではない。ノーラン作品に大体共通して言えるのが「トラウマを抱えた主人公」だが、主人公ブルース・ウェインはまさしくトラウマを抱えた人物そのもの。ましてや今作は全体を通して「過去(トラウマ)に向き合うブルース/バットマン」を描いているので、ミスマッチな組み合わせだと言えるだろう。


ゴッサムに渦巻く「正義」「悪」そして「恐怖」

今作の一連の事件の原因だけど、正直あっけなくやられてしまう()

今作のヴィランは幻覚ガスを扱う「スケアクロウ」。このガスを吹きかけられた者は極度のパニック状態に陥ってしまう。彼はこれを街中に散布し、ゴッサムシティを恐怖に陥れ、街を崩壊させようと目論む。
….が、ガスを使うだけであって中身は普通の人間なのでバットマンにあっさりやられてしまう。

その時バットマンに逆にガスをかけられるが、彼にはバットマンがこう見えていたそう。
怖すぎ。

その裏で手を引いていたのが、かつてブルースが己を鍛え上げるために訪れた「影の同盟」にいたラーズ・アル・グール。腐敗しきったゴッサムシティを、今まで自分らがそうしてきたように街を破壊しようと画作するが、バットマンの手によって計画は阻止される。

スケアクロウ、ラーズ・アル・グールは間違いなくゴッサムを恐怖で陥れようとした「悪」だ。しかし、人々が持つ恐怖の感情を巧みに操った人物はもう一人いる。それはバットマンだ。彼は自身のトラウマの象徴であるコウモリのスーツを着用することで、犯罪者に自身と同じ「恐怖」を植え付けようと企んだ。
当然バットマンは「悪」ではない。しかしそのやり方はゴードン警部のような「正義」とは少しかけ離れている。

この「正義」と「悪」の対比は、次回作である『ダークナイト』でも引き継がれているテーマでもある。


総評

正直『ダークナイト』が完成されすぎていて、今作と最終作『ダークナイト ライジング』の影の薄さは否めない。
だがバットマンの始まりの物語としては非常に完成された作品とも言える。まさにバットマンへの入口とも言えるタイトルだろう。
私も久々に鑑賞したが、観ていてとても夢中になっていた。
特にブルースの父・トーマスの「人はなぜ落ちるのか、それは再び這い上がるためだ」というセリフ。あまりにもカッコ良すぎやしないだろうか。
最初のブルースが洞窟へ「落ちる」シーン、そして満身創痍のブルースとアルフレッドがエレベーターで基地に「落ちる」シーン。前者はトーマスがアルフレッドに、後者はアルフレッドがブルースに言っているのもとても感慨深い。
次は傑作『ダークナイト』の記事にて。

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