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たからもの

 綺麗な石や珍しい貝が通貨だった時代があった。
 田んぼが宅地に造成され、今時なマンションや戸建てが増え続けている。小さな子供を育ている家族層が暮らす、清潔で希望を感じさせるニュータウン。その街角に建つ簡素なプレハブで、テイクアウト、イートインが出来るアジア料理店を切り盛りしている。
 水だけを飲みに来る小学生の男の子がいる。両親は共働きてで、二人の帰りが遅くなると、寂しくて家に居られなくなりやって来る。ウォータージャグから慣れた手つきで水を汲み、美味しそうに飲みながら学校での出来事などを話してくれる。そろそろ家に誰か帰ってくる時間になると、公園か何処かで見つけた石をプレゼントしてくれる。その石はテイクアウト窓口の棚に皿に盛って飾ってある。
 お母さんとお弁当を取りに来た小さな子供は、その宝物をしっかりと見つける。それを欲しいと目で訴えてくる。
 「好きなやつ持って行っていいよ。」と言ってあげると、石を汲まなく調べ気に入ったものを大事に握りしめる。小さな顔から嬉しさが溢れこぼれ落ちる。
 まだ子供達の世界では、綺麗な石が通貨として流通するみたいだ。
 
 

#お金について考える

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