kiminori kawatsu

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未来地図の歩き方

 これが最後の旅になるのだろうか。  学校を卒業してブラブラと就職もせず、日当の良い建設のアルバイトで渡航費を稼いだ。30リットルのバックパックを背負い、ガイドブックを片手に世界中を歩き回った。夢や希望を叶えることが出来る、理想の地を探していたのかも知れない。  旅の途中でパートナーにめぐり逢い、嬉しい事に子供まで授かった。出逢う人々、訪れる場所全てがキラキラと輝いていた。それでも、ユートピアなんか何処にも見つけられなかった。  北海道を、走行距離20万キロ越えのボロボロなバ

    • たからもの

       綺麗な石や珍しい貝が通貨だった時代があった。  田んぼが宅地に造成され、今時なマンションや戸建てが増え続けている。小さな子供を育ている家族層が暮らす、清潔で希望を感じさせるニュータウン。その街角に建つ簡素なプレハブで、テイクアウト、イートインが出来るアジア料理店を切り盛りしている。  水だけを飲みに来る小学生の男の子がいる。両親は共働きてで、二人の帰りが遅くなると、寂しくて家に居られなくなりやって来る。ウォータージャグから慣れた手つきで水を汲み、美味しそうに飲みながら学校で

      • 美味しいおもいができますよ

         寝ぼけ眼でとにかく動き始める。ジョウロで風呂の残り湯を汲み、まだ薄暗い家庭菜園の畑へむかう。  秋の畑はやらないといけないことが沢山あるのだ。植え付けた苗、発芽したばかりの若葉に灌水することで健全に育ってくれる。  少し寒い空気の中、せっせと風呂と畑を往復する。途中間引き菜を収穫したり寄り道もする。そんな事をしてる間に、太陽が生きているもの全てを照らし始める。あぁ、なんて気持ちいい朝なんだろう。こんなことを感じ始める頃には、すっかり頭が目覚めている。  他人には野菜に働かさ

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