見出し画像

「貧乏ゆすりと言わないで」 4.確定


それから一週間後、
喜美は神経内科の診察室にいた。

ダットスキャンの検査画像を見ながら
「パーキンソン病ですね。」       
神経内科の医師が診断結果を教えてくれた。

「左側のここの部分から
ドパミンが出ているのですが
明らかに小さくなっているのがわかります。
これはドパミンが正常に出ている状態でないことを示しています。
脳の左側なので右に症状がでているのです。」
「やっぱりそうなんですね。」
          
結果を聴いて喜美はビンゴだったことに
驚きはしなかった。

むしろわかってよかったとさえ思い、
ちゃんと治療しよう、
そして旦那のかっちゃんには
キチンと伝えなきゃ、と思った。

続けて医師が
「パーキンソン病が原因で
死ぬ人はいないけれど、
いずれ寝たきりになります。
この病気は根治しない進行していく難病です。
でも、ちゃんと治療を続けて行けば昔と違って
二十年三十年と元気に暮らしている人も多くなっていますよ。」            
そう告げられた。

根治しないってどういうこと?
進行していくって?
寝たきりなんかになりたくない。
ただただ毎日をいつも通りに「普通」に暮らしていきたいだけなのに。
「普通」って何だろう。
診断確定したその日から考えるようになった。

もしかしたら「障がい者」になるかもと言う恐怖が常にあった。
「普通」とは今までと変わらず動けること。
自分らしく暮らすこと。
自分らしく生きること。
そして自分の力でトイレに行けなくなったらどうにかしなきゃと思った。

その答えにたどり着くまでさほど時間はかからなかった。延々と続く長いトンネルの中を歩いていく毎日が喜美の心を暗くしていった。

パーキンソン病の概要については、厚生労働省のこちらの資料を
ご覧になってください。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000089954.pdf

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?