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28年ぶりの北海道で「1年前の想像」に思いを馳せる

2023年4月、北海道にやってきました。最後に来たのは1995年、高校2年生の時の修学旅行だったので、実に28年ぶりです。北海道に来る2日前は東京に、北海道に3日滞在して再び東京へ。さらに2日滞在して、居住地である福岡に帰る行程でした。

東京→北海道→東京と1週間ほど福岡を離れていたのは、客観的に私の文才を評価してくる人と語り合うためでした。福岡にも尊敬する物書きさんはいます。たくさんのアドバイスをいただき、足を向けて寝られません。ただ今回は、身近じゃない人たちに私の文才を、奇譚のない意見を直接求めにいきました。

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2023年4月21日、札幌市中央区北4条西4丁目のオフィスビルの地下一階にある立ち飲み屋。今宵はサシ飲み。相手はおっさん。道産子ではない。自宅から3時間車を飛ばしてセントレア着、そこから新千歳空港に飛行機で降り立ったおっさんとのサシ飲みだ。

彼は作家だ。金融機関の現役の課長。46歳。自らを変えたいと渇望し、2021年8月からnoteを週2回、平均4000字以上の作品を書き続けている。その活動が評価され、連載も持つようになり、現在は出版に向けて執筆活動を続けている。ペンネームは「猫山課長」。

彼の作品を初めて見たのは2022年夏頃。noteのレコメンドかなにかに彼の作品が流れてきた。

なかなかセンセーショナルな見出しの奥に置かれた文章の一文字一文字に心が躍る。あっと言う間に彼の作品の虜になった私。「どんな人なんだろう」。Twitterやnoteで知った人に強烈な関心を持つようになった。初めての経験。

3ヶ月前の2023年1月に彼とは初対面を果たしている。香川県高松市。彼がnote発信の勉強会で登壇すると聞いたので、福岡から駆け付けた。おっさんがおっさんに会いに行く。なんという気持ち悪さだろう。

ただ、この時は挨拶程度の会話をしたのみ。登壇者なので、勉強会に来ていた他のお客との交流を楽しんでいた。さすがに積極的に話しかけるわけにもいかず、彼との交流はものの5〜10分程度で終わった。うどんも食べたし、高松の旅は腹いっぱい、満足いっぱい。最高だった。

それから3ヶ月、今度は北海道江別市で勉強会を開くというので、このためだけに北海道に来た。高校の修学旅行以来、28年ぶりの北海道だ。

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雪印フルーツパーラーに男子6人で入ったら、他の客が全員女子高生でめちゃくちゃ悪い居心地でフルーツパフェを食べたこと、札幌ラーメン横丁でガイドブックもなくてなんとなく選んだラーメン屋の味噌ラーメンがたいして美味しくなかったこと、函館山の夜景を見に行ったとき、学年のカップル数組が夜景を見ながら手を繋ぎ、肩を寄せ合っていたのを見て「畜生め」と夜景のせいにして悔しがっていたこと、修学旅行の三大エピソードだ。

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「札幌で一杯やりませんか?」

札幌行きのちょうど1ヶ月前、TwitterのDMに彼から連絡が来た。以前、自分のnoteで「彼と15分でいいので、ホッピーセットで語り合いたい!」と書いたのを気にかけてくれて、私を誘ってくれたのだ。もちろん快諾。「一杯やりませんか?」という誘い言葉を使わない私は、誘われ方が新鮮でたまらなかった。

ザンギでも食えればよいかと、めちゃくちゃ軽い気持ちで選んだ立ち飲み屋の店名は「立ち吞みパラダイス」

「すごい店名ですね。ここにしましょう笑」

私がGoogle先生に教えてもらったいくつかの店舗リストの中から選んでもらい、この店をチョイスした。待ち合わせ時間をふわっと決めてしまったため、先に私が30分程度ひとり飲み。一番搾りをグイッと。味付けうずら卵をパクッと。

