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気胸ジェンヌ誕生秘話⑦――あのとき、肺が破れてた?

「気胸になった」と話すと、「自覚症状はなかったの?」とよく聞かれる。そのたびに「わからなかった」と答えてきた。そもそも気胸が発覚したのは健康診断のレントゲンがきっかけで、まさか自分の肺に穴が開いているなんて思いもしなかったし。

 よく言われる息苦しさなどもない、というか自覚がなかった。実はその頃の私は胃腸の調子が悪くて、常に食道から胃のあたりにモヤモヤした感じがあった。でも、前に逆流性食道炎をやった経験があるので、きっとそのせいだろうと思っていたのだ。ただ、下着の圧迫感がつらかったのは覚えている。つまり、気胸の症状を、胃腸の不調だと思っていた可能性がある。

こんな痛み、人生で経験したことない!

 主治医によると、気胸は大きく息を吸うとか、肺に力を加えた瞬間に限らず、安静時にも起こることがあるという。「テレビを観てて、肺が破れたという人もいます」とのこと。

 しかし振り返ってみると、「もしかしてあのとき肺が破れたのかも!?」という瞬間があった。

 私の「空気もれ」の場所は、一度破れたところがいったん治り、また破れた状態になっていた(この2回目の空気もれのとき、気胸が発覚した)。つまり、2回破れているのだ。

 そして肺のあたりに2回、これまでの人生で経験したことのない痛みを覚えたことを思い出してきた。いずれも気胸が発覚する健康診断前のことだ。

喉から肛門まで貫くような痛み

 1回目は、電車を降りて、駅のホームを歩いているときだった。

 突然、喉から肛門までを貫くような鋭い痛みが走った。喉のあたりの痛みが、体の正中線を通って肛門まで行くようなイメージだ。思わずその場に立ち止まる。たとえていえば、こむら返りみたいな感じだ。

 実際、「酒の飲みすぎで食道にこむら返りが起きたのか!?」と思った。でも、そんな理由でこむら返りが起こるなんて話、聞いたこともない。

 もうひとつ考えたのは、冷えだった。ちょうど夏場だったこともあり、冷房で内臓が冷えて、腹痛みたいに喉から肛門にかけて痛みが走ったのではないか、と。

 そうこうするうちに、1分くらいで徐々に痛みが引いていった。今の痛みはなんだったんだろう……と思いながらも、歩き出したら動きに問題はなかったので、「きっと内臓がこむら返りを起こしたのだ」と勝手に結論づけて、そのことは忘れてしまった。

(冷静に考えれば、こむら返りは足で起きるものだから、この思い込みはおかしいことは、今となればわかるのだが……)

「内臓のこむら返り」と思い込む

 同じ痛みに襲われたのは、それから2、3カ月経った頃だろうか。仕事帰り、駅から家までの道を歩いているとき、それは再びやってきた。

 前回同様、喉から肛門にかけて走る鋭い痛み。思わず、息が止まる。

 さすがに2回目ということもあり、少々気になったが、病院の何科に行ったらいいのかわからなかった。このときは、グーグル先生にもお伺いを立てた気もするが、明確な答えを得られなかったと思う。

 しばらくしたら痛みが引いていったので、やはり「酒の飲みすぎで内臓こむら返り説」と結論付け、しばらく禁酒した。その後痛みが出ることはなかったので安心していたのだが、実はその間も肺からは空気がもれ続けていたのかもしれない。

痛みというメッセージ

 肺の2回の空気もれの瞬間は、いずれも私の主観によるもので、その場で検査したわけではないから、それが本当に気胸が起きた瞬間だったかはわからない。ただ、私の空気もれは肺の上部で起きているから、それを喉や食道の痛みと勘違いしたということもあり得る。

 何より、これまでの人生で、同じ種類の痛みを経験したのは、あの2回だけだ。それは気胸が2回起きたこととも一致する。

 だからもし今度あの痛みが再び訪れたら、それは気胸のサインかもしれないと思って、すぐに病院に行こうと思っている。

 きっと肺に穴が開く場所によって痛みの出方は違うのだろうが、やはり痛みは体からのメッセージなのだ。それを「聞かなかったこと」にしてはいけないと、改めて思う。




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