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伸ばした指と、ねこのヒゲ


なんか、ずっと 
一番 仲がいい うつ病の友人の事を
「助けなきゃ」って 思いがあった。

なぞに、
元気にしなきゃ とか
笑顔になってほしい とか

わたしが、彼女を 守らなきゃ
安心させたい

そんな 思いがあったのだ。


でも、
それ いらな かった


たぶん、
彼女は「わたし」に、
救われたい とか、助けてほしい とは
一回も 言った事はない


でも、私は くりかえし 
気持ちを 何かに かきたてられて
「そうしよう」と してきた


でも

ただ、今日 なんとなく
ふいに なんとなく

そういう事を 彼女が私に
思っていない(期待していない)だろう 
って事が わかったから。


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雨上がりに ふたりで 車を降りて、


小さな溝の上の コンクリートが
歩くと カタカタと、音をたてる道を
さんぽしていた。


彼女の 昔すんでた 家の近く

公園の 半分埋まったタイヤに 腰かけて
ノスタルジックに すごすつもりで


サンドイッチの入った レジ袋を
膝の横で ふりながら 歩いていると、

餌がもらえるって 思ったのか
痩せた 灰色の猫が 出てきた

しっぽまで続く 背中のシマシマ模様

猫好きの彼女は しゃがみこむ


「そういや、昔 飼ってたんだっけ?」

お茶のペットボトルを かたむけながら

猫が どうも苦手で、
あつかい方 が わからない私は
少し 離れた所から 見ていた

彼女の 黒くて長い 髪の毛が
背中から すべりおちて
陽に透けて、茶色にみえた


伸ばした指と、ねこのヒゲ

ふぅっと やわらいだ 表情
目の中に ひかりが 灯る


そんな 彼女のまなざしを 見て


ああ、「必要 なかったんだ」 って
わかったんだ。



彼女は、きっと
じぶんのタイミングを 待っている だけ


彼女は、きっと
「チカラ が ない人」 では、ない。


助けようと、思わなくっても




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