ドリームズカムトゥルー報告

ついに長年の夢が叶ってしまった。
ずっといつかできたらいいなと思っていたことが、こんなに早く叶うとは想いもよらなかった。
実現するためには相当な準備と心構えが必要になるだろうと考えていたが、まさしくその通りであった。
みんなも感じたことがあるだろうが、いざ願ってたものが叶ってしまうと実感が湧かないのか、こんなものなのかと思ってしまう複雑な気持ちになる自分もいる。

今日、僕はついに「スタバでmac」という夢を叶えました。

ありがとうございます。お父さんお母さん、ついにやったよ。これで僕も大人の仲間入りだよ。

いやまさか叶うとは思いませんでしたね。なんだかんだ叶わないだろうとどこかで諦めていたんですが、このタイミングで叶うとはね。自分みたいな人間があっち側に行くとは思いませんでしたね。自分でも行かないだろうなと思っていたんですがね、行きましたね。行っちゃいましたね。人生ってわかんないもんですね。世の中には二種類の人間がいるんですね。「スタバでmac」する人か愚民かですね。皆さんまだそっち側ですか？

各方面から称賛の嵐ということでね、お便りがどしどし寄せられてきておりますがね。部屋中の壁が２４時間テレビさながらfaxでびっしりなんですけれどもね。僕も少々恐縮なんですがね、今晩は赤飯炊いて尾頭付きの鯛用意してシャンパンタワーでもかましてやろうかと思います。

夜勤明けでその日が休みの場合、僕はシンプルフリーターで副業芸人の端くれなので、大抵は家から出ずに映画や漫画を読むことに一生懸命に、かつ大胆に、かつ繊細に取り組むのだが、今日の僕は一味違った。帰宅してシャワーを浴びた後、濡れた体を拭い、ドライヤーで髪の毛を乾かし、化粧水を顔に塗り、鏡の自分に向かってつい「今日の俺は一味違うぜ」と言い放った。信じられないと思うがリアルにだ。洗濯物を干しながら、「何かが違うぜ今日は」とも言った。

そして何が違うのか熟考しているときに

「スタバでmac」

がふと頭を過った。

あ〜あのスタバでmacね〜。え？いやいやいやいや！高いよ高いよ！ハードルが！込みするよ！尻が！え？やっちゃう？やってまう？俺が？いい天気やからって無鉄砲すぎじゃないの？え？やってまう？やってまうか？

とふんだんに自問自答した結果、

おおお、ついに俺もやる時がきたか〜と、滾りに滾って気づいた頃には家を出ていた。

道中、

いや別に家でもできるよ？あのスタバでmacやるの？コメダとかでよくない？せいぜいコメダとかでよくない？

と何度も自分の中の天使が囁いていたが、もうここまできたらいってまえ打線だ。現場（スタバ）についてしまうともう戦いが始まってしまうので、途中コンビニに５回ほど立ち寄り、５回ほどタバコを吸った。いざ現場を目の前にすると、足がすくんだ。俺、もう戻ってこれないかもしんねぇ。

あれ？スタバってこんなデカかったっけ？

緊張からか、いつも目にするスタバの存在感が異様に大きく感じた。意を決して、足を踏み入れ、長い戦いになるだろうとホットコーヒーのグランデを注文して席についた。

まずは先手をとった。席につけばこっちのもんだ。立ち上がりからこちらのプレスがよくハマっている。席についてしまえば案外居心地は悪くないもんだ。そりゃそうだ。カフェだから。天下のスターバックスだから。てか何回も来とんねんこちとら。

あれ？でも一人で来たことないかも。

なんと副産物的に「スタバにalone」にも成功しているではないか。ログインボーナスもらった気分よ。知らない間に成長して、もうスタバなど敵ではないのかもしれない。

ここまで「そんなもん普通にいけるやろ」と思われている方もちらほらいらっしゃるかと思いますが、生まれてこの方斜に構えて生きてきたもんですから、その構えが凝り固まって皆様ほど楽に生きていけないのです。

さあここからが本題。それではあっしのmacちゃそかまさせてもらいましょかね。よしかましてやんぞ！

.....ん？あれ？mac重ない？macを取り出せないぞ？これはスタバの空気がそうさせてんのか？スタバの圧か？もしかして世間的な圧か？何？お前にはまだ早いって？全然開ける気しないよ？急にスタバでmacが怖なってきたよ？え？周りのパーマの数だけ捻くれ君もヒールの高さの分だけプライド高子さんもみんな軽々mac扱ってるよ？

