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【作画速度を上げる!】イラスト上達の道しるべ【その2】


イラストを速く描くには?

皆さまは1枚イラストを仕上げますのにどのくらいかかりますでしょうか?もちろん、描くものによって様々ではございますので一概に言えないかと存じますが、凡そこのくらいかしら?という時間を思い浮かべて下さいませ。

イラストの技術を教えて下さる講座やYouTubeのイラスト上達関連の動画でもよく話題に上がっておりますこちらのお話。

実際、皆さまの求めている情報なのでしょう。大変多くの方法がご紹介されておりました。各云うわたくしも日々悩まされている問題にございます。

さて、わたくしの簡易経歴をご覧下さいますと分かります通り、以前アニメーターをしておりました。この世には絵を描く職業が多くございますが、おそらくアニメーターが一番スピードを求められるお仕事かと思っております。

わたくしが現役でしたのはもう10年以上前になりますので、今と少し業務内容も変わっているかと思われますが、当時の業務内容をさっくりご説明致します。

まず動画と原画で違ってまいりますが、新人の頃の動画マンだった時の方がより速さを求められていた気が致しますのでそちらでご説明致しましょう。

動画は1枚200円~500円程の単金で設定されておりました。200円はリテイク等の簡単な作業のものや会社によってはこちらが基本単金というところもあるようでございました。500円はかなり大判のA2など地面に置いて描かないといけないものや劇場版で線量が多く重要な部分など。通常のTVアニメのものは1枚300円程度でございました。

さて、1ヶ月生活していくのに12万円必要と仮定致します。
そうしますと通常のTVアニメの作業に入った場合、1日に何枚上げないといけないでしょうか?答えは13~14枚(30日フルで休みなく働く場合)でございます。

こちらを1日10時間作業すると考えまして1枚当たりにかけられる時間を割り出しますれば、約45分程度となります。

絵を普段から描かれる方はかなり大変であるというのがお察し頂けますでしょう。

生活がかかっておりますので、皆必死で作業速度を上げようと致します。ですが雑にすれば当然リテイクになりさらに時間がかかってしまう・・・でも雑にする以外に速くする方法はもう自分のデッサンや描画スキルを上げるしかない・・・でもすぐには上がらない・・・と悩むのです。

そこで、今回はそんな中わたくしが先輩などから教わって今でも役に立っているやり方をご紹介致したく思います。少しでもあなた様のお役に立つ情報がございましたら幸いです。

1.計画を立てる

皆さまイラストを描く前に何をなさいますか?
「え?とりあえず構図とか考えるからラフを描いて・・・」とおっしゃる方はすでにイラストを描き始めてしまっております。

”描く前”の準備はイラストの内容ではございません。
時間配分です。

構想、ラフ、下書き、線画(下塗り)、仕上げ、調整、修正・・・と作業を細分化して各工程に時間を割り振ります。

皆さまストップウォッチはお持ちでしょうか?スマホでもOKですしキッチンタイマーでも良いかもしれません。そちらをセットして作業をして下さい。

そして設定した時間内に各行程の作業を終わらせて下さい。1分でも過ぎたらNGでございます。

できなかった場合は、あなた様が思っている以上にその工程に時間がかかってございます。再度作業工程の時間設定を見直して下さいませ。そうしてもう一度やってみて、配分通りに作業が進めばそれが現在あなた様が実践可能な作業時間となります。

あとはその時間を縮めていくためにどうすれば良いか、こちらも工程毎に考えて下さい。例えば、下塗りに時間がかかるのであれば塗りのツールを見直してみる、調整に時間がかかるのなら違うアプリを試してみる、など工程ごとに見直しを図ります。

なぜ工程ごとかと申しますと、一気に考えてしまうと問題点が整理できずに別の無駄が発生してしまう場合があるからでございます。本当は塗りに時間がかかっているのにご自分では線画が遅いと思っていらしたり、塗りの問題は解決したけど今度それでは仕上げが大変になるなど、更に混乱を極めることがございます。

