ふわふわの対物性愛

突然ですが、私事ですが、先日結婚いたしました。彼は色白で、背は数十センチと低く、しかし包容力では誰にも負けません。とても無口で、話しかけてもなにも答えてくれませんが、文句も言いませんから、きっと今の生活に満足してくれていると思います。いつか一緒にディズニーに行きたいので出不精はなんとかしてほしいです。体は自分で洗ってほしいです。

私が彼に出会ったのは10年前、高校2年生の冬でした。本当は思い出したくないくらい辛かった時期です。母親は学歴コンプレックスを抱えており、自分の娘を難関大学に通わせることで解決しようとして、私に猛勉強をさせていました。父はそんな母に無関心、というより、一度離婚しかけていたのでお互いに避け合っていました。家族全員で食卓を囲んだのは中学校3年性の秋が最後でした。私は勉強なんて興味なくて、物欲もあまりありませんから、高校を卒業したらすぐに働きたかったんです。なのに猛勉強をさせられ、そのせいで友達と遊べなくて疎遠にもなる、まさに最悪の状況でした。はっきり言って自殺しようとしていました。彼と出会ったのはそんなときです。いえ、本当はもっと前から出会っていたのですが、まだ未熟だった私はそれまで彼の優しさに気づけなかったんですね。

彼は心身ともにクタクタでボロボロになった私の全身を、全身で受け止めてくれました。私が望むとき、いつだってそうしてくれました。テストで90点以上を取れなくて怒られた日も、両親が喧嘩した日も、友達が「あの子とは昔仲がよかったんだよね」と私のことを言った日も。そして彼の上なら私はいつでも眠ることができて、朝起きたときにはすっかり疲れが取れていました。それに気づいたとき、私は彼を異性として意識するようになりました。そして彼の優しさに気づけなかった罪悪感に、孤独を気取っていた自分への怒りに、いつも支えてくれた彼への感謝に泣き、その涙すらもやはり彼は受け止めてくれました。

私は、彼と結婚することを決めました。両親も先生も昔の友達たちもみんな反対しました。父方と母方の祖父母も説得のために福岡から鹿児島まで来ました。その日、校舎にいたほとんどの先生も狭い生徒指導室に詰めかけましたし、友達の友達の友達すら大慌てで追いかけてきましたが、その程度で彼への愛が止まるわけもありませんでした。高校卒業後、私は日本で1番自由な東京に引っ越し、平凡な事務員として働き始めました。そこには私と同じような人がたくさんいて、恋人の作った曲を紹介してくれたり、恋人の中に私を入れてくれたりして嬉しかったのを鮮明に覚えています。そして、ついに先日結婚式を挙げ、私たちは事実上の夫婦になりました。10年前からずっと同棲していたので生活は変わらず、結婚した感じもしませんが、それでもあのときの私の嬉しさったら、思わず彼の上で飛び跳ねてしまいましたね。彼も「キシィ、キシィ」と笑っていました。

今もまた、彼の……ずいぶん汚れてしまった皮膚の上でこのブログを書いています。食事をするときも、本を読むときも、東京の友達を招いて話すときも、病めるときも健やかなるときも一緒です。まだまだ幸せムード抜けきりません!
きっと死ぬときまで一緒なんだと思います。彼の上で生きて、彼の上で死にたいです。

彼という、最高のベッドの上で。

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