心房細動を発症し、カテーテルアブレーション手術を受けました
先週のことですが、心房細動の根治療法であるカテーテルアブレーション手術を受けてきました。1週間お休みをいただき3泊4日で入院し手術をうけました。手術は問題なく終了、経過良好で予定通り退院し、現在回復の途上にあります。日常生活においてはほぼ問題ない状態です。
仕事を休むことに抵抗感・不安感がありましたが、復帰して溜まったメッセージなどを見たところで、実際のところ大したことは起きてなくて、ホッとしたというか拍子抜けしたところです。事前に関係各位に休みますと伝えてはありましたが、それでも、仕事なんてなんとかなるものだよ、そう構えるもんじゃない、ということを改めて確認した次第です。
(仕事との関係についてのはなしは本題ではなく、本稿ではこれ以上触れません。)
なお、以下には医学的情報が多く含まれますが、私はその正確性を保証できません。正確な情報にあたるには、別途文献を参照する、医師に相談する等してください。
経緯
今年のはじめ(2023年の2月頃)、スマートフォンをiPhoneに機種変し、それに合わせてアップルウォッチも導入しました。それから毎日身につけていたのですが、3月頃、ある日寝て起きたらiPhoneに「心房細動の兆候あり」という通知が表示されたのです。それまでもちろん、心房細動どころか健康診断などで心臓に所見があったことすらありません。
非常にびっくりしましたが、その時点では、とりあえず様子を見ようということにし(何しろ日常生活では全く何も異常を感じられません)、生活を少し改めて睡眠時間を長くすることにしたところ、その後通知は出なくなりました。
なので徐々に忘れかかっていたのですが、9月頃、再び「心房細動の兆候あり」が出てしまったのです。もうスルーすることはできません。かかりつけ医に相談し、地域の大きい病院にエスカレーションしてもらい、そこで診察・検査してもらいました。
検査の結果は異常なし、診察で詳しく話を聞きましたが、心房細動というのは発生しているときでなければ検知できないのです。そして頻繁に起こるようなら、それはかなりまずい状態です。私は半年に1回位の頻度でしか発生しないので病状としては初期の状態でした。医師から、まずは発生しているところ(発作)を押さえましょう、かなり長期戦(半年とか、もっとかも)になりますよ、と言われました。
実はアップルウォッチには、心電図(取得)機能があります。心房細動の兆候は自動的に寝ている間に計測されるのでデフォルト設定でも何もしていなくても検出・通知されるのですが、心電図機能は、明にウォッチ内のアプリを起動して30秒間計測します。この心電図機能を使って、日常生活で心臓の挙動がおかしいと感じたときに計測してみてください、ということになりました。(アップルウォッチでなく、簡易心電図計というものが電気屋さんで市販されており、それを使うこともできます、というか普通それを使う。)
そこで10月、事ある毎に心電図機能で計測していたのですが、ある時、意識下で(起きているとき)心房細動が発生していることを計測することができたのです。それは、体調を崩して心身に非常なストレスが掛かったときでした。なお、この10月11月は非常につらい期間になりました。ちょっと心臓がドキドキするように感じるたびに、心電図機能を起動しなければなりません。計測してもし心房細動が検出されたらどうしよう、と大変に不安なのですが、それでも計測しなければ状況が掴めません。悪いことが起こっていることを自分の意志で調べるのはとても恐ろしいことなのです。
計測したデータ(心電図のグラフ)をPDFにし(その機能もiPhoneのヘルスケアアプリにあります)病院に持っていったところ、これはたしかに心房細動である、かくなる上は治療が必要だ、ということになりました。これが11月頭頃のことです。
心房細動とは
心臓には、右心房・左心房・右心室・左心室と4つの部屋(区画)があり、それぞれが適切なタイミングで収縮することで血液を体に送り出しています。その連携は電気信号でなされているのですが、その電気信号の伝達がおかしくなると収縮の異常(不整脈)が発生します。(右)心房で異常が発生するのが心房細動です。
実は、心房細動は、発生しても直ちに心臓が止まってしまうような重篤な状況は発生しません。私もそうでしたが、寝ている間に発生しても自覚はできないです。しかし心房細動が発生すると心臓内に血の塊が出来る可能性があり、それが体を循環し脳梗塞を発生させる可能性があります。また長期に渡って心房細動状態が継続すると、心臓全体にダメージが蓄積し心停止の原因になったり、高血圧になったりするなど、体に深刻な問題が発生してくることになります。
そして恐ろしいことに、心房細動は、放置しても自然治癒したりしません。基本的には悪化の方向にしか推移しないのです。なので、対処(治療)が必要です。
