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悲しい夜が明けたとき

去年の夏は暑かった。

半袖のTシャツを4枚は新調したし、エアコンも扇風機もフル稼働していたから電気代も結構かかった。

今まで作ったことのないタコライスを作ってみたり、あんまり得意じゃないポテサラも初めて作った。

いろんなお酒も飲んで、ほとんど毎日酔っぱらって。

暑くて、楽しい夏だったと今でも思う。




恋人と別れた。

あの、可愛い年下の恋人と。

もう、3か月も前になる。




悲しい夜をともに明かした恋人は、もう私の隣にはいない。

玄関のドアを全開にしてゴミ出しに行ってくれたり、不器用な手で梨を剝いてくれたり、俺があげたいからと沢山のプレゼントをくれた可愛い可愛い恋人は、もういない。

その手を離したのは私で、別れを決意したのはもう4ヶ月も前の話で。なんとなく彼について触れるのが怖くて。なかなか文字に書き起こせなかった。

彼はこのnoteの存在を知っていたから、もしかしたらこれを読むかもしれないし、別れてからSNSをブロックされてしまっているから、彼はもう私との繋がりなんて全て消してしまったかもしれない。

今さら、彼に伝えたい言葉はないし、何を言っても傷つけるだけで、それならいっそ何も言わない方がいいのかもしれないけれど、それでもこれは私の心の声のもの置き場だから。




彼のことが大好きだった。

多分、今までで一番人のことを好きだと思った。

だからこそ馬鹿な嫉妬もしたし、小さなことにも感動したし、夢中ではしゃいで浮足立って、楽しい楽しいって息が上がって、疲れてしまった。

私は恋愛至上主義でもないし、どちらかというと現実主義者で保守的で、ある程度先の見えるレールの上を歩いていくのが好きで。

本当の私と、彼といるときの私が、バラバラで。

脳みそだけが置いて行かれて、どんどん恋心だけが駆け足で前に進んでしまっていつの間にか真っ二つに引き裂かれてしまったとき、私の脳みそは先を行く恋心をぐっと掴んで引き戻した。

私は結婚がしたい。

子どもも欲しい。

仕事自体は続けていきたいけれど、転職が必要であれば正社員として働きたいし、だとすれば年齢も気になる。

そういう現実が年下の自由な彼との付き合いを冷静にさせた。

大好きだった。

無理してでも一緒にいたかったけれど、息苦しくなってきたときに、無理をしないで一緒に入れる人を選びたかった。

それに、これは私のちっぽけなプライドが邪魔をして友達にも言えなかったけれど、私が彼を好きなくらい彼は私のことを好きでいてくれなかった気がする。そういう安心感を彼といて感じられなかった。

感じられなかったのか、信じられなかったのか。それはもう考えたくない。

そんな必要もなくなってしまったし。




知名度もないただの地方在住限界OLの書いた文章が思いの外、多くの方に共感していただいて、それなのにあっけなく別れてしまったから何だか気恥ずかしくてこの文章も何度も書き直してようやく投稿できた。

共感でも、同情でも、誰かの心を動かせたことは嬉しい。





そして、

私の隣には今、新しい恋人がいる。




嗚呼、言いづらかった。物っ凄く。

切り替えの早さだけは誇れる自慢だと思っているけれど、こればっかりは言いづらい。いるのよ、今。付き合ってる人がいるの。

年下の彼と別れて1か月後くらいに始めたマッチングアプリで出会った同い年の恋人。連絡を取り始めて1か月くらいでお付き合いが始まって、まだ日の浅い恋人。

前の人が全条件をぶち切って好きっていう感情だけで突っ走った恋だとしたら、今の彼は全条件に当てはまっている穏やかな恋だと表現したい。

同い年で、同じ大卒社会人3年目で、一人暮らしで、ある程度の家事がこなせて、連絡もマメで、電話もよくしてくれて、会いにも来てくれて、結婚願望もあって。まだ付き合ってなかったから私はあげてなかったのにホワイトデーのプレゼントをくれる人。話し合いの、出来る人。

茶化さないで、話を聞いて、「大丈夫」って言ってくれる人。

前に、年下の彼のことをお酒に氷がカランと溶けるような恋だと言ったことがあったけど、今回は、ホットミルクみたいな恋かもしれない。

酔ったりしない、ただただ暖かくて落ち着く恋。

私が求めている恋の形。

ちょっとくさいことを言ったかもしれない。

もしかして、今回も酔っている?まあ、恋だしね。






今の恋人には何かをしてあげたいという気持ちよりも、彼のために何が出来るかを考えたいという気持ちが強い。お互いの生活を邪魔しないように。お互いの励みになるように。

私のエゴで私を苦しめないように。

彼を傷つけないように。

年下の彼と別れて悲しくない夜はすぐに来たけれど、悲しい夜が明けたのは今の彼がいるからだから。今度こそ息切れせずに、大切にしていきたい。

それでも、この長い文章の最後は彼に向けて贈るこの言葉で締めくくろうと思う。




どうか。どうか、君の人生が楽しくありますように。




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