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EU欧州理事会、エネルギー関連閣僚会合を5月2日に実施予定。

 EU欧州理事会(EU加盟国元首および欧州委員会で構成されるEUの理事会)は、5月2日にブリュッセルでロシア国営ガスプロムからのガス供給が停止となったポーランド、ブルガリアへの対応策を中心に打ち合わせるEU加盟27ヵ国のエネルギー担当大臣が出席する会合を行う。

 4月27日にガスプロムからのガス供給が停止となったポーランドとブルガリアは、もともとガスプロムからのガス供給契約の残存期間が今年末までであり、その後の契約更改も意図されておらず、実際にはこの段階で既に代替のガス供給の目途が付いていた状況だ。しかし、代替のガス供給は、例えばポーランドに関しては、LNG調達を増強、ドイツからのパイプライン経由、そして10月以降に運転開始するバルト海からデンマーク経由で運ばれるノルウエー産ガスのパイプラインの組み合わせであり、ヨーロッパ各国間の相互協力が必要で、EU加盟国間での情報共有が重要になる。

 EU(欧州議会、欧州理事会、および欧州委員会)の前身は、ヨーロッパで戦乱の原因となってきた石炭と鉄鋼資源の支配の問題を調整し抑止する目的で1951年にフランスと当時の西ドイツが中心となり設立された欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)であり、現在のウクライナのように、紛争と資源の支配をいかに調整して回避していくかという目的には、設立の経緯および機能と役割からして合致した機構といえる。域内で資源をいかに融通しあうかを目的達成の手段としており、同様に有事の対応が求められた新型コロナ対策においても、EU主導での財政調達あるいはワクチン調達の場面で、各国が個別に対応していては対立が深まるような事態でも、加盟国全体でまとまった対応をすることで大規模な対策を迅速に行うことを可能にしてきた。EUは、平時にはどうしても加盟国にとり頭上にさらに追加で行政組織の傘が乗るような官僚的な非効率さに目が行く傾向があるが、現在のウクライナのような有事の際には、明らかに各国がばらばらに対応し混乱を深めるリスクを抱えるよりかは、EUでまとまって対応することによるメリットが上回る。

 5月2日の会合では、ロシアからのガス代金のルーブル決済要求に対して、EUとしての公式見解を再確認することになると思われる。ロシア側からのルーブル建て決済の要求に対して、EU欧州委員会は4月22日に一旦は、EU域内の企業はロシア側の要求の通りに行ってもよい、つまり、ロシア側の要求通りに特別口座を開設して支払いをユーロ(あるいは米ドル)で送金したうえでルーブルに替えてガスプロムが引き落としても、EUがロシアに対して科している制裁を破ることにならないので、この決済方法をとることは可能との見解を明らかにしていた。実際には、ドイツUniper、オーストリアOMV、イタリアEniなどの最大手は、ロシア側の要求に沿ってガスプロムバンクに特別口座を作り、ユーロ建てで送金した後でルーブルに交換されそれをガスプロムが引き落とす手順で決済準備を進めている。

 ガス代金をロシアに支払うことで、ウクライナでの侵略行為に資金的に加担することになるという嫌悪感情が強いドイツでは、そうした市民感情を配慮して、リンドナー財務大臣からドイツ企業はロシアの要求を呑むべきではないとの声明を出していた。しかし、実際にはロシアからのガスに代替する調達は短期間では不可能であり、ガスプロムバンクへの特別口座開設の決済方法をとり市場の混乱を防止するという流れになるとみてよい。オーストリア、イタリアも同様とみてよい。

 しかし、4月27日にポーランドとグルガリアがガスプロムバンクへの特別口座開設を拒否してガス供給が停止となったことをうけて、今度は、欧州委員会はフォン・デル・ライエン委員長よりルーブルでの支払いはロシアへの制裁に抵触するとの見解を出している。今後ポーランドやブルガリア以外にもロシアとのガス供給契約の現状をにらみながら今回のロシアからのルーブル建て決済要求にどのように対応するか姿勢を決めなければならない加盟国もあるだろう。今回の会合では、EUとして、団結した姿勢を示すとともに、この問題での加盟国間での意見調整をはかるものと思われる。

■参考資料:  Extraordinary Transport, Telecommunications and Energy Council (Energy), 2. May, 2022, European Council

(Text written by Kimihiko Adachi)

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