まず工程毎にご自身がどれだけ時間がかかるのか、そしてその時間を短縮するのに必要なことや問題点を洗い出し、できそうな調整をしましたら、最後にまた同じように作業してみて実際に効率化されたかご確認下さい。

イラストはアニメの作画より作業工程が多いですし、漫画になればさらに増えます。ご自身がどういった工程で作業を進められているのか、今一度見直すことをお勧め致します。

2.下書きを減らす

こちらはイラスト上達講座みたいなところであまり紹介されていないようでございましたが、わたくしとしては一番お勧めしたい方法でございます。

ただし、こちらはいわゆるアニメ塗りやブラシ塗りの方向けの方法で、厚塗りの方はあまり役立たないかも知れません。ただ意識付けとしては大切かと存じますのでご覧頂けますと幸いです。

ある程度ご自身にデッサンやパースのスキルがあることが前提となりますが、わたくし程度のスキルでも十分活用可能でございますれば大半の方はご利用頂ける方法と思われます。

皆さまイラストを描くとき下書きは致しますか?
「当然します。前に下書きをしっかりした方がイラストの出来栄えが良くなると教えてもらったのでしっかりと描きます。」という方はかなり時間を無駄にしている可能性がございます。

下書きというのは完成後には必要なくなる線、すなわち無駄な線でございます。ラフもそうなのですが、こちらはまだクライアント様に提示したりしてお仕事をもらう為のパフォーマンスに使用できますが、下書きに関しましては完全に要らないものでございます。

アニメーター時代にかなりスケジュールが押していて急いで描いておりました時、先輩から「下書きしてる場合か!とっととトレスして提出しろ!」という旨のお叱りを受けました。

その時は「うまく描けないから下書きしてるのに・・・そんなこと言われても」と思いましたが、先輩が「変なところはこっちで直してやる(リテイク出す)からとにかく悩んでないで早く出せ!お前の絵にそんな完璧期待してないから!」とのお言葉にハッと致しました。

そうなのです、いくら下書きを頑張ってしたからと言って急に上手に描けるわけもなく、完成形にそこまでの違いが出ないという悲しい事実。

よく講座などでは「下書きをしっかりと描いてデッサンを整えディテールを上げましょう」なんておっしゃっていますが、それは別途練習すれば良い話で下書きでやることではございません。

下書きがなんたるかをお忘れになっております。下書きとは線をなぞるために描くものではなく、絵を描くときのマップでございます。

マップはGoogle様のように素晴らしい細やかなものもあれば、家族が手書きでココです(どこ?)としているような簡易なものまでございますが、要するに目的地に到達できれば良いのです。

下書きも同様でどんなものでも完成形が素晴らしければ良いのです。丁寧に後ははなぞるだけ、のように描く必要はございません。自分さえ分かればOKなのです。

よく見受けられますのが下書きをする際にペンを前後に細かく動かして何度も同じところに線を引くような描き方、こちらは大変無駄の多い描き方ですので今すぐやめましょう。

次に何色も使用して下書きなのにレイヤーが何枚も分かれるような描き方、こちらも無駄な手間が多いのでおやめ下さい。分からなくなるようなら線の引きすぎです。せめて素体と服など2色程度に収めて見やすく致しましょう。

最後はアナログの場合でございますが、線の色が濃い下書き、質圧が高くなっているものは手に負担が余計にかかっております。こちらは将来腱鞘炎などのリスクが高まるのでおやめ下さい。デジタルでも意識的に力は入れずに描いて下さい。

下書きを減らすにはなるべく1本で大きく線を引く、角などのつながりは無視してクロスしても途切れてもよいので流れを大事にする、そして見えない部分も描く(消さなくてOK)です。

見えない部分も描くって減らしてないじゃん、と思われたかと存じます。その通り描くところは増えるのですが、デッサンやパースで悩んで何度も描き直すよりずっと早く済みます。要するに最終的に自分が描く線の本数が少なければ良いのです。描き直しは一番線量が嵩むので最も避けるべき要素でございますれば、プラスアルファが生じても最終的に描く回数が少ないように工夫した方が良いのです。

