渡辺将人『メディアが動かすアメリカ』

 ちくま新書。2021年3月5日に読み始めて、3月23日に読了。昨年の秋ごろに購入して、パラパラとめくってはいたもののちゃんと読んでいなかったので、読んでみようと。なんやかんやで読み終わるまでに時間がかかったけど、面白いエピソードがたくさん書かれていて読み応えがあった。

 気になったエピソードとしては、情報源にガッツリと食い込んでネタを取ってくる人がいるけれど、その人の名前で記事が出たら情報源にばれてしまうのでその後ネタが取れなくなる。それは困るので、その人の名前は記事には出ない、と。媒体の内部の人だけが、ともすれば家族さえ知らないその人の価値をわかっているパターン。

 スポンサーやら広告主やらとの関係で自社では出せないが埋もれさせてもいけないというネタがある場合、馴染みの週刊誌に渡して記事化してもらうことがある、と。

 アメリカでは、特定のコミュニティ内で生活も情報も完結している場所がある。そのような場所では英語ができなくても生きていける。そんな場所での情報源はエスニックペーパーやラジオ。スペイン語や中国語の世界。そういえば、アメリカでの選挙の投票用紙はスペイン語や中国語でも表記されているんだっけ。

 そんなアメリカで、日系コミュニティが強いのはハワイ。確かに、メイジー・ヒロノ議員や故ダニエル・イノウエ議員など、名を知られた日系議員はハワイ州選出に多い。それ以外だと、ロサンゼルスなんかには日本人街がある(あった?)と聞くけれど、あまり集まって住んでいるという感じではない。これは、第二次世界大戦当時の日系人強制収容の件が影響しているのかなとも考えられる。周辺住民のコミュニティに溶け込むことで、受け入れられようとしてきたが故なのかなと。ただ、中国系や韓国系のパワーがますます注目される今日、日系の存在感がもっとあってもいいのかなと。

 あと、例の感染症前に書かれた本だけれど、日系やら韓国系やらひっくるめて「アジア系」として差別や暴力に反対し、立ち向かっていかなければならない、このことは事実だと強く思う。BLMだって、公民権を求めて立ち上がり、闘ってきた先達がいての今だからね。

 

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