1杯を飲みきった頃、彼が慌てた様子で来てくれた。「ほんとすみません!」。いえいえ、わたしの段取りが悪かっただけのこと。会うまでにこんなにドキドキワクワクする30分はありませんよ、ええ。

「僕、実は立ち飲み屋で飲むの、人生で初めてなんです」。事前にDMでやり取りして、知っていた事実。改めて聞くと、同じ時代に生まれて生きているのに歩んでいる世界が全く違う。私にとって当たり前の風景も経験も彼にとって未経験なんだと、ややカルチャーショックを受けた。彼の住む地域には居酒屋は充分な広さが取れるので、立ち飲み形態にする必要がないらしい。なるほどそりゃあそうだよね。

彼はずっと生ビールを飲んでいた。一番搾り。サッポロクラシックの生がない店。札幌なのに、なぜ。私は3杯目からハイボールに切り替えた。ブラックニッカ。ウイスキーは北海道なんかい。

彼の物書きのルーツを聞いた。スポーツグラフィック「Number」の記事のスタイルが好きで、読むと心が躍る。これが文章の原点であること、村上春樹の小説は読むが、あまり好みではなく、むしろエッセイが好きということ、自身が連載を持っている日刊SPA!の本誌「週間SPA!」を、猫山課長は創刊時に愛読していたこと。

このほかにも、「都会と地方の格差は経済だけじゃなく、むしろ知能の格差が怖い」「タワマン文学は地方在住者にはフィットしにくい」 「村上春樹のエッセイ・遠い太鼓は読んでみたほうがいいです」などを語り合った。

私の文章の率直な感想は事前にDMでうかがっていた。「クールで切れが良くて、でもどこか切なくて。そして地面みたいな匂いがします。解像度をざくざく掘り下げていく感じで、ゾクゾクします」べた褒めやん。文章を敬愛している人に褒められまくりやん。

でも、彼の言葉でもう一度、話を聞かせてもらった。一番搾りのジョッキ片手の彼に、ハイボールジョッキ片手の私が聞き入る。泣くわ。心動くわ。盛り合わせの焼き鳥バクバク食べたよ。

1軒目で帰すもんか。こんな機会、そうそうない。

「2軒目行きましょう!」

宛ての店はない。とりあえず地上に出て、札幌駅と反対方向に歩きながら、適当な店に入った。90分飲み放題が利用できる店。ビールの彼にハイボールの私。

てか、ずっとビール飲んでる。腹パンパンにならんのかな。あ、バンカーってハイボール飲んじゃいけない不文律があるんだろうなきっと。納得納得。

この日は19時からてっぺん近くまで飲み明かした。結局、彼は最後まで生ビールだった。合計7〜8杯くらい飲んでたはず。話した内容は全部覚えてないけど、幸せな気持ちは残った。おっさんがおっさんと飲んで幸せって気持ち悪いな。いや、でも本当に幸せだったんよ。年1レベルの幸せ。

「ありがとうございましたー」と彼と別れた帰り道。4月後半の札幌は2月の福岡の気温。3月以来に着たダウンジャケットで暖を保ちながらホテルに戻るまでの道のり。

途中にあったススキノ交差点。大好きな俳優というか天才芸人・大泉洋主演の映画「探偵はBARにいる」のワンシーンを思い出した。そこからさらに思い出すのが「水曜どうでしょう」の「腹を割って話そう」のくだり。あれ、何十回も観てるけど、笑わない時はない。

北海道で生まれ、6年間だけ住んだ北海道。25年ぶりに訪れた札幌の地で、自分の文章のカラーと強みを知った。

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「マーケティングさえしっかりやれば勝負できそうだな」

20代の頃はただひたすらいい曲を作れば、誰かが見つけてくれると思っていた。結局、見つかりたい人には見つからないままだった。マーケ戦略とPRの欠如。今なら知見はある。実践も出来る。