描いて→消す、というこの行動を如何に減らすかをお考え下さい。また、描いて、の時点でもできるだけ描かなくて良いところは描かないよう意識致しましょう。

こちらを徹底致しますと、もはやラフを描いていれば下書きは不要となって参ります。実際わたくしは下書きの工程は飛ばすことが多いです。手や目など重要な部分のみ形をとって、あとはラフから拾い出して描く感じでございます。

線画にした段階でおかしければそこで直した方が、線も整っていて見やすいので直しやすく効率的でございます。線画はその後も皆さまの目に映る大切な情報ですので、こちらに力を入れて描いた方が圧倒的に見栄えは良くなります。

ご自身でいつもの作業を振り返ってみて頂き、無駄な線を引いてないか?確認してみて下さい。

3.線量の効率化

イラストには個性がございますので、こちらの方法は向かない方もいらっしゃいますが、商業のご依頼の際などは非常に役立つところかと思われます。

将来的にイラストでお仕事をしていきたいと思われている方は必須になってくる要素ですので、今は関係なくとも今後のために是非ご覧下さいませ。

キャラクターのデザインには色々な要素がございますが、アニメの場合は原作があることが多く、そのデザインを周到しつつもできるだけシンプルに尚且つ誰にも描きやすいよう形成しなければなりません。

その際に重要になるのが線量をコントロールして少しでも作業量が減るようにすることでございます。原作が劇画調の濃いデザインだからと言って、それを週間で放映するアニメにそのまま使えるかと言えば到底無理でございます。

ですのでデザインの方は頭を悩ませつつ、ある程度線量を減らしても元のイメージから離れないよう上手にリデザインするのです。

こちらはゲームイラストでも同じことが言えます。例えばスチルですが、多くの場合一人のデザイナーさんが全てのレアリティのスチルを全部描くのは不可能でございます。

ですのでわたくしもよくご依頼頂きますが、絵寄せができるイラストレーターに依頼してそのデザイナーさんそっくりのイラストを描いてもらうのです。デザインさえ決定していれば後は何人も描き手がいる状態にしておけばイベントを多く打ち出してもイラストが足りなくなることがございません。

2Dのイラストが必要なゲームの場合、ある程度線の密度を考えてデザインする必要性がございます。ゲームはアニメや漫画より密度が高く見栄えがするデザインを求められますが、3Dゲームのように一度作成した素材を使用するということができませんので、丁度良い塩梅を模索する必要がございます。

週刊漫画と月刊漫画でも絵の密度が違うと思います。こちらも考えれば分かりますが作画に充てられる時間が違うのでその範囲で線量の調整をしているのです。少年漫画より少女漫画の方が描き込みが多いのも、少女漫画は月刊誌のことが多いためでございますね。

このように、ご自身が描かれる際にもデザインや描画の密度を調整されると時短することが可能と思われます。例えばSDキャラは線が少ないので早く描くことができますね?逆に等身でリアルなテイストは線も多くなり描くのに時間がかかります。

自分のテイストもあるかと存じますが、お仕事でお話を頂戴した場合は初手のデザインやラフである程度そういった部分の調整をされて、一番クライアント様のご要望に合っていて尚且つ自身の作画スピードで負担にならないラインをご提案になると宜しいかと存じます。


今回のおまとめ

作画速度を上げてイラストを速く仕上げるには

・計画を立てる(時間配分をする)
・下書きを減らす
・線量の効率化を考える

こちらの3点をご紹介致しました。
この他にももっと多くの方法があるかと思われます。

皆さまが実践して良かった方法などございましたら、お気軽にコメントへお寄せ下さいますと嬉しいです。

イラストは趣味で楽しんで描けているのであれば、時間はいくらかかっていても構わないと思っております。今回のお話はお仕事として絵を描きたい方向けの内容でございました。

こちらの記事が少しでもあなた様のお役に立ちましたならこんなに嬉しいことはございません。

最後までお読み下さりありがとうございました。


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