(なお繰り返しますが、本稿では医療情報の正確さは保証できません。外部の正確な情報にあたるようにしてください。)
心房細動の治療法
現状、心房細動の治療法には大別して2種類の方法があります。一つは根治療法になる手術、もう一つは対処療法(これ以上悪化しないようにする)の服薬です。どのような選択をするかは、その人の健康状態や状況等により本人と医師が判断するものですが、私の場合は、他に合併症等もなく年齢的にも若いことから、手術を選択することになりました。
心房細動の手術は、カテーテルアブレーションといい、静脈経由でカテーテル(管)とその管内にワイヤを通し心臓(心房)まで到着させ、電極で高周波により心房内側の異常な電気の通り道を焼く(焼灼する)、というものです。なにやら聞くだに恐ろしげなものですが、開胸の心臓手術よりはるかに患者の身体への負担が少なく、治療効果も高いものとして、もう随分と確立されている手術なのだそうです。
実際、入院・手術は3泊4日の日程で行われました。初日と最終日はほぼ入退院するだけなので、手術の日と翌日様子を見る日、の実質2日間しかかからないのです。
入院・手術の実際
11月上旬に心房細動であることが確定し、入院・手術する段取りを決めました。私がかかった病院の先生はなんと1日に3件も同様の手術をするのだそうです(とても混み合っているとのことです)。私はなんとか11月下旬に手術してもらえるよう日程を確保でき、実際その様に対応していただけました。
入院・手術の様相は以下のような感じでした。
1日目:午後に入院。事務的な手続きをして病室・病床が割り当てられる。その他いくつか検査(採血、レントゲン)など。通常食の夕食が出て就寝。
2日目:手術の日。この日は朝食抜き。先生の1件目の手術が終了したところでお呼びがかかる。10:30頃。手術室まで歩いていき、手術台に自分で横になる。カテーテルを挿入する足の付け根部分と鎖骨の下に部分麻酔の注射が打たれ(結構痛い)、同時に点滴のラインから麻酔薬が注入される。この時点で眠ってしまう。その後カテーテルが挿入されて心房内部を焼灼する手術が進行するのだが眠っているため不明。カテーテルが抜かれ止血処理が行われたところで意識が回復する。13:30頃だったとのこと。違和感・不快感のようなものは特に無い。その後、病室のベッドまで横になった状態で搬送される。それからはベッドで20:00頃まで横になったままで寝ていなければならない(止血のため)。この間は食事もできないしトイレもいけない(介助)。実際にはこれが一番つらかった。その後ベッドの上で起き上がれるようになるので、夕食を食べることができた。トイレも自分で行けるようになる。食事後就寝。
3日目:朝に血液採取と心電図の検査があるだけで、その後は食事して寝るだけの1日。長時間の歩行などはできない(しないけど)。実際には朝から微熱(37.0度程度)があり若干の頭痛感があった。解熱剤を出してもらって治まる。本を読んだりスマホを見たりして過ごす。夜、経緯順調ということで翌日退院が決まる。
4日目:午前に退院手続きして退院。熱は平熱に下がる。昼食は家で普通に取った。
退院後ですが、当日・翌日くらいまでは幾らか頭痛の感覚があり、また胸に違和感がありました。痛みや息切れなどはありません。先生からの話や資料を総合すると、結局焼灼によって心臓に炎症が起こっている状態であるため、熱があったり違和感・不快感は多少はある、それらは徐々に治まっていって(最長)3ヶ月程度でなくなるとのことです。私の場合は、違和感は退院後3日目にはほぼ感じられないくらいになりました。
経験してみて
心房細動とカテーテルアブレーション手術は愉快な体験ではありませんが、対処できて本当に良かったと思っています。心房細動は自然治癒せず、放置すると致命的な問題になります。それに対して対応できたことに安堵を感じています。
心房細動や心臓病は、遺伝的な要素が大きいそうです。実際、私の父は脳梗塞が原因で亡くなりましたし、心房細動がありました。私も同じ要因を受け継いでいるのです。恐ろしいことです。しかし私は自覚症状がない時点で、アップルウォッチにより発見・対応することができました。父の世代ではまだ対処できなかったことがテクノロジーの発展で対応できるようになったことに驚きと感謝、そして悔しさを感じるのです。
これを読んで下さった方で、心臓に違和感のある方、また、自覚がなくてもご両親などに心臓病などハイリスク因子を持っている方は、アップルウォッチを装着することを激しく勧めます。技術(そしてそのための若干のコスト)で健康に対応できるならそれに越したこと無いと強く思うのです。
(私はアップルからお金をもらっていませんが、頂けるのならもらいたいですw。)