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アメ横の立ち飲み屋で見た火事のニュース 私が考える仕事としての「編集」

「編集!」「編集!」。ハムスターが全速力で走る回し車の回転数くらい頭の中が常にフル回転している。

いわゆる「編集」のキャリアは28歳から。民放テレビ局のニュースサイトに記事をアップする仕事を2006年に始めたのがキッカケとなる。

2006年当時はiPhoneもなく回線も3Gで、YouTubeが生まれてまだ1年余り。今のようにテレビニュースの映像がサクサク見られる環境はどこにもなかった。映像としてみられるのガラケーからカクカクの映像が申し訳程度に見るもので、ネットニュースは文字と写真だけで展開する新聞社のニュースサイトがPVを稼いでいた。

テレビニュースの原稿はアナウンサーが喋りやすくは書いているが、目視したときにはどうしても言葉が柔らかくなってしまうので、それを私たちのチームが見やすく読みやすい言葉遣いや表現に変えてニュースサイトの公開していくのが仕事だった。

例えば下記の原稿は実際の放送された火事のニュース原稿。

中間市で19日未明、木造の住宅とアパートを全焼する火事が相次ぎ、1人の遺体が見つかっています。

警察によりますと、19日午前1時半ごろ、中間市鍋山町の木造2階建てアパートから火が出ました。

アパートは全焼し、火はおよそ4時間後に消し止められました。

1階の1室から、性別が分からない1人の遺体が見つかっています。

この部屋に1人で住む高齢女性と連絡がついていないということで、警察が確認を進めています。

この1時間前には、およそ1キロ離れた中間市中尾でも、木造2階建ての住宅から出火しました。

住宅は全焼しましたが、住人の85歳の女性にけがはありません。

2件の火事について、警察と消防が、出火原因などを調べています。

KBCニュースサイトより

上記の原稿を私が当時の業務を再現して編集すると、下記になる。

福岡県中間市で19日未明、木造2階建て住宅を全焼する火事があった。住人の女性(85)にケガはない。この火災から約1時間後、約1キロ離れた木造2階建てアパートを全焼する火事があり、1階の一室から性別不明の遺体が見つかった。この部屋で一人暮しの高齢女性と連絡が取れていないという。

ニュースサイトの文章を編集

わかりやすさにこだわる原点は「編集」にあり

一回読めば元原稿に書かれた内容がすべて網羅されているのがわかると思う。これを1日50本ほど作業して編集をしていた。この業務が私の「編集」の原点であり、私の最大の強みである「わかりやすさ」「伝わりやすさ」に執着なまでにこだわる理由だ。

どんなに中身の素晴らしかったとしても、読みづらかったらその中身に価値はない。ケータイやスマホ、パソコンからアクセスした読者がきちんと情報を受け取れるかを、業務の上で大切にしてきた。

人が受け取る情報の量は「映像>画像>文字」が一般的である。上記の火事のニュースであれば家屋が燃えている映像が撮れていれば間違いなく放送に使う。燃えた映像がなければ焼け跡の映像を使う。新聞も同様に写真を使うだろう。文字だと上記の文章だけだとどうしても情報量に欠けてしまう。

小説なら情景とか状況を書き込めば良いだろうが、報道原稿は「5W1H(「When=いつ」「Where=どこで」「Who=誰が」「What=何を」「Why=なぜ」「How=どのように」)」が鉄則なので、余計な情報はそぎ落としていく。

職種によって「編集」の考え方は違うが、あらゆる業種に言えるのは「届けたい情報を限りなく100%に近い形で届け、限りなく100%理解をしてもらうこと」だと、私は考える。

ちまたの宣伝広告物を見ていても、「それ、本当に伝わっているか」と考えながら街中を歩いてしまう。受け手がどんな気持ちになって、どんな感情変化が生まれて、などと考えてしまう。発想が刀の森岡さんに近いなと森岡さんの著書を読んで感じたので、仕事を敏腕にこなしていく人は「人の気持ちの想像と想像」が理解できている。

元テレビマンとして言えるが、現役だった頃は放送を1秒でも長く見てもらおうと一生懸命に番組作り励んでいたが、昭和時代みたいにお茶の間で家族団らんで食い入るようにテレビを見る人などテレビ視聴者の1%位しかいないと思う。我々がどんなに頑張って番組=コンテンツを作ってもすべて見てもらえることは不可能に近いと考えなければいけない。

とはいえ、「どうせ視聴者は、ながら見なんだから」と言ってタカをくくると、そもそもコンテンツ自体を見てもらえなくなる。ながら見とはいえ、「おっ」と思うものには目が止まるのだ。

人間は見てないようで見ている、見ているようで見ていない。

報道現場にいた頃、正月三が日の業務が終わって、先輩ディレクターと上野アメ横の立ち飲み屋でプチ新年会をしていたとき、飲み屋のテレビから住宅火災のニュース映像が流れてきた。映像には住宅が火柱を上げて燃えさかっている様子が流れていた。

このとき、飲み屋にいたお客全員が火事のニュースに釘付けになっていた。普段の飲み屋のテレビなど野球中継くらいしか食い入るように見ないよっぱりたちが、この時ばかりはコの字型のカウンターにいた客全員が店内奥にある映像を見入っていた。

人間は見てないようで見ている、見ているようで見ていない。ニュース原稿の編集をしている立場として、このときはシンプルに「映像の力はすごいな」と感じた。

「編集の学校」でゲスト講師やります(ごめんなさい宣伝です)

編集の仕事をしている人は1人でも多くの人に見たり読んだり聞いてもらったりするために日夜研鑽を重ねている、と信じている。

今年1月から4月まで受講していたコルクラボギルド「編集の学校」に入ってから、より編集の精度を高めてきた。手法ももちろんだが、これまでの編集キャリアで培ってきた考えや価値観をさらにグレードアップさせることができた。

一番の収穫は、私の持っている「編集」スキルはどんなビジネスにも活かしていけるし、実際今年の仕事でも成果物として評価を頂いた。コレまで無意識で取り組んでいた編集という作業を、意識的に行う事で抽象論を具体論にまで落とし込んで仕事に反映させることが出来た。

その編集の学校、3期ではゲスト講師として講座を開く運びとなった。

事務局側から「講座のサマリーを考えてください」と伝達を受けたので、とりあえず言語化してみたものの、なんという大風呂敷を広げてしまったんだと、だいぶハードルを上げてしまったなと、でも出来そうだなと思ってワクワクしている自分がいる。

◾️「わかりやすい」は全ビジネスパーソン必須のスキルである
・わかりやすいVSわかりにくいのレフリー・ジャッジ=編集である
・主観的 vs. 客観的な「わかりやすさ」
・ものの例えは多ければ多いほどいい
・人は、そんなに情報を受け取れない
・小学5年生に話してわかってもらえる?
・専門用語=共通言語ではない

広げたぞ大風呂敷!




まだまだ受講生は募集中です!福岡開催ですが、県外からの受講者もいて、とても良き交流の場となると思います。

お問い合わせだけでもいいのでぜひお声がけくださいませ!





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