東京でも、物書きの後輩たちに意見を聞いた。「木村さんの文章は、今の言葉で言うとエモいっすね。木村文学っすね」とべた褒めしてくれる。

普段、記事を書くときは、媒体の特徴に合わせたり、読者層を想定したりして原稿を書く。だけど、「創作」とは、まずは誰の編集も加えず、アコギでブルースギターをかき鳴らすかのように、自らのアウトプットを「作品」に昇華させていく作業だ。現状は、エッセイに近いショートストーリーとでも言うか、こうした文体を後輩たちは「木村文学ッスね」と言って煽ててくれる。

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北海道滞在2日目・3日目は私も登場している猫山課長の滞在記をぜひご覧ください。

今回の滞在を振り返る中で、印象的な言葉がありました。

猫山課長と私が札幌でサシ飲みした話をnoteにしたためた猫山課長が「木村さんのような人と繋がり、酒を酌み交わすことで賦活させていただいた。こんなこと、1年前には想像もしていなかった」と書いていたんです。

「1年前には想像もしていなかった」

このnoteを読んでくださっているあなも、ちょっと振り返ってみてください。1年前、2022年春。どこでどんな人と仕事をしていましたか、遊んでいましたか、明るく陽気に笑い合っていましたか。

1年経って、2023年春になって、あなたにはどんな出会いがありましたか?どんな人と交流してきましたか?仕事以外の場所で面白い人、変な人に出会いましたか?その人との出会いを面白がっていますか?

僕も1年前に、まさか猫山課長と札幌で飲み明かすなんて想像もつきませんでした。1年前は存在も知らなかった人と「飲みましょう!」と意気投合し、5時間近くも飲み明かしたという事実。

1年前の私がこの未来を知ったら「おっさん?バンカー?note作家?きれいな女子大生と札幌でサシ飲みなら大歓迎だけど、年上のおっさん?意味わからんわ」と悪態をついているはず。やれやれ。

「1年前には想像もしていなかった」

良いことも悪いこともあるでしょう。でも、1年後の未来が想像つく人生って、ちょっと悔しくないですか?

私はテレビ報道の世界を離れて事務所を辞めた2019年も、放送作家を辞めて福岡に移住した2020年も、黒髪から金髪にした2021年も、ツイッターで知った猫山課長とサシ飲みした2023年も、それぞれ1年前には想像すらしていない出来事です。

想像もしない、良い方向に1年後の自分になるためにはどうするべきなのか、もうおわかりですね。

なりたい自分になるためにはどうすればいいのか、考えましょう。猫山課長は渇望するまでになりたい自分を描き、noteを書き続けています。なりたい自分に、確実になり続けています。きょうもあしたもあさっても、ひたすらnoteを書き、作品を生み出している。

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彼は私とサシ飲みをして「賦活した」と綴りました。

でもね、それは僕もなんだよ。

確かに僕は東京でそれなりな仕事をしてきた。ほんの1%だけ心残りだったけど、放送作家を辞めることに後悔はなかったし、充実感はあった。でも、彼に触れれば触れるほど、もっともっと自分の思いや考えを出して勝負してみたい、東京に置いたり忘れてきたりとは思ってないけど、もっとクリエイティブな土俵で勝負して戦ってみたい、そんな思いがどんどん溢れてきた。

だから高松にも行ったし、北海道にも行った。

モチベーションだけで続くものでない。どうしても粛々と作業する期間が発生する。本当にこれでいいのだろうか、と。でもそれが正しい道なんだ。よくわかっている。ずっと、彼は言い聞かせているんだよ。もちろん、僕もね。

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1年後の2024年春、私や猫山課長、たまたまこのnoteを読んでくださっている読者のみなさまがこのnoteを見て、2023年春のことを振りかえるきっかけになれればいいなと、タイムカプセルnoteになればいいなと、思っています。




最後まで読んでいただき感謝です。ほんの少しでも、心が動いた、ざわついたなどの揺らぎを感じてくださったら、スキを押してくださると嬉しいです。また、ツイッターでの拡散も大歓迎です!


また、2023年5月分から投げ銭記事にしました。私が好きな缶コーヒー1本をあげてもいいよという心優しい方の投げ銭もお待ちしております!

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