招き入れるような言葉
とある四十代の女性がわたしにこう話した。
「ビジネスで成功していてお金も儲かって、仕事も非常に楽しいときに、いつも何かが起きて、すべてがガラガラと崩れてしまう。すべてがなくなってしまうんです」、と。
「今までに何度ぐらいそういう経験があったのですか?」と聞くと、「たぶん六回ぐらい」と答えた。
これらから分かるのは、これは周期的なことであるということ。
つまり、自分の頭の中で起こっていることが原因で、外の現実世界の結果に結びついているのではないか、と想像できる。
「幼かった頃の両親のことを覚えていますか?」と聞くと、彼女が答たた。
「父はビジネスマンとして成功していてかなり裕福でした」「ある夜、母に連れられて家を出ることになりました。そして、あとで家に戻ったら元通りの状態でいられると確信していました」、と。
そこで、私は聞いた。「戻ったとき、何が起きたのですか?」。
彼女は言った。「お金や財産を全部没収されてしまったんです」、と。
そして、わたしは聞いてみた。「その出来事が今あなたのビジネスで起きている出来事とどのように関連性があるのか、教えてもらえませんか?」。
彼女はしばらく考えてから、こう言った。
「親がすべてを失ってしまったわけですから、彼ら以上に裕福になるという権利を私は持っていないのです」。
私は聞いた。「でも、あなたがビジネスで成功されたら、あなたのご両親はとても誇りに思うのではありませんか?私たちの子育ては間違っていなかったとわかれば、それはとても誇らしいことでしょう?」。
彼女は私を見て言いました。「ああ、今までそんなふうに思ったことはありませんでした」、と。
私は、彼女の意味づけを少しずらしたのである。
彼女は親を傷つけたくないと思っていた。
親よりも成功すると、傷つけることになるのではないか。彼女の頭の中では、自分が彼らよりもいい状態になることは許されなかった。
なので、私は彼女を招き入れた。インビテーショナル・ランゲージ(招き入れるような言葉)で、「もし、こういうふうになったとしたら、どんなことが起きるでしょう?」と。
まず最初に、彼女の注意はある方向に向かっていた。つまり、親に対する忠誠心を失いたくない、嫌な気持ちになりたくない、など。
しかし親の立場からすると、自分たちの育て方が間違っていたと考えているかもしれないという可能性を、彼女はまったく認識していなかった。
なので、彼女を、違う視点から物事を見るという可能性へと招待した。少し違う方向から見てみたら、と。
別の視点、別のフレームから物事を見ると、物事がどんなふうに見えるのか。これは枠組みを「リフレーミング」するということである。
彼女は驚きとともに、はっきり見えてきたと感謝してくれた。今まで彼女は、自分でも自覚がないままに、そのような状況を自分で作り上げていた、と気づいたのである。
彼女がいつも、ある程度まで成功すると突然だめになってしまうのは、それによって自分は親に対して、あるコミュニケーション、あるデモンストレーションをしていたのだと彼女は認識したのである。
表現を変えると、彼女の振る舞いの背後には「意図」があったといえます。
しかしながら、彼女が選んだ振る舞いは、彼女の意図を明確に伝えるもので
はなかった。
そこで、彼女の注意を別のところにシフトするように私が提案し、違うものの見方をするように招待した。
それによって彼女は、両親をもっと理解できるようになり、彼女の愛情や感謝の気持ちを表現するという可能性が見えるようになったのである。
◆参考文献:クリスティーナ・ホール博士の言葉を変えると、人生が変わる NLPの言葉の使い方 2009 ~信念/観念と現実 より
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