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「貧乏ゆすりと言わないで」6.病気と腸の因果関係


推しの誕生日を祝おうと
本人不在の誕生日会をするのが流行っている。

喜美にも大好きな推しがいて
その人の誕生日会をしよう!と言う話になり「推し友」のメグと
待ち合わせた時だった。
仕事終わりに待ち合わせたファミレスに到着した時には
午後一時をとっくに過ぎていた。
空腹だったけど、薬を飲まないわけにはいかず、
オーダーした食事が出てくる前に薬を飲んだ。

遅れてきたメグがお店に入ってくるなり、
「ごめん、ごめん。遅れちゃって。
あれ?喜美ちゃん顔色めっちゃ悪いけど大丈夫?」 
と聞いてきた。その時喜美はとてつもない吐き気に見舞われていた。
「ちょっとトイレに行ってくるね。」
と言って立ち上がり、よろよろとトイレに向かった。
空腹状態で飲んだ薬が胃の中で暴れているのか、
ものすごい吐き気と同時に
目の前が真っ暗になるような感覚と腹痛も襲ってきた。
二、三日便通がなかったことも重なって
「やばい。倒れるかも。」         
と便器にすわりながら意識を正常に保とうと必死になった。 

呼吸を整え、何とかお腹の中に溜まっていた便を出した。
すると気持ち悪かったのがウソのように無くなり、
胃もたれもすっとして体の中がきれいになって行く感じがした。
「助かった。」              
喜美は心底ほっとした。
それから身づくろいをして席に戻った。
心配そうに顔を覗き込むメグ。
「大丈夫?」
「うん。もう大丈夫。出すもの出したら平気になった。
最近便秘気味でさぁ。」
「そっか。私もたまにあるよ。
行きたい時にトイレに行けないとすぐ便秘になっちゃうよね。
お互い気をつけようね。年もトシだし(笑)」


そう、はっきりとした根拠は解明されていないが
パーキンソン病と腸の因果関係は濃厚と言われていて、
気を付けていないとすぐに便秘になってしまうのだ。

この状態で空腹で薬を飲んだので、気持ち悪くなるのも仕方がなかった。
一方で満腹状態で薬を飲んでも振戦には全く効かないこともあり、
薬を飲むタイミングを考えなくては、と喜美は改めて思った。
  
パーキンソン病の薬は食べるものとの相性もあるようで、
タンパク質が多めの食事の後だと同じように薬が効かない。
精神的につらいことがあると、
一気に薬が効かなくなって
自分の意思でコントロールできないのが厄介だった。

結局今日もメグには病気のこと伝えられずに時間が過ぎてしまった。
いつ、どんなかたちで伝えたらいいのだろう。
人と会うたびにそんなことを考えてしまうことが多くなった。

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