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おまるとスイセン

娘のトイトレが終わったので、おまると補助便座に別れを告げることにした。

まだ長男が小さいころ、ロンドンのベビー用品店で買った、水を感知すると汽笛が鳴るトーマスのおまる。補助便座にもなる中敷きがついていて、ふたを閉めれば踏み台にもなる。なかなか優れモノだと思い買ったものだ。

この店には結構お世話になって、チャイルドシート、ベビーカー、食事用のいすもここで買った。商売上手なバングラデシュ人の店主が経営しており、「タクシーで退院するにもベビーシートは必須だ」、とか(なくてもいけたらしい)、「黒のベビーカーは値下がらない」とか(入り口にはSALEって書いてあったけど黄色だけらしい)、むむっ、と思いつつすすめられるままに購入した。当時はイギリスの宅配システムをあんまり信用していなかったし(信頼できることがのちにわかった)、はじめてのものばかりで現物を見たい、でも大きすぎる店舗では選択肢が多くて困る、という私にとって、持って歩いて帰れる距離にあるこの店は素晴らしかった。

長男は早々にボタンを押せば用を足さなくても音が鳴ることを発見し、帰国の際には中敷きだけをトランクに入れて本体は船便で送ったこともあって、数か月後に再会した時には完全に利用方法を忘れていたが、そこからさらに1年続いたトイトレフェーズにおいて、次第に彼のお気に入りとなり、しばしじっくりと座って黙考している場面に出会うことになった。

せっかくトランクに入れて持ってきた中敷きは日本のウォシュレットには合わず、慌てて別のトーマスの補助便座を買った。次男は兄の見よう見まねで早々に補助ありからなしへステップアップし、使われなくなったおまると便座はトイレの後ろの棚に鎮座することになった。

おまるも便座も使った後洗うのが地味に面倒で、娘の時はあまり使わなかった。娘もないならないで慣れたようで、トーマスにはあまりお世話にならずに、トイトレを完了。3年近くトイレの後ろにおわしたおまるたちは、ついにお役御免となった。

さすがにおまるはリサイクルできそうもなく、ごみ袋に入れてそっと閉じる。半透明の袋から、トーマスがどんぐりまなこでほほ笑んでいる。ありがとう。何もなくなった棚に、スイセンを飾ってみる。ふわりと香る春のにおい。こうやってどんどんおおきくなっていくんだな。


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