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霜降り明星はこのまま「爆笑問題ルート」を辿ってしまうのか?③

前回 ↓ 

 学生時代は本当によくラジオを聞いた。
 「JUNK」を中心にTBSラジオの番組のみを聞いた。TBSラジオにハマりすぎて妙な忠誠心が芽生えていたせいか、他の局は一切聞かなかった(今から思えば実にもったいないことをした)。
 一番ハマったのは「爆笑問題カーボーイ」。毎日ネタを考えてはバリバリメールを打って投稿した。火曜が来るのが毎週待ち遠しかった。
 社会人になって十数年が経った現在、私が聞いている番組は一つだけ。
 それが「霜降り明星のオールナイトニッポン」である。

 霜降り明星に興味を持ったきっかけを記す。

 昔からお笑いが好きで、ずっと追いかけている。
 見るテレビはお笑い・バラエティが中心。頻繁では無いがたまには劇場にも行ったりする。
 当然ながらとにかくネタが面白い人が好きなわけだが、最近はそれにもう一つの評価軸が加わった。
 「はな」である。
 昔はそこまで意識していなかったのだが、最近は「華のある人が見たい」と欲するようになった。
 結局のところ、演者がスターになれるかどうかの分水嶺は華の有る無しにかかっている。
 スターが生まれにくい時代だ。それならば、なおさらスターというものを見てみたい。
 近ごろでいちばん華があるのは誰だろうと考えたとき、すぐ思い当たったのが霜降り明星だった。

 M-1で優勝する前から二人はすでに売れていたので、漫才を目にする機会は多かった。特に関心が無かったときにはネタがやや正統派すぎる気がして物足りない印象があったが、華というものを意識するようになってからは、ぐーんと二人の姿が目に飛び込んでくるようになった。二人はずっと輝いている。私の意識の方が変わったのだ。
 ほどなくして二人がド深夜に「オールナイトニッポン0」をやっていることを知り、聞いてみたらぶっ飛んだ。めっぽう面白い。
 粗品に関しては「オールザッツ漫才」(毎日放送)の若手登竜門的なコーナーで史上最年少で優勝したなどの知識もあり、なんとなく「才人」というイメージを掴めていた。ただ、せいやに関する情報を持っておらず、失礼ながら粗品の横にいる添え物的な存在なのかな? と最初は想像していた。
 大いなる誤解であった。
 ラジオを聞いてまったくの勘違いであることがすぐに分かり、己の不明を恥じた。
 霜降り明星は粗品だけではなくせいやの方も「モンスター」のコンビなのであった。
 愛嬌、達者なモノマネ、咄嗟の大喜利能力、くさされたときの絶妙な返し、狂人キャラへの憑依芸。
 ミルクボーイのネタではないけれども、コーンフレークの栄養バランスなみにクソでかい五角形の能力の持ち主だった。
 霜降り明星はどちらも好きだが、好みではせいやの方に軍配が上がるかもしれない。
 ラジオがこれだけ面白いならとテレビの方もなんとなく追いかけるようになったが、二人が出演するテレビに関してはピンとくるものがなく、①②でさんざん述べた通り「これってもしかして『爆笑問題ルート』に向かっているのでは……?」という謎の危機感を抱くようになった、という次第である。

 前回、爆笑問題とも共通する弱点として「二人だけの空間が面白すぎる」ということを挙げた。
 一見いいことずくめのように思えるが、これは裏を返せば「二人以外の人間が入ってくると面白さが減る」ということでもある。
 ラジオ番組はシンプルな構成の分、演者は二人さえいればいい。だから、ひたすらトークに笑いを注入することに集中できる。
 この世に二人だけ(とそれを見守るリスナー)の世界さえあればいい。
 テレビ番組ともなるとそうはいかない。「ゲスト」とか「企画」とかどうしても別の要素が入ってくる。スタッフの数も増える。二人ではコントロールできない部分が当然出てくる。そんなとき、私は笑いの密度が下がったと感じる。
 結局、今まで成功したテレビの「冠番組」たちを思い返したとき、メインが他の要素(人・企画・スタッフ等)とうまい具合に調和して更に面白さが倍増したことで成功したと言えそうだ。
 爆笑問題と霜降り明星は、互いのやり取りが完成されすぎていて、私にはそれ以外の要素が夾雑物きょうざつぶつとさえ感じられる。「冠番組」という二人以外の手を借りなければならない大きなものを作る必要があるとき、「二人だけの空間が面白すぎる」というのは大きな弱点になるのだ。
 もちろん、一流の芸人たちはどのコンビも「二人だけの空間」が面白いに決まっている。ただ、これはもう感覚とか勘の領域に入ってしまうのだが、とりわけ爆笑問題と霜降り明星に関しては、その「空間」が第三者によって破られたときに何故かその面白さが目減りする印象を私は持つ。
 もし今後霜降り明星が「天下を獲った」と言えるような彼らの代表作となる冠番組を持てなかったとしたら、その性質を持っていたことの証左となるのではないだろうか(もちろん、まだまだ分からない)。
 「二人の面白さはこれからも確約されているんだからそれでいいじゃないか」という意見もあるだろうし、それももっともだと思う。
 そう、これは①で述べた通り「彼らの代表作と言える冠番組が無いのは実に残念でもったいないと感じる」という、一介のお笑いファンである私のワガママに過ぎない。

 本来は今回で終わる予定だったが、もうちょっと書きたいことがある。
 つづく。

[おまけ]
・今では信じられないが、M-1優勝前のせいやは「アメトーーク!」とかのトーク番組においてバイト先でヘマをやらかしたエピソードを披露することが多く、テンパリキャラが定着していた。しかも「変なタイミングで前に出る」としてほぼほぼスベリキャラみたいな扱いを受けていた。舐められたもんである。
 いつの日かのオールナイトニッポンでせいや自身も「あのときM-1優勝してなかったら、しばらくはテンパリ&スベリキャラが続いていたかも?」という旨の述懐をしていたのは興味深かった。

・いま現在他のラジオを聞いていないおぬしに何が分かるのか、と言われそうだが「霜降り明星のオールナイトニッポン」のハガキ職人がいちばんレベルが高いと思う。これは断言できる。もう肌感で分かる。どの方もバケモンぞろいだ。
 この番組で複数回採用された猛者は、そのことを一生自慢してもいいと私が保証する(何様なのか)。

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