ヤバイ...「スタバでyips」だ...まあ、あれか、macじゃなくてもiphoneでも書けるしな。てかiphoneでよくない？いや、あかんあかん。「スタバでsmapho」は逃げてますやん。逃げてますやんかあたす！今のお前を子供の頃の俺に見せたらどうなる？「スタバでmacも開けへんのか」と冷静にかつ蔑んだ目で諭されるぞ。俺もあっち側に行くんだ！

そうしてmacを開くことに成功した。ふう、なんとか耐え凌いだ。俺は勘違いしていたようだ。ずっとスタバと戦っていたが、実際の敵は「わざわざスタバでmacしてますやん」という世間の目なのだ。通称「wazawazaスタバ」だ。敵の正体がわかればこっちもやってやるしかない。クソみたいな世間の目なんかにゃ中指立ててやる。意識高い系っぽい奴らと仲間になってやる！こいつら案外悪いやつじゃないんだぜ？

よし、ほなとりあえずネット行かせてもらおうか。その前に集中しよう。ここで手持ちのイヤホンを装備。ここにスーパーカーを融合！木村のとくぼうが上がった。心地よく流れるスーパーカーでテンションも上がっていく。さあ再開だ。

その矢先、「wifi接続問題」が勃発した。もうわかるね？「スタバのwifi」ね。繰り返し浮かび上がる「インターネットに接続されていません。」の文字。おいおいおい、macよ。いやmac book air（マッキャブッキュウェアー）よ。お前は味方や思てたのに。味方にも見放されてきた。流れは完全に世間の目だ。こうなったらテキストアプリでこちらも対応。我ながら冷静であった。

よし、ついに本格的に「スタバでmac」タイムだ。さあ、何書こう。スタバで書くからには小洒落た一句とかか？それとも小粋な小噺を短編で綴ってやろうか？脱線さえも魅力的なジャジーなセンテンスでも刻んでやろうか？

んんんん.....おいおいおいおい

書く題材も文章もなかなか決まらないではないか！あれ？あれれー？全然集中できんやん。聞いてたんとちゃう。あれ？なんか道ゆく人めっちゃ見てまうよこれ。え？なんか気持ちブレてきたよ？次第にスタバでmacしてる俺かっこいいってみんな思ってるんじゃね？みたいな感覚なってきたよ？みんなこんな中集中してんの？なんでこんなことなんの？もう家でよくない？別に家でよくない？ブレンディーでよくない？家wifiあんで？おいそこのパーマ野郎、お前全然集中出来てへんやろ。なあ。スタバでmacしてる人全員仕事効率とパフォーマンス著しく低下してない？みんな周りの目気になるなあとは思ってるよな？ちょっとドヤ大さじ2杯入れてるよな？おい、そこの意識高い系。真面目な顔してキーボード叩いてるけど内心「俺スタバでmacやっちゃってるわあ」思てるやろ？ただの意識とプライドとその他諸々高い系の人やないか！そうですけどって言って。言って開き直って。開き直ってそっと優しいキスをして。結局ですやん。みんなコメダとかの方がもっとできるはずやで。こんなとこに仕事しに来んでもええねんで。ホッと一息つくだけでいいのよ？仕事もレポートもファッションせんでええよ？みんなすごない？全然周りの目気になってるんですけどあたし。なんなんこの居心地悪い空間。

イヤホンから流れるスーパーカーのSTORYWRITERが頭を混乱させる。てかもはやスーパーカー側もいじってきてる。

いやほんでグランデでかいな！誰に需要あんねん！菅原初代か？菅原初代あたりか？はよ飲み干させてくれ！もうめちゃめちゃ帰りたいわ！タバコ吸いてえな！どないなってんねん！おうちでマックが一番ええて！もう！

そうこうしていると気づけば３時間強が経っていた。すると急にmacがブラックアウトした。まさかの充電切れである。

は？何そのオチ

思わぬ幕切れにため息が漏れた。何？も〜充電なくなるとかも〜何〜まあいいけど〜？と言って盛大に締め切り間に合った〜顔を周りに向けてかましてやった。何からも追われてないのに。

結局「スタバでmac」に決着がつかなかった訳だが、これで一つ自分の殻が破れたような気がする。事実スタバでmacしたし、コーヒー美味しかったし、またいくか。

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