見出し画像

問題行動ではない。それは子どもからのシグナルだ。グリーンスクール日記4週間目

バリ島のグリーンスクールという学校に子どもを通わせたくて、赤ちゃん連れでバリに移住をした。

グリーンスクールとはどんな学校なのか?
英語の話せない小学1年生の息子にどんな変化が起きるのか?
赤ちゃん連れの母子移住はどんな生活なのか?

この冒険をいつか老後にゆっくり振り返れるよう、日記を綴ることにする。でも、欲を言えば、いつか海外の学校にこどもを、と考えてるママさんパパさんの背中を少しでも押すものになれば、とも思っている。

これは、わたしのサスティナブルな仲間探しの冒険の始まりでもあるのだ。

-----
学校が始まって4週間目。この週はとても早く過ぎていった。

「リオは今日、先生の言うことを聞かず、何度かクラスから逃げました。」こんなメールを小学校の副校長からもらったのがこの4週目の水曜日だ。

え??逃げた??

総じてやんちゃで自由な息子だが、日本の小学校でも授業中に立ち歩いたり、先生から逃げたりすることはなかった。わたしはメールの内容をにわかに信じられなかった。

副校長からのメールには、続きがあった。

「担任の先生たちは、生徒たちの安全を守ることにとても一生懸命努力をしています。リオがグループから逃げてしまうことは、安全の確保を困難にします。

明日、このことについて話す時間を持ちませんか?リオにとって最善の方法を一緒に考えたいと思います。」

つまり、副校長からのお呼び出しだ。息子が問題をおこしてしまったという事実と、明日副校長と英語でやりとりしなきゃいけないという現実に、サーっと血の気が引いた。

息子はこの日の朝、学校でカブトムシを見つけて捕まえ、クラスの皆んなに意気揚々と見せびらかしていた。その様子をみて、わたしはヨシヨシと安心しきっていた。

逃げるとはなにごとか。彼になにがあったのだろうか。

その日の放課後、ゆっくり時間をとって息子と話をしてみた。

「捕まえたカブトムシをみんなで観察したあと、先生がカブトムシを逃しちゃったんだ。でも、僕は本当は逃したくなかった。だから、今日の自由時間は、ずっとそのカブトムシを探していたんだ。」

なるほど、どうやら息子は虫探しに熱中していたらしい。そして、先生やクラスから逃げたという認識はないようだ。

グリーンスクールの小学校以上の学年では、午前中のスナックタイムとランチタイムは自由行動だ。生徒は好きな場所で好きな人と過ごす。学校のとなりのレストランでごはんを食べる高校生もいる。

きっと息子は、その自由時間だけでなく、授業中とかもカブトムシを探して学校の隅っこの方にいたに違いない。教室の移動中とかに、つい草むらの方に行ってしまう息子の姿が思い浮かんだ。

次の日の朝、わたしは息子から聞いたことを書いたメモを片手に、副校長先生との面談に挑んだ。

副校長先生が、最初にわたしに言ったのは、
「まず、最初にわかってほしいのは、僕たちはリオの幸せと安全を一番に考えているということ。このことはまずリオにしっかり伝えてください。」という前置きだった。

自分でも、一瞬で心が開いたのがわかった。副校長は、りおにとって最善の方法を見つけるために、こうやって時間を作ってくれているんだ。わたしは必死で、息子から聞いたことを副校長に話した。

「この学校は、広いし危ない場所が多いから、先生の目の届かないところに行ってしまうと、安全の確保ができなくなる。それは、先生にとって大きな問題。なので、目の届かないところに行かないで欲しい。このことをリオに理解してもらいたい。」

そうか。わたしも息子も、自由時間は好きな場所で好きなことをして過ごして良いと思っていた。でも、それが間違っていたのだ。自分の好きなことだけをするのと自由とは別物なのだ。

壁のない校舎。誰と食べても良いランチタイム。学校中が遊び場になる放課後。自由で開放的で楽しそうだな、と思っていた。

でも、自由とはとても難しいことだった。自分のことだけでなく、友達のこと、先生のこと、学校のことを包括的に理解し、自分で考えて、自分で毎回行動を選ばなくてはいけない。

副校長曰く、日本や韓国の小学校に通っていた子どもがグリーンスクールに来た当初、すごく開放的になってしまったり、集中力が散漫になったりする傾向にあるそうだ。

日本の幼稚園や小学校で、閉じられた空間で、きっちり決まった時間割で、与えられた課題をこなしてきた息子は『周りのことを配慮しつつ、自分で考えて決める自由』に慣れていないのだ。

副校長はさらに続けた。
「リオのことをもっと教えてほしい。推薦書や成績表を読んだけど、彼は好奇心がとても強そうだね。他にどんな性格なの?日本ではどんな様子だった?」

「今回のことは、英語の話せないリオと担任の先生とのミスコミニケーションも大きな原因の1つだ。来週、担任と副担任とリオとあなたで、お互いを理解する時間を持とう。あなたはそのとき、通訳をして。あと、リオがアイデンティティーを感じることができる日本語の本やおもちゃを持ってきて。英語に疲れたとき、リオが安心してそれに集中できるかもしれないから。」

『担任の先生対保護者』でもなく、『親対子ども』でもなく、『チーム』で息子に寄り添えるのがなんとも心強い。親も先生も学校も、息子の幸せと安全のために同じ方向を向いている。特に母子でバリ島に来ているわたしにとって、この安心感は身に沁みるものがある。


さて、このあと、周りに「息子の問題行動で呼び出しくらちゃってー」と言っていたら、ある人に「問題行動なんて言っちゃダメだよ!息子さんからのシグナルだよ!」と言われて、ハッとした。

自分の中の大部分が、息子が悪いことをしてしまった、という表面的なことに囚われている。

言葉には真実が宿る。親が問題行動、問題行動と言っていたら、子どもはどんどん問題児になるだろう。

1ヶ月目にして、担任の先生が見つけてくれた息子とわたしの勘違い。きっと、まだまだ勘違いや知らないことはたくさんある。

学校のこと、先生のこと、息子のこと。それぞれの状態は、毎日変わっていく。

わたしのやるべきことは、まず、毎日息子のシグナルを解読することだ。そして、学校や先生とそのシグナルについて共有して、次のプランを考える。このPDCAの先にこそ、息子の幸せな学校ライフは存在するに違いない。そう自分に言い聞かせて、わたしは今日も息子たちとバタンキューで眠りにつく。