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366日紡ぐ【夜のうた】

366
366日間夜の詩を書きました。
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2023年6月の記事一覧

366日紡ぐ【夜のうた】119日目 6月1日「空」

366日紡ぐ【夜のうた】119日目 6月1日「空」

小石を蹴っても
夜道じゃわからん
音だけ響いて
闇に消える

何処に行ったか
何処に逃げたか
探すことなど
せぬけれど

己の心の虚しさだけは
探さなくとも
確かにある

366日紡ぐ【夜のうた】120日目 6月2日「性」

366日紡ぐ【夜のうた】120日目 6月2日「性」

青い春を横切って
教室の窓を飛び出して
ノートを破って
あまりにも真っ直ぐな涙で濡らして
帰らなければいけない家の隅に
いつかの夜が
こびりついてる

366日紡ぐ【夜のうた】121日目 6月3日「糸」

366日紡ぐ【夜のうた】121日目 6月3日「糸」

ぷつりぷつりと
糸が切れていく
そうして空のグラデーションは
変化していくんだよ
そうおばあちゃんがいうから
私は今
夜の糸が切れていくのを
ずっと眺めている
朝の糸が
顔を出す

366日紡ぐ【夜のうた】122日目 6月4日「息継ぎ」

366日紡ぐ【夜のうた】122日目 6月4日「息継ぎ」

夜を泳ぐとき
難しいのが息継ぎで
息を吸おうとすると
星々が悪戯に
口に入ろうとしてくる

星は夜の魚なので
息継ぎをするのが不思議らしい

夜を泳ぐことで僕らは
夜を体すべてで感じ
朝に辿り着くその時まで
君と一緒にいたいから
君と 夜と

366日紡ぐ【夜のうた】124日目 6月6日「相対」

366日紡ぐ【夜のうた】124日目 6月6日「相対」

夜と相対して
今と別れて
過去を綺麗に並べて
未来を飾っていく

祈りのような現実を
僕は思考という瞳に映して
今日を越えてゆく

366日紡ぐ【夜のうた】125日目 6月7日「一歩」

366日紡ぐ【夜のうた】125日目 6月7日「一歩」

一歩一歩が
足跡になって
足跡から
夜が広がっていく
そこに星も広がり
月が覗いて
いつか振り返ると
美しい夜が
佇んでいる
そんな日々であってほしい
そんな歩き方であって

366日紡ぐ【夜のうた】126日目 6月8日「未来」

366日紡ぐ【夜のうた】126日目 6月8日「未来」

眠ってしまったら
もうそこは夜ではない
夜は眠った子らを
包むように見ている
朝まで健やかに眠れるように
ただ見守るしかできない
闇と星と月になって
朝を連れてくる
未来を

366日紡ぐ【夜のうた】127日目 6月9日「記憶」

366日紡ぐ【夜のうた】127日目 6月9日「記憶」

光りがあったら闇がないと
世界が成り立たないように
一日には朝と夜があるんだよ
そう微笑む祖父に
差す日差しと影が
あなたを存在させていたんだなと
記憶の中で思う
瞳の中に映す

366日紡ぐ【夜のうた】128日目 6月10日「氷雨」

366日紡ぐ【夜のうた】128日目 6月10日「氷雨」

夜に氷雨を落として
神様が遊んでいる
街灯や車のライトに
照らされて
キラキラ光るから
それが面白くて
神様が落とすんだ

その言葉が子守唄になって
眠っていく子
怖いことなんてないよ
君の世界は幸せであって

366日紡ぐ【夜のうた】130日目 6月12日「走る」

366日紡ぐ【夜のうた】130日目 6月12日「走る」

負けたくない夜に
書く日記の文字は
走るような熱を持ち
いつの日にか読み返したときに
まだその熱が残っているのだろう
そのときのためにも
文字は走り続ける
文字は走り続ける

366日紡ぐ【夜のうた】131日目 6月13日「熱」

366日紡ぐ【夜のうた】131日目 6月13日「熱」

人の涙は熱い感情から生まれる
悲しみが熱せられて
嬉しさが沸騰して
溢れて溢れて
生きた感情が透明になって溢れる
今夜もそんな涙が
誰かから零れている
一日になったと思うと
熱が
胸の奥に

366日紡ぐ【夜のうた】132日目 6月14日「やさしい手」

366日紡ぐ【夜のうた】132日目 6月14日「やさしい手」

やさしい手にさらわれて
歩いてきた
夜の道を一歩一歩
ふらついた足で
でもしっかりと
進んで
あなたの手は
太陽よりも眩しくて
でも痛くない光だった

ありがとう