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河野大臣「パワハラ発言」の裏に潜む問題点

はじめに
現在「新型コロナウイルス感染症ワクチン接種推進担当大臣」として活動し、次期自民党総裁選にも出馬の意向を示している「河野太郎」大臣
その河野大臣が「8月24日に行われたオンライン会議の場で、資源エネルギー庁の幹部職員にパワハラを行った疑いがある」と報道(文春オンラインの記事)されています。
「パワハラ発言」は赦されざる行為ですが、それ以外にも国の「エネルギー庁基本計画」にもからむ問題点が指摘されています。
今回は経済学者で「アゴラ研究所所長」の池田信夫氏の記事を元に、「パワハラ発言」の裏に潜む問題点を解説してみました。
長いですが、読んでいただけると幸いです。

発端となった「パワハラ発言」

うーん、これはいけませんね。
河野大臣個人の問題だけではなく、様々な問題が内包されていると感じます。
『河野太郎規制改革担当相が資源エネルギー庁の幹部職員にパワハラを行った疑いがあることが「週刊文春」の取材でわかった』

まず、河野大臣の物言いは「パワハラ」と取られても言い訳できないでしょう。
政治家は役人に対して強い立場にあります、ましてや大臣ですから力関係は歴然としています。
圧倒的に力関係が上の相手から強い口調で詰められると、いくら高級官僚とはいえ萎縮してしまうでしょう。
その結果、仕事の効率が落ち、必要な「報連相(報告、連絡、相談)」が途絶え、重大なミスが発生する可能性が上がります。
部下を怒鳴って仕事の効率が上がることはまずありません。
「個人の人権」を尊重することが仕事の効率あげることにもつながると思います。

河野大臣の手法は「中曽根元首相」に近いそうです。
高い目標を掲げ、時に孤立を恐れず、組織の意向に反してでも直言する手法ですね。
また「即断即決」も好むようです。
その手法は「考え方が近い人」には上手くはまると思いますが、そんな人ばかりではないので「考え方が違う人」とも上手に働ける手法も必要と感じます。
河野大臣には今回の件を猛省し、今までの手法を改めていただきたいと思います。

政府のガバナンス問題

また「パワハラ」と同様に、今回問題だと感じたのは「政府(官邸主導)のガバナンス」問題です。
今回パワハラが発生した会議で河野大臣が話していた相手は経済産業省の外局「資源エネルギー庁」の官僚です。
議題は「エネルギー基本計画」についてですね。
「エネルギー基本計画」とは国が3年ごとに策定する「エネルギー需給に関する国の中長期的政策の基本指針」です。
現在、電力会社などの業界団体や有識者会議の意見を「経済産業省」がとりまとめ、素案を発表したところです。
ここから議論を深め、10月に閣議決定することを目指しています。

なぜこのエネルギー基本計画に河野大臣が口を出すのか?
これには「内閣府特命大臣」という仕組みが関係します。
河野大臣は「ワクチン接種推進担当大臣」と「内閣府特命担当大臣(行政刷新担当)」を兼務しています。
内閣府特命担当大臣(以下「特命相」)は「自らの所掌事務について関係する行政機関に資料提出や説明を求め、勧告を行う権限」があります。
エネルギー基本計画はいろんな分野に影響を及ぼすため、河野大臣が自分の分掌だとして省庁に説明を求めることはありえます。

Wikipedia:内閣府特命担当大臣
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%85%E9%96%A3%E5%BA%9C%E7%89%B9%E5%91%BD%E6%8B%85%E5%BD%93%E5%A4%A7%E8%87%A3

そこまでは良いのですが、今回河野大臣は『再生可能エネルギーの比率を「36~38%程度」にする』という文言にこだわり、『36~38%「以上」とするのが本当だろう』と迫っています。
これでは特命相が官僚にパワーで圧力をかけて基本計画の修正を求めているように見えます。
特命相は「勧告」はできても「変更」を強いる権限はありません。
さらに勧告を行うなら「官僚」にではなく、所轄の大臣である「梶山弘志」経済産業大臣に行うのが筋でしょう。
資源エネルギー庁の官僚に直接変更を迫っても、経産相の許可なしに変更できるわけがありません。

河野大臣は「原発反対」「再生可能エネルギー推進」という考えの方です。
また会議に同席した大臣補佐官の「山田正人」氏は、経済産業省の官僚出身ながら「核燃料サイクル」の中止を訴えた方で、河野大臣にとっては「同志」と言えるでしょう。
いくら個人的に強い思いを持っていても、特命相の権限を利用して国の基本計画に「横やり」を入れてくるのは問題だと感じます。
原発反対も再生可能エネルギー推進も一つの意見として、正面から堂々と議論して欲しいと思います。

「官邸主導」の問題点

内閣府の特命相や内閣人事局等の「官邸主導」の仕組みは、「縦割り行政」や「官僚主導」「決められない政冶」に対して1990年代から続けられてきた改革の一つです。
これ自体は必要な仕組みだと思いますが、「権力集中に対するガバナンスが追いついていない」との指摘もあります。

組織としては、特命相は内閣官房長官の配下にいます。
加藤官房長官は今回の河野大臣の動きを知っていたのでしょうか?
加藤官房長官が河野大臣の「横やり」を制御できていないとしたら「政府のガバナンスの問題」になってしまいます。

『「菅総理」には「菅官房長官」がいないのが問題』と安倍前首相が指摘していましたが、今回の件も「菅官房長官」不在が招いた事態かもしれませんね・・・。
でも一個人がいなくなると機能しなくなる仕組みは問題なので、官邸主導の仕組みの改善を強く求めたいです。

参考資料
以前、私が官邸主導について調べて作成したまとめです。